嘘から始まる物語
「今日は本当にありがとう でももう行かなきゃ。」
知らない車 指差して
「迎えに来てくれたの」なんて笑ったまま
人混みに逃げ込んだの
出典: 化粧/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
これは「主人公」のセリフです。
上記で少し触れた「あなた」がなぜ浮気関係を許容していたのか、という問いにも繋がります。
この歌詞は、「主人公」が恋人に迎えにきてもらったといっているのです。
「主人公」に恋人がいたのか?
答えは、NOです。
そう、「主人公」は、他に付き合っている人がいると嘘をついていたのです。
「あなた」に少しでも近づくため、平等な関係性を保つためについた嘘。
お互いに恋人がいることにすれば、同じ土俵で話ができると思ったのでしょう。
その嘘から始まった「あなた」との深い関係。
これが、「主人公」を最後まで苦しめることになります。
一緒にいるときは笑顔で過ごしたかった
嘘をついて笑顔で「あなた」と別れた「主人公」ですが、1人になった途端、想いが溢れます。
曲がり角で 泣き崩れて 悲しみだけ 街に溶けた
過ちと分かるのに過ちを繰り返すだけの
ほら 早く迎えに来てよ
出典: 化粧/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
恋人が迎えに来ていると言ったのだから、追いかけてくれるわけもありません。
それでも迎えに来て欲しい。
架空の恋人ではなく、「あなた」に迎えに来て欲しい。その想いが涙となって頬を伝います。
おそらく「あなた」との別れ際は毎回こうだったのだと思います。
「あなた」の負担になりたくない、少しでもそばにいたい。
その想いが「主人公」を強がりという嘘で塗り固める結果となってしまいました。
気付いた時には遅すぎた
戻ることも進むこともできない
恋人がいるというのが嘘だったと言うには遅すぎました。
嘘だったと言えば、「あなた」に失望されてしまいます。
もし仮に、架空の恋人と別れたと言えば、責任を取れない「あなた」は去っていくでしょう。
「主人公」は、どうすることもできなくなってしまっていたのです。
だからとて、「あなた」は「主人公」との別れ話も、「あの子」との別れ話も切り出さない。
この関係を継続しようとしています。
そんな苦しみの中にいても、「あなた」との時間は掛け替えのないものでした。
しかし、このままではダメだという想いから、「主人公」は決意を固めます。
その想いを表しているのがこの歌詞です。
今ならまだ やめられると思うときには もう遅くて
抱き締められたら 嘘でも暖かかったよ
今までありがとね
出典: 化粧/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
嘘で固めた関係は続けられない。
だからこその別れという決断です。
別れたくないのに、この結末しか選択肢がありませんでした。
付き合い始めた時からわかっていたと思います。
とうとうその時が来てしまったのです。
素直になれたらよかった
毎回思っていた想いと、はじめから抱いていた後悔。
それを表しているのがこの歌詞です。
触れた唇 残した赤は
あの子に会う前に落として
口紅が薄れた その瞬間にわかってたのは
もっと素直になれたらよかったよ
出典: 化粧/作詞:椎木知仁 作曲:椎木知仁
「あの子」に会う前には消さないといけない「主人公」の存在。
毎回消されたくないと思い続けていたけれど、言うことができなかったのです。
そうして繰り返し消されることで別れへの決意が向いたことも頷けます。
これまで真実を言うタイミングはきっとあったのでしょう。
しかし、それらのチャンスは、関係が壊れることの恐怖から活かせなかったのです。
最後まで素直になれなかった「主人公」の苦しい決断でした。
それを一言で表している言葉があります。
それがこちら。