主人公は自分に言い聞かせているようです。

これは、なんだと。

そう思えばこそ、大胆な行動にもでれるのではないでしょうか。

今晩だけの美しい夢なのだ。

それほどに、主人公の心をとらえる世界が広がっていたのです。

そしてその夢は芳しい匂いと共に、危険な匂いを含んでいるのではないでしょうか。

もしかしたら、不幸へ繋がっているかもしれない危険です。

目の前の美しい女性は、本物の悪魔で自分を不幸の道へ引きづりこむかもしれません。

だから、一晩だけにして、いつでも帰ってこれるように安心したいところですね。

二人の行方

ああ このまま 心のままに 吐息のリズムで 
素肌のボサノヴァ 夜の銀座 
危険なふたり

出典: 麗しのボサノヴァ/作詞:田久保真見 作曲:五木ひろし

主人公は素足でボサノヴァを踊っているような気分なのでしょう。

仕事の帰りだとしたら、これほど状況が違う場所はありませんね。

ボサノヴァ発祥の地であるリオデジャネイロは、日本の裏側です。

飛行機で24時間かけないと辿り着けないのです。

突然、銀座にいる主人公の目の前にビーチが現れたのではないでしょうか。

とても官能的になりそうです。

危険がともなうのは、女性の方も同じなのかもしれません。

お互いになんの情報も持ち得ないからこそ、惹かれ合っているのではないでしょうか。

危ない橋ほど渡りたくなってしまいます。

別人のように

仮面を脱いで

悪い男になって見せて 耳元そっと ささやいては
すり抜けて 微笑う貴女

出典: 麗しのボサノヴァ/作詞:田久保真見 作曲:五木ひろし

女性が主人公に顔をよせ呟きます。

この女性はもう確信犯ですね。

彼女も主人公のことを狙っているのでしょう。

まるで二人で戯れているように、お互い冗談を交わすように近づいていきます。

主人公が攻勢に出てくるまで、このやりとりは続くのでしょうか。

この女性が魔性にみえてきました。

とても怪しい二人、普段と違う仮面の二人。

ここでは、素顔も素性もまったく必要ではないのです。

欲望だけが存在意義になっていてよいという場所なのでしょう。

主人公はどうなってしまうのでしょうか。 

本音はいらない

本気なんて 言わなくていいさ
濡れて赤いくちびる 誘われるまま

出典: 麗しのボサノヴァ/作詞:田久保真見 作曲:五木ひろし

夜の街で出会った、男女

この恋は真剣なものに発展するのでしょうか。

主人公は、その必要はないと思っています。

誠実なものであるかどうかは、ここでは問われていないのです。

女性が何を考えてようが構わない、本能の赴くまま主人公は彼女に向き合っているのです。

彼女は主人公のことをこれっぽちも好きではないのかもしれません。

ただ彼のことを欲しくなっただけなのでしょう。

唇の艶がよりいっそう輝きをまし、主人公に迫ってくるようです。

そして、彼はブレーキを踏みながらも少しずつ、彼女に走って行っているようです。

騙して

許してほしい

ああ 恋だと 思えばいい
夜明けまでの 麗しき恋よ

出典: 麗しのボサノヴァ/作詞:田久保真見 作曲:五木ひろし

主人公も欲望のままに、彼女に翻弄されているのは少し後ろめたいのでしょう。

今晩の出来事は、恋だったことにしようしています。

でも本当に恋なのかもしれません。

抗えないほどの色香が彼女から放出され、どんな男性も太刀打ちできないのでしょう。

そこには、理由など必要ないのだと思うのです。

逆に理由がある方が不自然な感じがします。

よし、恋だと思おう!という主人公のアイディア見事なのではないでしょうか。

そこまで達観して、この欲望の遊戯に飛び込んでいく主人公。

彼もとっても嬉しそうではありませんか。

時間よ止まれ