「だから自分のベッドから僕は革命を始めるんだ

なぜって僕のことを自信過剰だなんて君がいうからさ」

ベッドから始める革命とは何だろうと話題になりました。

過去にジョン・レノンとオノ・ヨーコがベトナム戦争に抗議するためにベッドの上から平和を語りました。

彼らふたりは新婚旅行を平和活動に利用しようと「ベッド・イン」という反戦活動をします。

ただベッドの上でふたりが横たわりながら保守的な論客や好戦的な人物と論争をするのです。

ここにラブアンドピースの真骨頂があります。

リアム・ギャラガーはジョン・レノンに心酔して自分の子どもの名前もジョンにちなんだものにしました。

兄のノエル・ギャラガーにしてもジョン・レノンこそビートルズで最高のソングライターという認識。

OASISはオールドスクールスタイルのロックを復権させたバンドでもあります。

ジョン・レノンの影響なくしてOASISは語れません。

また、ベッドの上の男女という言葉から想像されるのはやはり肉体関係です。

なぜそういった関係から始めるのかというと、それこそ人間の根源的な欲望が出る所だからでしょう。

一糸まとわぬ姿で普段覆っている仮面も何もかもを捨てて、肌と肌を重ね合わせてお互いの気持ちをぶつける営み。

まずこの原点に立ち返ることで人間があくまでも「動物」であり、自然の一部から誕生した生き物だと再認識するのです。

何事もまずは根源に立ち返ることで始まります。

革命とは生活を組織すること

OASIS【Don't Look Back In Anger】歌詞を和訳&意味を考察!今すべき事とはの画像

そうした事実を踏まえてベッドから始める革命について考えましょう。

人間存在の究極の価値は愛にあると歌っているのではないでしょうか。

それは自己愛から始まり人類愛に至るまでの様々な愛。

愛を大事にしない革命なんて存在してはいけないんだという強い想いが透けてきます。

自分のできる範囲から革命を企てることの大切さも歌っているようです。

革命家というと大袈裟なイメージが付き纏います。

しかしフランス革命から始まるあらゆる市民革命の革命家はまさに普通の生活人たちなのです。

革命家になるためには誰しもが強烈な個性を持った職業革命家になる必要はありません。

ノエル・ギャラガーが僕に決意させた革命とは実際のあらゆる革命での主人公の姿と同じでしょう。

また革命という言葉に日本社会に生きる人はアレルギーのようなものを持っているかもしれません。

日本はまっとうな形での市民革命が起きたことがない極めて稀な国です。

しかし他の先進国は様々な形の市民革命を体験して国民が主権を手にしています。

そしてロックはその黎明期から革命思想と分かち難い関係を持ち続けてきました。

OASISもそうした革命志向を持ったバンドであるのは疑いようがありません。

その彼らを全世界のリスナーが支持している現状を理解する必要があります。

諸外国、特に進んだ国であるイギリスのアーティストにとって革命というものは身近なものです。

自分の生活をどうやって組織するか。

革命というものは生活と人生の問題に由来するのです。

自分のベッドから革命を起こすよという語り手の僕の発想は極めて健全であります。

君が僕を自惚れていると批判するけれども生活の範囲内から革命を成し遂げるよと語っているのです。

熱い僕とクールな君と

OASIS【Don't Look Back In Anger】歌詞を和訳&意味を考察!今すべき事とはの画像

Step outside the summertime's in bloom
Stand up besides the fireplace
Take that look from off your face
Cos you ain't ever gonna burn my heart out

出典: Don't Look Back In Anger/作詞:Noel Gallagher 作曲:Noel Gallagher

「夏が真っ盛りの中、外出しよう

暖炉のそばから立ち上がるんだよ

そんな表情を顔に浮かべないで

それじゃあ君は僕の心を燃やし尽くすことなどできないからね」

これこそ革命家になった僕の言葉です。

もっといい遊び場を探しに出かけること。

それは社会の中で居場所をきちんと築くこと。

そのためにまずは家から出て明るい表情で僕の心を本気にさせるくらい燃やしてみてよ。

君も何かしらの熱気を知らないとダメなんじゃないかなという思いを語ります。

言葉のひとつひとつに宿った熱量が素晴らしいですし、何よりも歌詞の状況が目に浮かぶのです。

僕は君にときどき苛立つことさえあるくらいの熱いハートの人物。

対して君は冷静さを信条として生きているクールなタイプの人間です。

どちらが優れているかという話ではなく、両者のいいところの中間から答えが浮かぶのではないでしょうか。

私たちは様々な人々との関わりの中で自分の人格を磨いていきます。

お互いの良さを認め合いながらいい関係を築いてゆくことが社会生活の基本になるのです。

僕にとって君は異質な存在ですが一緒にやってゆかないといけない友人なのでしょう。

この人間関係の構図こそが後にこの歌の意味を大きく飛躍させます。

いよいよサビです。

歌詞をご覧ください。

同時にこの歌は男女がどういう生き物であるかを示してもいます。

単純で真っ直ぐな主人公は感情的なロマンチスト。

そしてきっと相手の女性は割と理性的かつ現実的なリアリストです。

よく「男は理性の生き物であり女は感情の生き物」といわれます。

しかしそれはあくまでも「顕在意識」においての話となります。

これが潜在意識となると話は別。

男は潜在意識においてはどこか理想主義故に感情的で、女は現実主義故に理性的です。

歴史において多くの革命を男性が中心となって成し遂げてきたのも、ぶっ飛んだことを夢見るロマンチストだからでしょう。

対して女性は「そんなロマンの為に生きるなどと下らない」と奥底ではどこか冷めた現実的な視点を持ち合わせています。

だからこそ潜在意識では常に安定を願い、家庭を作って守りに入るのではないでしょうか。

男尊女卑が男女平等になり、女性が男性的になり男性が女性的になったといわれる昨今でもこの部分は変わりません。

潜在意識の部分において、そもそも男と女は利害関係が一致しないように出来ているのですから全く別の生き物です。

その原理原則をこの部分は改めて性格の違いで表現しています。

OASISの智慧を聴く

サリーという謎の女性

OASIS【Don't Look Back In Anger】歌詞を和訳&意味を考察!今すべき事とはの画像

So Sally can wait
She knows its too late
As were walking on by

出典: Don't Look Back In Anger/作詞:Noel Gallagher 作曲:Noel Gallagher

「だからサリーは待っていてくれる

彼女はもう手遅れだって分かっているよ

僕らふたりが一緒に歩いてゆくのはね」

まったく意味がないことで有名なラインです。

謎のサリーという女性は「デモテープでそう聴こえただけ」で実際のレコーディングまでされました。

サリーは僕を待ってはくれているのだけれど人生はともにしないのです。

どういうことかというとどういう意味もありません

このラインが収まった原因をただせばただの空耳だったのですから。

サリーが待っていることに特に意味はないというのがノエル・ギャラガーのリアルな言葉です。

お騒がせなギャラガー兄弟ですが、それでも意味は探しているうちにでてくるもの。

何となく破局した後のカップルの様子が伝わるはずです。

このサリーという女性の存在で登場人物が3人になったことによってこの曲の世界に幅が広がりました

怪我の功名というのはこういうことでしょうか。

サリーについて何か思わせぶりなものを漂わせることに成功しています。

このサリーという女性の意味は物語に例えるなら一種の狂言回しであり、物語を俯瞰して進める傍観者です。

普通であったら恋の唄や革命をテーマにした歌にこのような視点は必要ありませんが、この曲にはその視点が必要となります。

なぜならば男女の「」の関係から始まる物語を拡張していくには近眼的な視点ではなく遠眼的な俯瞰の視点が必要になるからです。

また、その視点があることによって単なる男女の熱烈な愛の物語にせず客観的にコントロールすることにも成功しています。

また、ここで大事なのはその「サリー」なる第3の女性があくまでも冷徹な傍観者、すなわちリアリストであるということです。

この曲の中では男性=ロマンチスト女性=リアリストの解釈で物語の世界観が構成されています。

報復の連鎖からの脱却

OASIS【Don't Look Back In Anger】歌詞を和訳&意味を考察!今すべき事とはの画像

Her soul slides away
But don't look back in anger
I heard you say

出典: Don't Look Back In Anger/作詞:Noel Gallagher 作曲:Noel Gallagher

「彼女の心は離れ去ってしまう

『それでも怒りの感情で過去を振り返らないで』

君がそうつぶやくのを僕は聞いたよ」

ついにタイトル回収がなされます。

過去のことを怒ったりするなよくらいの意味でありますがこの言葉が世界中で支持されました。

2001年の世界貿易センタービルへのテロでの破壊から続いた報復の連鎖。

アメリカ軍はアフガンで民間人を巻き添えにしてたくさんの人々を殺害します。

憎しみをこれ以上連鎖させてはいけないという平和を志向する人々の声を無人爆撃機の音で消しました。

テロとの戦いは泥沼に陥り、多数のアメリカ軍兵士をも犠牲にします。

帰還兵も戦場での過酷な体験がPTSDを呼び起こし本国で治療を受けなくてはならなくなりました。

少なくない帰還兵が自殺という道を選択してしまうのです。

一体、最初の銃爪を弾いたのは誰でしょうか。

この答えがテロリスト集団だけに当てはまると考えるのはあまりにも浅はかすぎます。

第三世界の問題に由来する富める国と奪われる国の問題が根本に横たわっているからです。

それでもテロという蛮行を許すことはできません。

それならばいっそ全世界が武装解除できたならと願う気持ちこそが沸き起こるのも当然なのです。

OASISの「Don’t Look Back In Anger」はこの感情とリンクされました。

自分のベッドからの革命というものについて深く考えたリスナーがいたからです。

平和な世界の構築のために今こそ必要な智慧は何か。

端的な言葉で表現するならばそれが「Don’t Look Back In Anger」というフレーズなのです。

また、このフレーズは熱すぎる僕ではなくクールな君の言葉であることを覚えておいてください。

しかし、同時にこの歌詞の素敵な所はだからといって「敵を許せ」などとはいわれていないことです。

確かに怒りを怒りのままストレートに復讐として向けると全て自分に向かって跳ね返ってきますから、根本的な解決にはなりません。

しかし、だからといってそれは敵側が仕掛けてきたテロリズムを許すかどうかとは全くの別問題なのです。

罪は罪であり、テロリズムを断固許さない気持ちを心の中に持ち続けなくてはならず、世の中には話し合いで分からないこともあります。

その辺りの理性と感情の葛藤を歌い込むことで「復讐とは何か?」を1人1人に問うようにしているのではないでしょうか。

ロックバンドは永続しない

OASIS【Don't Look Back In Anger】歌詞を和訳&意味を考察!今すべき事とはの画像

Take me to the place where you go
Where nobody knows
If its night or day
Please don't put your life in the hands
Of a Rock n Roll band
Who'll throw it all away

出典: Don't Look Back In Anger/作詞:Noel Gallagher 作曲:Noel Gallagher