曖昧な刃物
鋭く錆びたナイフを 忍ばせた
出典: Break My Strings/作詞:Taka 作曲:Alex,Taka
切れ味がいいのか悪いのか分からない刃物が描写されています。
ここから読み取れる感情も「葛藤」です。
刃を突き立てたいという気持ちと、脅かしだけで終わりたいという気持ちが綯(な)い交ぜになっているのではないでしょうか。
少なくとも、目に見える場所で握りしめておくつもりはないようですね。
まだ迷っているのです。
自分を騙すことはできる
あのころの自分には 戻れなくて
どうこう言ったって どうしようもないって
自分に言い聞かす日々…
出典: Break My Strings/作詞:Taka 作曲:Alex,Taka
彼にとって過去の自分の姿は誇らしく、一方で忘れたいものでもあります。
怖いものなしで前だけを向いていた頃は、自分の思う通りに動けていたのでしょう。
その時の自由さや輝きが忘れられず、頭の中にチラつくのです。
今は体には紐が結ばれ、自由に動けなくなっています。紐を引き千切れなければ輝きは取り戻せません。
どうにかできるかもしれないという希望があるからこそ、どうにもならないよと「言い聞かす」行動が生まれます。
ですから彼は決して弱いだけの人間ではないのです。
過去の自分に戻るというのは一見マイナスなことのように感じますが、そうではありません。
今いる場所こそがマイナス地点なのです。まずはそれを認める強さが必要ですね。
打開策はマインドコントロール?
今はただ できる限りの
自分の思いを さらけ出すだけさ
出典: Break My Strings/作詞:Taka 作曲:Alex,Taka
胸に残っているわずかな希望を実現させるためにはどうすればいいのか。
その希望を口に出したり態度に出したりして「ここに希望がある」と認識することが先決です。
スポーツ選手の中には「自分は強い」「絶対に勝てる」と試合中に呪文のように独り言を言い続ける人がいます。
口に出すことで、願望が鮮明な輪郭を持ち、勝利のイメージが更に強まるのです。
ですから「僕」も同じようにして成功のイメージを強めていったのではないでしょうか。
その嘘はついた瞬間バレている
この曲の「君」とは一体誰なのでしょうか。
実は「君」と「僕」は表裏一体の存在でした。
葛藤を消す方法
I break my strings 導かれ
I got the reason why, enough with all of lies
出典: Break My Strings/作詞:Taka 作曲:Alex,Taka
【和訳】
紐を断ち切って(行きたい方へ)
僕は理由を理解したよ、もう嘘はこりごりだ
【考察】
ここで歌われている「導き」は他の誰かによるものではなく自分自身の意志によるものだと解釈しました。
彼は一体何を理解したのか。直後に「lies」つまり嘘という単語が出てくることから、何か関連があるのでしょう。
ここまでの歌詞にあった嘘といえば、自分自身への嘘。
これ以上何も変わらないのだと自分に「言い聞かす」ことを指すのではないでしょうか。
本当は現状を変えたいのに、このままでいいのだと自分に嘘をついていたのです。
自分を誤魔化して生きていても、内面に生じる葛藤はいつになっても消えません。
それに気づき、負の連鎖を断ち切りたいと強く思っているのでしょう。
僕は君をよく知っている
You'll never reach out to my soul
You know, you know, Desire in my hand
出典: Break My Strings/作詞:Taka 作曲:Alex,Taka
【和訳】
僕の魂には絶対に届かないよ
知っているだろう、知っているはずさ、希望は僕の手の中にある
【考察】
輝いていた頃の自分につながっている道と、徐々に輝きを失っていく自分につながる道。
「君」は後者に導こうとしています。しかし彼はそれには従わず、前者の道を選ぶはずです。
彼がまだ希望を捨てていないことを「知っているだろう」と二度繰り返していますね。なぜ二度も言ったのでしょうか。
「知らないはずないだろう」という意味に捉えると分かりやすいかもしれません。
つまり、「君」=「僕」。自分のことは自分が一番分かっています。
流されるまま生きていこうとするのが「君」、希望に満ち溢れていた頃に戻ろうとするのが「僕」なのです。
希望を捨てていない。だから彼はまだまだ前に進めるはずです。