カナリアの現状を眺めていた主人公が、切なさに耐えきれず感情的になるような歌詞です。

カゴの中のお前に自分というものはあるのか?

自分がないなら、人生に意味はあるのか?

そんな感情が読み取れます。

夢や恋や、好きな人の名前をカナリアが叫んでくれれば、歌詞の主人公は現状を憂わずに済むのでしょう。

しかし、鳥は悲しく鳴き続けるばかり。

彼女の人生を肯定するような言葉は返ってきません。

カナリアのような人間がたくさんいる

世の中には、カナリアのような人間がたくさんいるのだと思います。

自分の好きなものや、過去さえ思い出せない人々です。

そう考えると、特定の辛い境遇の人たちなのかと思うかもしれません。

しかし、広義で捉えれば、世間の人はみな夢を忘れて生きている哀れな存在だともいえるでしょう。

丁度、翼を持っているのに、それを使えないカナリアと一緒です。

夢、恋、愛する人。

どれか1つでも忘れているという人はいませんか。

そんなあなたは、もしかすると1匹のカナリアなのかもしれません。

カナリアの2番の歌詞

いろいろな場所で飼われているカナリアに目を向ける

少年は春を呼びに君をつれだし
老人はもの想いへ君を誘なう
カナリア カナリア カナリア
カナリア カナリア カナリア

出典: カナリア/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水

春のような雰囲気を近隣に伝えるために、少年はカゴを外に持ち出したのでしょうか。

その意味にプラスして、春を買うというニュアンスも含まれていそうです。

そして、別の地域では孤独な老人がカナリアに昔話を聞かせているのでしょう。

カナリアが飼われている、いろいろなシーンに目が向けられています。

いずれにせよ歌詞のこのパートで歌われているのは、カナリアは幸福な人々の飾りでしかないということ。

誰かの楽しさや寂しさを彩る存在でしかないのです。

きっと飼っている人々は、そこまで考えていないのでしょう。

しかし、歌詞の主人公のような大きな視点でみれば1番孤独なのはカナリアなのです。

より悲惨なワンシーンを伝える

鳥籠はいまも部屋の隅に飾られ
入口の鍵の場所は誰も知らない
カナリア カナリア カナリア
カナリア カナリア カナリア

出典: カナリア/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水

歌詞はさらに悲しみを帯びていきます。

誰も、カナリアを外に出してあげることなど考えなかったのでしょう。

外から餌だけ与えていたのだと捉えられます。

掃除も、鳥かごが吊り下げの網式なら、外側からでもできそうです。

そして、カナリアは1度も大空を羽ばたかないまま死んでしまいました。

そういった背景があるので、歌詞でカゴだけについて触れているのだと思います。

生きている間、誰もカゴの鍵を開けてあげなかったのです。

さらに恐ろしいのは、人がカゴを飾っているという点でしょう。

少なくとも、飼い主にとっては良い思い出だったのではないでしょうか。

だからこそ、カゴを捨てずに置いているのだと思います。

カナリアの視点でみれば、悲劇以外のなにものでもないこのシチュエーション。

それが、飼っている側からみれば良い思い出に変わるなんて、とても恐ろしいですね。

カナリアという曲の深いテーマが垣間見えたような気がします。

楽曲はここからサビを繰り返して終了。

カナリアについていえば、状況はまったく変わらないままの終幕となってしまいました。

誰かの人生の1部にしかなれないカナリア

カナリアのような人物が世の中にはたくさんいることを踏まえて、もう1度女性に喩えてみましょう。

カゴの中で生きる彼女に、自分の人生はあるのでしょうか。

誰かから援助を受ける生き方に、自由はあるのでしょうか。

そう考えると、彼女は他人の人生の1部になってしまっているといえるでしょう。

辛辣な表現ですが、彼女には自分の人生がないわけです。

何も自分で決めることができず、行動さえ制限されているのですから。

誰かの人生の楽しみの1部でしかありません。

そんな生き方は正解なのでしょうか。

しかし、疑問を持っても自分の力で生き方を変えることはできません。

彼女はカナリアなのですから。

苦しさを紛らわせるように、鳴くだけです。

そうして一生を終えて生きます。

辛い現実かもしれません。

しかし、カナリアのような人間が世の中にいることを忘れてはならないのです。

この曲はそんなメッセージを伝えているのではないでしょうか?

聴いた人に行動を起こしてほしいわけではありません。

ただ、カナリアの境遇に共感してほしいだけなのです。

カナリアのまとめ

井上陽水のカナリアについて解説してきました。

人に愛玩用として飼われているカナリア。

そこから、同じような境遇の人々の存在が浮き彫りになってきます。

カゴの中の人生に意味があるのか、ないのか。

もしもないならば、カナリアはなんのために生きているのか。

さまざまな疑問が浮かび上がってきます。

カナリアだけでなく、人間が飼っているペット全般についても同じことがいえそうです。

そしてさらにいえば、我々人間も社会に飼い慣らされて本当の自由を得ていないのかもしれません。

歌詞の主人公はそんな現状を憂うように、カナリアに問いかけ続けます。

そんな、深く考えこんでしまうような歌詞でした。

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最後にそれらを紹介して終わることにしましょう。

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