夢というものを胸に秘めることで焦燥感のようなものを感じ始めるでしょう。
これこそが青春期を生きてゆくビートになるはずです。
そのビートには忠実にいた方がいいでしょう。
後から思い返して後悔のないような青春であったと振り返られることは幸福です。
miwa自身が若くして夢を叶えてしまいました。
そのためにこのスピード感のようなものを大切にと歌います。
miwaの分身であるような僕も君の夢に向かうスピード感に寄り添うのです。
ただより長く夢を追いかけるにはここまでの焦燥感を抱く必要はないかなとも思わされます。
日本社会はティーンエイジドリームばかりを大切にするでしょう。
反対に大人が夢を追うことに対して白い目を向けがちです。
これは日本社会がまだ成熟していないことの顕れでしょう。
欧米の先進国では人生の進路を見つけるために大学卒業後即就職というコースを採用しません。
大学卒業後も自分の進路をしっかり見つけるためにパートタイムで働くことが当たり前です。
自分の夢を見つけるための想像力を養う期間を長く設定しています。
こうした社会こそが成熟して先進的な有り様です。
ティーンエイジドリームには固有の勢いがあってそれを大切にしたいという想いも分かります。
ただ夢の追い方なんてマニュアルで決まったものではありません。
青春に刻む夢
仲間との夢を探して
抑えても抑えきれない
届けたい想いがあった
仲間たちの笑顔があった
全部輝いていた
出典: ティーンエイジドリーム/作詞:miwa,杉山勝彦 作曲:miwa,杉山勝彦
君の夢は先ほど紹介した公式MVではミュージシャンになるというものでした。
そこではmiwaのようなソロシンガーを目指す女子高生を描きます。
しかし夢の具体的な内容は公式MVの解釈に縛られません。
ソロシンガーになるのでしたら孤独な戦いの中で夢を叶えてゆくしかありません。
しかし部活の大会で優勝したいというような夢もあるはずです。
そこには仲間たちの存在が大きくなるでしょう。
同じ夢を見ている仲間の存在によって励まされることはあまりに多いはずです。
また孤独に夢を追っていても応援する友人の笑顔に和まされることもあるでしょう。
社会に出てからも夢を諦めないという選択をすると学生の頃のような理解に恵まれません。
こうした事態はもちろん日本社会が他人にあまりに無関心であることの顕れです。
やはりこの国では青春期に夢を叶えておく必要があるのかもしれません。
それは寂しい国ならではの風景でもあることを知っておいた方がいいでしょう。
反面、ティーンエイジドリームにならば寛容な環境があるということになります。
君にいまこそという思いが沸き起こって抑えきれないのも理解できることでしょう。
青春期に刻むべき想い出というものは確かにあります。
そうした傾向を鑑みて君の夢のパートナーである僕は夢よ急げと願うのです。
miwaは君の伴走者
君が描いた未来に立つ
僕だけが叶えられる
いつまでも色褪せることのない夢
ティーンエイジドリーム
出典: ティーンエイジドリーム/作詞:miwa,杉山勝彦 作曲:miwa,杉山勝彦
歌い出しの歌詞のリフレインになります。
改めて見ていきましょう。
ここで君の未来に僕は立つという文言があります。
僕と君の関係は明示されないのは指摘した通りです。
ただしその関係が非常に親しいものであることはこのラインから推測できます。
親しい人の夢というものはもはや他人事ではなくなるでしょう。
君が拓いた人生の上に僕の青春も成り立ってゆくかもしれないからです。
一方で君からバトンタッチされた夢を僕が叶えるよと歌っているようでもあります。
ふたりは人生のこの先の時間をシェアして生きてゆこうという思いを抱えているようです。
ティーンエイジドリームに恋愛要素を加味させました。
公式MVでも僕と君の関係は恋仲だと描かれます。
ただし、一方で僕がmiwaの分身であることも否定できません。
リスナーのことは自分にとってとても大事なことだとmiwaは考えているのです。
君と呼ぶリスナーの夢の伴走者でありたいとmiwaは願っています。
「大人は判ってくれない」
どうせ無理だと大人は言う 勝手な話だね
できるかどうか決めるのは君 がむしゃら走れ
分かり合えない痛みもある
忘れたい失敗もある
でもその勇気が 僕を支えているよ
出典: ティーンエイジドリーム/作詞:miwa,杉山勝彦 作曲:miwa,杉山勝彦
大人というのは多くの人がティーンエイジドリームを叶えられていません。
そのために10代の子どもたちに人生の遠回りをするような真似はさせたくないと願います。
自分の経験値以上に想像力を羽ばたかせることができなくなっているのです。
そのために頭ごなしにティーンエイジドリームを否定する大人もいるでしょう。
「大人は判ってくれない」というフランソワ・トリュフォーのフランス映画があります。
ティーンエイジドリームとは関連はなくてもこのタイトル通りの思いを子どもはするものです。
しかしいざ自分が大人になって家庭を築き子どもを授かると同様な振る舞いをしかねません。
いま大人にされて嫌だなと思うことがある若いリスナーはその気持ちを大切にしましょう。
自分の子どもに同じ振る舞いをするような負の連鎖を断ち切るのです。
僕は君の痛みを我が事のように感じられる人でしょう。
大人からの心ない言葉で傷付く君に寄り添います。
すべての痛みをシェアできるわけではありません。
僕と君は違う人間ですのでこうした行き違いもときに起こりうるものです。
それでも全般的に君の味方である僕は稀少な存在でしょう。
若い頃に味方に恵まれているということはそれだけで幸せなことです。
この関係をいつまでも保ち続けるのは至難かもしれません。
いまこの日々を大切にして欲しいと願います。
形振り構わず生きよう
miwaの過去の汗と涙
数えても数えきれない
溢れた涙があった
叶わずにでも変わらずに
胸を焦がしている
諦めるにはまだ早い
未来はまだわからない
君と共に僕もこの手を伸ばすよ
ティーンエイジドリーム
出典: ティーンエイジドリーム/作詞:miwa,杉山勝彦 作曲:miwa,杉山勝彦
そろそろ終盤に向かいます。
公式MVでは夢が叶う君を描きました。
しかしmiwaはこの楽曲「ティーンエイジドリーム」では夢が叶う場面を登場させません。
むしろ簡単に夢は叶わないかもしれないと歌うのです。
それでも諦めないことの大切さを歌い上げます。
miwaもすっかりベテラン・シンガーの域に突入しました。
いま現在進行形でmiwaを聴いているリスナーは10代ではないかもしれません。
そうしたリスナーに忘れていた、もしくは諦めていたティーンエイジドリームを思い出させます。
心の中でまだ燻っているだろうあの夢をもう一度思い出して未来を変えてみてはというトーン。
このトーンは楽曲の終盤になってから登場します。
10代のリスナーだけに向けた歌ではなくティーンエイジドリームを抱えた人すべてに贈る歌なのです。
リスナーのこの想いに僕も最大限のサポートをすると誓います。
実際にはmiwaは楽曲を創り、歌って世に出すことしかできません。
ただmiwaがこうして君に共感を示すのは彼女なりの歴史の中で挫折を経験してきたことに基づくのです。
華やかなアーティストの私生活はどんなものでしょうか。
熱心なリスナーでもこの点は想像してみるしかありません。
挫折をしたからといって失敗を歌にするタイプのシンガーではないのがmiwaの魅力でしょう。
しかし彼女なりの経験をもとにして歌を創っています。
「ティーンエイジドリーム」に滲む汗と涙にはmiwa自身の過去が反映しているのです。