「マテリアル・ガール」が描いたように物欲などの欲望を肯定的に掲げる女の子が出現した。
これは倫理的には世紀末感を覚えるものでしょう。
20世紀末の最後のサーカスの様相なのです。
21世紀になると2001年のアメリカ同時多発テロ事件などで祝祭感は後退してシビアな世の中になります。
享楽的な価値観で浮世を謳歌する女の子の存在というのは道徳的な退廃とも捉えられるでしょう。
しかしそうした偏見まみれの道徳感情を野暮と斥けるような新しい女性像の登場は時代の進歩です。
欲望に関して後ろめたさを持たないで生きる「マテリアル・ガール」。
彼女は時代の最先端をゆく存在でもありました。
精神的に健康であることの概念が20世紀末にガラリと変わり始めたことを敏感に捉えた作品なのです。
実際にフランスのポスト・モダンの思想にはもっと先行する研究成果があります。
「マテリアル・ガール」の制作作家陣はこの思想をアメリカで吸収したのではと思える箇所が多いです。
いいか悪いかではなくこの世界の「マテリアル」な仕組みには欲望という原動力が組み込まれている。
それこそが現代資本主義国の最奥の秘密なのです。
おそろしいほどに深いポップ・ソング。
新時代のポップ・アイコンがこの「マテリアル・ガール」を歌ったマドンナに決定したのは偶然ではないです。
この機会にオフィシャルMVで妖艶な美しいマドンナをぜひご覧ください。
1984年の世相や世界経済の在り方とともに「マテリアル・ガール」の秘密を見つめ直してみる。
その上でマドンナが「私はマテリアル・ガールではない」と語った「人間の声」に耳を澄ましてみましょう。
深すぎる作品でしたので記事を書くのも大変でした。
しかしこの世界、つまり「マテリアル・ワールド」の秘密に近付けたことは何よりの収穫です。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
OTOKAKEとマドンナの軌跡
未婚の若い母という社会問題
OTOKAKEに残るマドンナの関連記事をご紹介いたします。
マドンナが作家性を発揮して未婚の若い母という社会問題に切り込みました。
「パパ・ドント・プリーチ」
渾身の記事になります。
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マドンナ【パパ・ドント・プリーチ】歌詞を和訳&解説!パパに何を話している?まだ若い彼女の悩みとは - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
1986年のマドンナのシングル「パパ・ドント・プリーチ」は当時も今も社会問題である未婚の母について大胆に歌詞を書き綴りました。マドンナがものをいう女性として社会的な影響力を持つようになった最初の楽曲です。歌詞を和訳して解説いたします。
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