人生と時間について哲学的に考える曲「Oblivion」

今回ご紹介する曲は、[ALEXANDROS]の「Oblivion」です。歌詞の半分以上を占める英詞を和訳しながら、曲に込められた意味も探って行きましょう!

曲の雰囲気は普段のオルタナティブロックというより、明るくポップで誰にでも親しみやすいナンバーとなっています。

【Oblivion/[ALEXANDROS]】タイトルの読みは?壮大なスケールが魅力の歌詞を徹底紹介の画像

英検1級レベルの単語「Oblivion」の読み方

明るく親しみやすいナンバーなのに、タイトルだけ親しみやすくない〜!!という訳で、まずはタイトルから攻略していきましょう。

タイトル「Oblivion」は、「忘れられている事」「忘却」という意味で、非常に堅苦しい単語。英検で言うと1級の単語帳に出てくるレベルです。

この曲は、ファッションブランドLITHIUM HOMME(リチウムオム)の2013年秋冬コレクションのテーマ曲にもなっています。

LITHIUM HOMMEの公式HPからも、[ALEXANDROS]のMVが見られますよ。

読みはカタカナにすると「オブリビオン」となります。「忘却」という日本語タイトルではいけなかったのか......?とも思ったりしますが、きっとこだわりがあって英語にしたのでしょう。

歌詞にこの単語は一度も出て来ませんが、この「忘れる」という事が、曲のテーマにもつながっています。では、何を「忘れる」のか。MV歌詞を見てみましょう。

英語と日本語が交互に来る歌詞を分析!

まずは英語で始まるAメロから

He was a boy
who once had a dream
to be a king
with an enormous ring

出典: Oblivion/作詞:川上洋平/作曲:川上洋平

和訳するにあたり、[Alexandros]の英詞には、文法的に間違いや不自然な言い回しがある箇所があります。その場合は足りない部分を補いつつ、あくまで歌詞に忠実に訳して行きます。

[和訳]

彼は王になる事を夢見る少年だった

とてつもなく大きな指輪を身につけた王に

[解説]

メロディと発音はとてもスムーズなのですが、英詞が不自然です。そうなってしまった原因の1つが、作詞する時に英語の韻にこだわった事だと推察されます(「king」と「ring」で揃っています)。

まぁでも[ALEXANDROS]の魅力は曲ですから、この2行は「小さい頃は、誰でもとんでもなく大きな夢を持つものだよね」という意味で捉えましょう。

【Oblivion/[ALEXANDROS]】タイトルの読みは?壮大なスケールが魅力の歌詞を徹底紹介の画像

ひとつ
ふたつと消える
その願い事
学ぶ度

Get on your feet
and prepare for the rest of your days
少年の父は何度となく告げ去った

出典: Oblivion/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平

まず2行の英語を和訳すると、「立ち上がり、残された日々にしっかりと備えろ」というニュアンスになります。

しかし、「prepare」という単語の使い方も正しくないので、作詞者の本来の意図は推察せざるを得ません。

おそらく、「未来へと続く日々に意識を向けろ」という意味でしょう。 

“And when the time has come”
he said
“Sonny don’t you slip it away ”

大人になりたい少年は
鐘の音を聴いた

出典: Oblivion/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平

ここも英詞の和訳から考えてみます。父親が息子に対してアドバイスを送っていますね。

「そしてその時が来たら、息子よ、決して(チャンスを)掴み損ねるんじゃないよ」という意味になります。

ちなみに、父親の台詞である「when」の中の時制は現在完了形ではなく、「when the time comes」にした方が自然です。ここで言う「time」とは「チャンス」の事です。

「鐘の音」は「時間の経過」を表す象徴ですが、面白い表現ですね。鐘からは色々なイメージが湧きます。

中世ヨーロッパでは、戦時中に街の鐘が定刻通りに響くと、「まだ戦況は大丈夫だ」と住民は安堵したそうです。

この曲における鐘の役割は、平穏としての象徴、また逆に「時間はどんどん流れて行く」警鐘としての意味合いもあるのかもしれません。

口ずさみやすいサビ

誰の為でも無くて
他でも無い自分自身の為にあるこの命を
いかにして

Get on the horse
I’ll be gone and won’t come back
I fade away and won’t ever say good bye
days are gone I need not to go back
I’m interested in the future
not in the past

出典: Oblivion/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平

サビは日本語から英語に♫

サビの英語部分を和訳するとこうなります。

"馬に乗って 僕は永遠に戻らない 消えて さよならは言わない

日々は過ぎ去り 僕はもう戻る必要なんてない 僕が興味があるのは未来で 過去じゃないから"

訳すにあたり、大事な時制と接続詞が不自然な箇所があります。「I fade away(僕は消える・現在形)  and (I) won't ever say good bye(未来形)」の部分。

前の行では自分がいなくなるのは「未来」になっているのですが、ここでまた「現在」に戻っているのが一点。

そして「消えてもさよならは言わない」と伝えたいなら、接続詞は「but」を使うべきですが、「and」を使っています。なので和訳も原文に忠実に訳しています。

とにもかくにも、サビで一番大事なのは「自分は過去ではなく未来を向いている」と曲の主人公が断言する最後の一行です。