上述の通りこの曲は、ずっと片想いしていた憧れの女性の結婚式に出席している男性の心情を描いたものです。

ちょうど式が終わり、新郎新婦がフラワーシャワーに祝福されながら教会から出てくる場面でしょうか。

人生で最も幸せと言っても過言ではない瞬間を迎え、幸せそうに微笑む新婦。

しかし、それを見つめる「僕」の心の内は、当然穏やかではありません。

「もしお金持ちだったら」「ハンサムだったら」と、彼女への未練が尽きないのです。

目の前で愛する人と結ばれ、手の届かぬ存在となってしまった彼女に、「生まれ変わったら」と女々しいことを考えているようです。

近くにいるはずなのに

ここのフレーズで不思議なのは、結婚式に出席しているはずなのに遠くにいるような表現がされていること。

式場にいればすぐそこで鐘の音が鳴っているはずですし、それを遠くに感じることもないはずです。

しかしそれを客観的な言葉で表現しているということは、主人公の僕がどこか上の空であることを示しています。

それはもちろん、大好きだった彼女の結婚を受け入れたくないから。

その場にいて、式にも参加している現実を受け入れなくてはならないのに、それができていないのです。

受け入れがたいその気持ちは、続く未練がましい歌詞からも滲み出ていますね。

並べ立てる理由が外見など、自身のステータスばかりを追い求めていることに思わずクスッときてしまいます。

つまり主人公は彼女のことをあまりよく知らないのでしょう。

彼女自身がどんな性格なのか、彼女がどんな人を好んでいるのか、詳しく知らないはずです。

そして知らないのは彼女のことだけではありません。彼女の横にいる男性のことだって知らないのです。

彼女の横にいる姿を見て、「背が高くてカッコいいお金持ち」という特徴だけを抜き出した主人公。

それがあれば、彼女は僕に振り向いてくれたかもしれない…なんて浅はかな考えを抱いているのでしょう。

ちょっぴりズレた感覚を持つ可愛らしい主人公ですが、彼は本気です。

来世では結ばれたいと真剣に願っているのですから…。

遠くから彼女のことだけを見つめていた淡い恋の思い出。

その感覚を引きずったまま彼女の結婚式に参加した主人公は、ただただ辛い気持ちでいっぱいの様子です。

もしかしたら青いシャツは、美しい青空色でありながら実は悲しみの涙色でもあるのかもしれません。

続きの歌詞を見ていきましょう。

僕と彼女の関係

僕にとっては憧れの人でも

You're an idol in high school He was a quarter back
He has sold me a photocopy of your photograph
I am standing in the line while holding confetti
I see the girl of my dream is smiling like the sun in her wedding dress

出典: Marry Me/作詞:細美武士 作曲:細美武士

君は高校のアイドルで、彼はクォーターバックだった
彼は僕に、君の写真を焼き増ししたものを売ってくれた
僕は紙吹雪を手に、列に並んでいる
ウエディングドレスに身を包んだ憧れの女性が、太陽みたいに輝いているのを見つめながら

Maybe not She don't remember me
Maybe not She don't know how I feel
Maybe not She don't even know my last name

出典: Marry Me/作詞:細美武士 作曲:細美武士

きっと、彼女は僕のことなんて覚えていない
きっと、彼女は僕の思いなんて知らない
きっと、彼女は僕の苗字さえも知らないんだろう

お似合いの2人を見つめる「僕」

「クォーターバック」は、アメリカン・フットボールにおいて司令塔となるポジション。

つまり、チームの中心的存在です。

学校のアイドルだった新婦と、アメフト部のリーダーだった新郎とは、まさしくお似合いの存在。

高校時代から、きっと2人は親しい関係にあったのでしょう。

一方「僕」は、新婦に強い憧れを寄せてはいたものの、やはり親しくはなかったようです。

「僕の苗字さえも知らないんだろう」という言葉から、やるせなさが滲み出ています。

もちろん、これらの「Maybe not」さえ、「僕」は彼女に直接伝えているわけではありません。

おそらくその場では淡々と2人の門出を祝いながら、心の中で涙を流しているのでしょう。

おめでたいはずなのに

結婚式は人生の門出を祝う素敵な日です。

しかし歌詞を見てみれば、これまで一言もお祝いの言葉がなかったことに気がつくでしょう。

反対に並んでいるのは、まるで結婚を残念がるようなネガティブな言葉だけです。

「どうせ…」と後ろ向きな発言が目立つことからも、お祝いするつもりはあまりなさそうですね。

どちらかといえば結婚式というイベントを理由に、ずっと好きだった君の姿を見に来たかのよう…。

そんな主人公を表現するにはやはり「女々しい」という言葉がぴったり当てはまりそうです。

さて、そんな主人公。

冒頭の歌詞にありましたが、彼はまるで青空のように鮮やかなシャツを着ていましたね。

そしてそんな僕の視線の先にいるのは、太陽のように輝く君。

空は、太陽の光がそそがれなければ青く見えません。

このことから考えると、僕という存在そのものが「君ありき」だったと考えられるのです。

君のことが好きだったからいまの自分がいる。

大げさに聞こえるかもしれませんが、きっと僕は真剣にこう感じていたのではないでしょうか。

日々学校へ行く理由。日々何かに取り組む理由。それらの根拠が君の存在にあったのです。

そんな相手の結婚ともなれば、冷静でいられない気持ちも少しはわかるかもしれませんね。

そして、曲は最後の歌詞へと続いていきます。

最後の行はどう解釈する?

Won't you marry me if I could be a rich boy
Won't you marry me if I could be very handsome
Won't you marry me if I could be a tall guy
Don't you marry him
He's just another stupid in the next life

出典: Marry Me/作詞:細美武士 作曲:細美武士

もし僕がお金持ちだったら、結婚してくれますか
もし僕がすっごくハンサムだったら、結婚してくれますか
もし僕の背が高かったなら、結婚してくれますか
彼と結婚しないでくれよ
生まれ変わったら、彼こそが「ただのつまらないやつ」になると思うんだ