はじめに
中納良惠とは
東京スカパラダイスオーケストラはこれまでに様々なアーティストとコラボしています。
奥田民生、田島貴男、チバユウスケ、甲本ヒロト、Chara、永積タカシ、宮本浩次……。
豪華コラボ陣は、名前を上げていけばキリがないほどです。
中納良惠は「黄昏を遊ぶ猫」と本楽曲「縦書きの雨」でコラボをしました。
彼女は1996年に結成されたバンド、EGO-WRAPPIN'でボーカルを務めています。
胸を締め付ける大人のバラード
「縦書きの雨」は2012年に発売されたアルバム「Walkin'」に収録されました。
ゆったりとしたホーンセクションに中納氏の優しくもパワフルなボーカルが混ざり合うバラードです。
楽曲はシンプルながらも美しく、しとしとと降りしきる雨を思わせる旋律です。
スカのリズム、メロウなホーン、そして中納氏のボーカル。
究極の親和性から生まれる珠玉のバラードを心行くまで堪能しましょう。
1番 メロ
主人公は……

遠い昔の 生まれ変わりは 誰も歩かない 道を占う
出典: 縦書きの雨 feat.中納良恵/作詞:Atsushi Yanaka 作曲:Tsuyoshi Kawakami
「縦書きの雨」はとても詩的で難解な歌詞であるため、いろんな取り方が出来ると思います。
今回は出来るだけ文面通りに意味を取っていきましょう。
まず、全編を通して主人公がどんな人物であるかを把握する必要があるのです。
歌の後半で「喝采」「舞台」というキーワードが出てきます。
これは主人公が何らかの形で舞台に立っていた人物であることを想起させます。
そう考えると、「遠い昔の生まれ変わり」という表現の意味が見えてくるのです。
主人公は一世を風靡した映画女優なのでしょう。
「映画」女優というのには理由があります。
本楽曲のMVには、スカパラのメンバーと中納氏が映画を見ているシーンが度々入るのです。
恐らくこれは、歌詞のストーリーを示唆するものなのでしょう。
しかしその栄光は過去の話で、今は全く違う生活をしているのです。
ある舞台女優は引退する時に「女優である私はもう死にました」と言ったそうです。
おそらくこの主人公も同じような心持ちなのでしょう。
だから今全く違う道を歩んでいる自分は、一度死んで生まれ変わった姿なのです。
占うには「占いをする」の他に「未来を予想する」の意味があります。
同業者や関係者やファン……たくさんの人に囲まれていた女優としての人生。
しかし今の自分に見える未来には、一人で歩いていく自分の姿が映っています。
蘇るかつての記憶
辛くもないと 消した記憶が 蘇る夜に 迷い込む
出典: 縦書きの雨 feat.中納良恵/作詞:Atsushi Yanaka 作曲:Tsuyoshi Kawakami
主人公は新たな道に進むため、華々しい記憶を忘れようとしました。
一人で進むことを決めていた主人公にとって、それは辛いことではありませんでした。
しかし、ふとした瞬間に記憶が蘇ってしまうのです。
新しい人生を歩むことに満足していたはずの主人公。
しかし心の奥底には、まだ輝かしい過去の栄光が住み着いていました。
主人公がその過去を思い出すきっかけとは何なのでしょうか。
1番 サビ
振り続ける雨
主人公が輝かしい過去を思い出すきっかけ、それは雨です。
主人公が演じた中で最も印象深かったのが、雨のシーンなのかもしれません。
そしてある時ある瞬間、自分の頭上に降りしきる雨が、記憶とオーバーラップします。
「あの映画の中で降っていた雨が、今もまだ自分に降りかかっている!」
雨の中、主人公は自分がまだ映画の中にいるような錯覚を覚えているのです。