自分自身に問う
君はどう思うのだろうか
何も知らなかった自分を
羨ましく思うかい?
君を失望させてまで
欲しがったのは何故
出典: 壇上/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
1-2行目で語られている内容。
これはきっと、君を見ているいまの自分への問いかけなのでしょう。
自分のやりたい音楽だけをとことん追求できる。
そう信じてやまなかったあの頃の自分=君からすれば、いまの自分は想像を絶する姿でしょう。
大切な夢だったはずなのに。
それを手に入れるために自分で自分を傷つけて、それでもまだ手に入っていない。
これまで自分がやってきたことは間違いだったのかと、疑心暗鬼になるのも無理はありません。
よぎる「解散」の2文字
何もかもを手に入れた
つもりでいたけど
もう十分でしょう
もう終わりにしよう
出典: 壇上/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
続く歌詞。これはまさに「解散」の2文字を彷彿とさせます。
それもそのはず。
この歌詞は実際に、作詞した常田大希さんが「King Gnu解散」を考えて書いた詞なのです。
発表する楽曲全てが大きな話題を呼び、テレビ番組でも取り上げられる機会が増えた2019年。
ずっと欲しかった知名度は、確実に手に入りました。
そんな怒涛の時間を過ごした彼らに残ったもの。
それは栄光でも達成感でもなく、永遠に広がる虚無感でした。
がむしゃらに走ってきたこの期間は、いったい何の意味があったのだろう。
そんな風に、自分たちの歩んできた道を否定する気持ちもあったに違いありません。
最後から2行目、十分に味わったのは世間からの賞賛と比例して膨張していく虚しさ。
そんな状況だったが故に頭をよぎってしまったのが、「解散」の2文字だったということでしょう。
自分たちがやりたいことを
見えてきた光
目に見えるものなんて
世界のほんの一部でしかないんだ
今ならそう思えるよ
出典: 壇上/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
やりたいことを追い続けてがむしゃらだった頃には気がつけなかったこともあります。
走り続けているからこそ、自分の目の前にあるものがすべてだと思い込んでしまうのでしょう。
しかしふと立ち止まった瞬間に気が付くのです。自分が見ていた景色が想像以上にちっぽけだったことに。
それに気が付けたのは、きっと君のおかげです。大切なことを思い出させてくれました。
さあ、ここから新たな道を歩み始めます。
履くなら自分の靴がいい
履きなれた靴で出かけよう
靴音を高らかに響かせながら
決して足跡を消さないで
いつでも辿れば
君の元に帰れるように
出典: 壇上/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
ここで登場している靴は、King Gnuが奏でる音楽を意味しているのでしょう。
いまの彼らが履いている靴は、誰かが用意してくれたお洒落で一般ウケのいい靴です。
しかし常田さんをはじめKing Gnuにとっては、とても履き心地が悪い靴でした。
本当に履きたかったのは、ずっと前に自分で買った靴。
ボロボロだって汚れていたって、履き古した靴だからこその味わいがあります。
自分が大好きな靴を履けば、どんなところへだって行ける気がするのでしょう。
3行目で足跡を残しているのは、自分の信念を忘れないため。
有名になって関わる大人が増えれば増えるほど、聞こえてくる声も増えていきます。
それらに惑わされることだってたくさんあるでしょう。
反響する周囲の声で自分自身の信念を見失いかけたとき、もし足跡が残っていたら…?
きっとすぐに思い出して、自分自身の軌道修正をすることができるはずです。
まさに常田さんが「自分のやりたい音楽をやる」ことを表現した、秀逸な比喩といえます。