まだまだ侮蔑的な言葉が続くのでムカつくという人は耳を塞いでください。
しかしこの「ブス」という言葉の裏にある様々な想いがいかに大切かこの歌詞で知ることができます。
ストレートに「愛している」なんていえないところで思い悩む青少年。
その姿を現している歌詞のタイトルが「愛す」です。
最初の方こそ僕はまだ君への想いこそが「愛す」だったとは確信が持てませんでした。
後から振り返ってあれこそ「愛す」だったのだなとやっと気付くのです。
気付いた頃にはもう何もかも遅すぎたかもしれません。
しかし仲のよさが伝わる関係ですので卒業後も会えるチャンスはあったはず。
ここでもまだ躊躇したままでこの関係は通学バスの時刻とおりに過ぎ行きます。
こうした報われない点では悲恋かもしれません。
ただ青春時代の楽しさというものは背景にしっかりと見えてきます。
僕は存分に青春や思春期というものを満喫したともいえるのです。
リア充になれなくても、思い残したことがたくさんあっても青春の在り方としては及第点でしょう。
快活な女子と可愛い男子
逆にもうブスとしか言えないほど愛しい それも言えなかった
急ぎなほら送れるよ やがてドアが閉まるバス
出典: 愛す/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
酷い侮蔑的な言葉でも僕にとってはただの軽口です。
女性との意識の差というものは真剣に考えなくてはいけません。
しかしこのジェンダー・ギャップともいえる現象であっても可愛さがあると赦してあげて欲しいです。
というのも君は本当に「ブス」という形容が似合う人物とは思えないのですから。
実際に容姿の点で相対的に目立たない人にこの言葉を投げつけるのはもはやハラスメントです。
そういう危機的な事態がここにあるとはとても思えません。
むしろ君という人が快活で可愛い女子であったことがこのラインで分かるのです。
僕はそんな君が自分の告白によってバスに乗り遅れることを心配します。
自分の身勝手な思いをぶつけることよりも、君の安全な帰宅を優先させる僕。
この僕も心根は優しい男子だと気付かされるのです。
お互いの距離を大切にしたいと願うばかりに近付くことをためらってしまった僕の拙さ。
この先の恋愛でもこうした傾向が続くのか心配になるかもしれません。
しかしこの僕が尾崎世界観みたいなポップ・スターになったのだと思うとその心配も不要になります。
愛の扉は開けよう
コミュニケーションはできていた
肩にかけたカバンのねじれた部分がもどかしい
何度言っても直らなかった癖だ
もう元に戻してあげられなくなるんだな
自分でその手を離したくせに
出典: 愛す/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
僕の優しさや君への気遣いの本物さというものを実感できる箇所です。
君には女子高生固有のルーズさがあってショルダーベルトをぐんにゃりとさせます。
僕は案外、そういった見てくれに関しては潔癖なところがあるのですからおかしいです。
この話題で何度も会話したというのが親しさの顕れでしょう。
実際に「鞄はこうやってきちんと肩にかけるもの」とかいいながら直してあげたのです。
いちゃいちゃしたことも少しはしていたともいえます。
しかしそれ以上の関係には進めませんでした。
僕に勇気が足りなかったからです。
実際に誰かにきちんと告白するということを一回でもできるとそれが実績になります。
玉砕することによって自信がなくなった人もいるでしょう。
しかし一回でも愛を告白できるとその分、人は成長できるような気がします。
僕はその手前のラインで飛び込めないまま君を見送りました。
そのことをいつまでも後悔してこうして歌にまで昇華させたのですから相当な未練を感じます。
尾崎世界観みたいな詩人は些細なことでも歌詞にできるでしょう。
青春期にとっての忘れられない君のためだったらシングル曲だって創れるのです。
ドアの前で立ち止まっているだけ
ベイビー ダーリン 会いたい
メイビー ダーリン あ、今いい
ベイビー ダーリン 会いたい
って思ってるだけで
出典: 愛す/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
愛というものをまだ観念でしか捉えられない当時の僕の現状が反映しています。
大人になるとさらに肉感的な愛がないと満足できなくなるはずです。
その遥か手前であれこれ迷っているのですからうぶすぎます。
こうして貴重な相手を見送ってしまったことをずっと忘れられない。
いま若いリスナーで同じような想いを抱えている人は必ず告白してください。
結果がどうであれすっきり青春にかたをつけたと思えるようになれば素晴らしい経験になります。
異性に自分の心を素直に晒せるレッスンのようなものは早いうちに経験を積んでおきたいです。
って思ってるだけで
出典: 愛す/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
この最後の行が特に象徴的でしょう。
告白という行動に移せないで大切な人を見送るだけで終わってしまうなら後悔だけが募る。
さらにいえば告白という儀式は男女の関係の最初にあるものです。
僕はその扉の前で入るべきかどうするか悩んでいるうちに部屋ごと失いました。
若すぎたのでしょうし僕を責めるのは酷です。
ただ、クリープハイプの「愛す」を聴いたからこそ若いリスナーは行動へと移して欲しいと願います。
こうした逡巡は懐かしいものだなと振り返る人も多いでしょう。
あの日々からは随分成長できたと思えるならば素晴らしいことです。
最後に 誰しも恋をしよう
パワーワードは取扱注意です
いつもほらブスとか言って素直になれなくて ちゃんと言えなかった
好きだよ いまさら ごめんね 時間通りに出るバス
出典: 愛す/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観