先ずは、4位の『埠頭を渡る風』で少し触れた『中央フリーウェイ』。
1976年発売のアルバム『14番目の月』に収録されています。
その当時、若者たちの気質は急激に変化。
自身の生活を謳歌する新人類が増えていきました。
彼らの中には、「スペックの高い車の所有こそステータス」という思考が定着。
そのような時代背景が『中央フリーウェイ』に反映されているのです。
町の灯がやがてまたたきだす
二人して流星になったみたい
中央フリーウェイ
出典: 中央フリーウェイ/作詞:荒井由実 作曲:荒井由実
1970年代後半、愛車でのドライブデートは、よほど生活に余裕がある人物でなければ不可能でした。
庶民にとっては、夢のまた夢。
ユーミンは、あえて夢のデートプランを詞に綴りました。
性根逞しい男性陣は、「夢で終わらせない」「中央フリーウェイのように新時代の象徴になってやる」と奮起したのでしょう。
中央フリーウェイ
調布基地を追い越し山にむかって行けば
黄昏がフロント・グラスを染めて広がる
出典: 中央フリーウェイ/作詞:荒井由実 作曲:荒井由実
視点を変えてみれば、時代の変遷を実感できます。
現在、中央フリーウェイは、都心部と関西圏・中部地方を結ぶ交通の要衝。
しかし、楽曲制作が行われていた時の調布から高井戸までの開通工事。
これは住民の反対運動によって予定通りに進んでいませんでした。
“調布基地~”は、そのような事情を示しています。
また、かつてアメリカの進駐軍が飛行場を管理していた歴史も。
今、調布基地が存在していた場所にはサッカースタジアムが整備されているのです。
過ぎ去った青春に思いをはせ
続いては、1975年発売の6thシングル『あの日にかえりたい』です。
ドラマやCMとタイアップし、大ヒットを記録しました。
1976年、オリコンの年間ランキング・シングル部門において、第10位に入っています。
言わずと知れた代表曲。
ユーミン本人はもとより、多くの有名アーティストが愛着を持ってカバーしてきました。
青春の後ろ姿を
人はみな忘れてしまう
あの頃のわたしに戻って
あなたに会いたい
出典: あの日にかえりたい/作詞:荒井由実 作曲:荒井由実
エキゾチックな音楽を取り入れた『あの日にかえりたい』。
“青春”と恋人。
失わなければ尊さを実感しにくいものが表現されています。
人の心は、移り変わりが激しいもの。
知らず識らずのうちに、恋人の気持ちが離れているケースは少なくありません。
歌詞の主人公である“私”は、夢中で恋した“青春”時代に思いをはせているのでしょう。
過ぎ去ってしまった時間を戻せないことは分かっているけれども。
あの時、あの瞬間に戻り、もう一度やり直したいと願っているのではないでしょうか。
深みのあるユーミンの歌声が詞の切なさを際立てています。
ドラマティックなイントロが印象的
続いては、『リフレインが叫んでる』。
1988年発売の20thオリジナルアルバム『Delight Slight Light Kiss』の他、複数のアルバムに収録されています。
シングルカットされていませんが、ドラマティックなイントロとメッセージ性の高いフレーズがファンに好評です。
2003年の夏に催されたツアー『YUMING SPECTACLE SHANGRILA Ⅱ』では、海賊に扮したユーミンが船上で熱唱。
壮大なスケールで曲の魅力を伝えています。
歌い出しの部分からグッとユーミンワールドに引き込まれそうです。
ぜひ一度、映像を最初から最後まで鑑賞してみてください。
どうしてどうして
僕たちは出逢ってしまったのだろう
こわれるほど抱きしめた
出典: リフレインが叫んでる/作詞:松任谷由実 作曲:松任谷由実
リフレインする“どうして”と“だろう”が恋人に対する想いの丈を意味しています。
そして、どれだけ問いかけても返事がなく、心が離れ離れになっている状況を。
失恋した時のやり場のない感情が濃縮されているようです。
すりきれたカセットを久しぶりにかけてみる
昔気づかなかった
リフレインが叫んでる
出典: リフレインが叫んでる/作詞:松任谷由実 作曲:松任谷由実
恋人と一緒に何度も聴いた“カセット”は、いつまでも大切にしたい思い出の1つなのでしょう。
けれども、失恋で傷ついた心のように擦り切れ、お気に入りの部分に雑音が入る。
それを耳にする度、抱かざるを得ない喪失感。
フレーズ1つ1つが傷心に寄り添っています。
突然の別れ、意中の人にふられた時。
『リフレインが叫んでる』に励まされます。
悲しみを噛みしめた分だけ強くなれるのではないでしょうか。