凛として時雨
感情を剥き出しにした攻撃的なサウンドアプローチ。
どこか寂しげな浮遊感のあるメロディ。
真逆ともいえる要素を併せ持ち、聴く人を現実世界の向こう側に連れて行ってくれる稀有なバンド、凛として時雨。
あまりの衝撃に、信仰心にも似た感動を覚え虜になるか。
二度と見たくないほど、強烈な拒否感に襲われるか。
リスナーの反応は真っ二つに分かれ、「特に印象に残らなかった」なんてことは、まず起こりません。
それほどまでに、内包するエネルギー量が高いバンドです。
以下、凛として時雨を聴いた時のリスナーの反応を見てみましょう。
1.言葉を失い石化する
放出された感情の塊を受け止めきれず、まるでサヨナラエラーをした野球選手のように茫然と立ち尽くします。
「無」から帰還したリスナーは、我が身に起きた状況を整理したあと、再び再生ボタンを押すでしょう。
2.泣きながら逃げる
ホラー映画を初めて視聴した子供のように泣きじゃくります。
プログレッシブなバンドアプローチや、迫り来る音の波は一切の容赦がありません。
凛として時雨の世界に足を踏み入れるか逃げ出すか、リスナーは選択を迫られます。
3.変な笑いが出たあと、拝む
あまりにもテクニカルで美しいフレーズや、一つ間違えるとわけがわからなくなってしまうようなスリリングな曲の展開に、格好良すぎて低い笑い声が出るでしょう。
補助ワイヤーなしでの綱渡りのような光景を目にした後、思わず両手を合わせて祈ります。
「DISCO FLIGHT」
「DISCO FLIGHT」は、凛として時雨の2ndアルバム「Inspiration is DEAD」に収録されており、ライブでも非常に人気の高い曲です。
「DISCO FLIGHT」は音を少し歪ませた、印象的な「345」のベースから始まります。
そこにボーカルギターの「TK」の浮遊するようなギターリフと、ドラム「ピエール中野」の疾走するような裏打ちのビートが加わります。
タイトルに「DISCO」という単語が入っているだけあり、非常にのりやすい曲ですが、描かれている世界は一般的な「DISCO」の華やかなイメージとは異なります。
まるで、死者の葬列のような荘厳で物悲しい雰囲気、TKの抽象的かつ幻想的な言葉が、リスナーを非現実に連れ去ります。
連れ去られたリスナーは、「DISCO FLIGHT」の世界で迷い、曲の全貌が明らかになるに従って、ここが紛れもない現実であることを悟ります。
現実世界の皮を一枚剥がせば、そこは儚さと狂気にまみれた混沌であることを訴えかける、凛として時雨らしい楽曲と言えるでしょう。
歌詞とコードに見る「DISCO FLIGHT」
「DISCO FLIGHT」は、凛として時雨にしては珍しく(?)変拍子や、突発的な展開なども少なく、比較的歌いやすい楽曲と言えます。
ただ、TKの声のキーが異常に高いので、キーチェンジも考慮したほうが良いでしょう。
女性でも高く感じられるはずです。
また、凛として時雨の楽曲は、その攻撃的なバンドアプローチとは対照的に、非常に美しいメロディを持ちます。
そのため、アコースティックギタ一本で弾き語ると、意外なほど曲が映え、また違う一面を見せてくれます。
歌詞と一緒に、コードも載せておきますのでアコースティックギタ一をお持ちの方は、ぜひ挑戦してみてください。
コードは、弾きやすいように半音上げてあります。
歌詞の解釈とコード
Em C D Em C D Em C D Em C D
窓から見えるの 世界の配列 甘い匂いがするの 景色の裏側に
Em C D Em C D
イカレタ僕はね 意識をスピードのDISCO FLIGHTに乗せて
Em C D Em C D
目を閉じれば 世界は消えるの
出典: DISCO FLIGHT/作詞:TK 作曲:TK
「世界が消えた」と、「イカレタ僕」が言います。
果たして、イカレているのは自分でしょうか、世界でしょうか。
目に見えるものだけが、全てでしょうか。
コードに関しては、Em→C→Dの繰り返しです。
バレーコードより、ローコードで押さえてみて、開放弦の押さえ方を変えてみると、より雰囲気がでます。
メロディとメロディの間のインターバルは、Emで押していますが、345のベースラインが非常に印象的です。
Em D Em D Em D Em D
感情に入り込んだ空のリズムは TIME 溶け出していく
Em D Em D Em D Em D
誰もいなくなった空の裏側に FLIGHT 溶け出していく
出典: DISCO FLIGHT/作詞:TK 作曲:TK