桑田さんのダメ男哲学
すっかりこんがらがったところで、歌詞をしげしげ眺めてみましょう。
桑田佳祐、38歳!
情けない男で御免よ
愚にもつかない俺だけど
涙をふいて 嗚呼 夜汽車に揺られながら
飾らないお前に惚れたよ
いつも泣かせてたはずなのに
好きだヨなんて もう 言葉に出来ない
出典: 祭りのあと/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
あーダメです!このへんの歌詞はダメです!
ぼくの心の琴線に触れまくりです!
特に「夜汽車」の三文字がダメ。ローカル鉄道の大ファンですから。
試しにぼくの耳元で「夜汽車」ってささやいてみてください。即座に果てると思います。
恋も涙も純情も 生きるためには捨てよう
今日も汚れた人ごみに背中丸めて隠れてる Oh
眠れない街に愛する女性がいる
お前だけが死ぬほど好きさ
秋風の SHADOW
終わらない夏に 誰かとめぐり逢う
夢の中でも彷徨いながら 涙も枯れ果てた
出典: 祭りのあと/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
中年の入口の疲れた気配、生きることに疲れ始めた気配が漂います。
季節は夏から秋へと変わる。人生の曲がり角である30代後半。季節で言えば夏から秋。
つまりこの歌詞は、桑田さん自身が感じ取った心象風景なのでしょうね。
桑田さんのコメントで裏を取る
「桑田さんの心象風景」と書いたのは、それを裏付ける傍証があるからです。
これは「祭りのあと」の前年リリース、「真夜中のダンディー」を振り返ってのコメントです。
当時の桑田自身の年齢(当時37歳)もあって「年齢的に枯れていく自分」を意識した
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/真夜中のダンディー
直接証拠ではないにせよ、間接的な証拠にはなるでしょう。
桑田さんの自伝で読むことができます。手に取ってみてください。
終始一貫、ダメ桑田ワールド。
2番の歌詞です。1番でチラリと出てきた女性がらみのエピソード。
それとなくあの娘に聞いたよ
誰が大事な男性なのか
心の中じゃ 嗚呼 無理だと知りながら
フラれてもくじけちゃ駄目だよ
こんなしがない世の中で
振り向くたびに もう 若くはないさと
出典: 祭りのあと/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
女に捨てられる情けない男。女に気があるのに手が出せない男。
桑田さんはそんなダメ男がお好きなようで、近作だとソロの「Yin Yang」やサザンの「栄光の男」でも登場します。
歌の中で繰り返し描き続ける男のドキュメントなのです。
野暮でイナたい人生を照れることなく語ろう
悪さしながら 男なら 粋で優しい馬鹿でいろ Oh
底無しの海に 沈めた愛もある
酔い潰れて夜更けに独り
月明かりの WINDOW
悲しみの果てに おぼえた歌もある
胸に残る祭りのあとで 花火は燃え尽きた
Oh yeah
眠れない街に愛する女性がいる
お前だけが死ぬほど好きさ
秋風の SHADOW
終わらない夏に 誰かとめぐり逢う
夢の中でも彷徨いながら 涙も枯れ果てた
出典: 祭りのあと/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
「粋で優しい馬鹿でいろ」。沁みるなあ。大賛成。
お金も地位も名声もすべて手に入れた大物が、こういう歌詞を書けることに対してぼくは素直に感動しますね。
「そんなもん嘘っぱちだい!」と批判するのは簡単です。だけどね?「ダメ」や「怠惰」への共鳴や共感がないと、こういう歌詞は書けません。
桑田佳祐の原点はちっぽけな野郎のたわ言なのであって、ビッグになっても原点を忘れないからこそ、桑田佳祐でいられるのだと思いますよ。