翻弄された男の叫び

「クライン」がMTV Video Music Awardsの最優秀賞
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/エアロスミス
本曲のMVはファンの指示も高く、MTVで高く評価されています。
MVに描かれたのは、男性に振られた女性の姿でした。
しかし、エアロスミスの『Cryin’』は別れようともがく男の叫びです。
MVではエアロスミスのパフォーマンスにもどんどん惹かれていきます。
まるで表と裏を同時に観るようなMVも必見といえるでしょう。
曲中では、心から愛している女性が自分を振り向きません。
奔放な女性に翻弄されて疲弊し、思い通りにならない現状に終止符を打つつもりです。
デビュー当時から少しも変わらないスティーヴン・タイラーのドラマチックなヴォーカル。
そこで歌われている男の身を裂くような気持ちが、叫びとなって響いてきます。
叫び出すほど愛していた、でも今は別れたいそんな狭間の心理描写が見事に歌い上げられるのです。
では早速、歌詞の内容を紐解いていきましょう。
絶望感と孤独感を感じる冒頭
この曲の出だしは、とても切ないものです。
もう終わっていたのだから、もういいんだ。
そういいながらも、彼女への未練がたっぷりと残っていることが伝わってきます。
これまでの愛に決別する
There was a time
When I was so brokenhearted
Love wasn't much of a friend of mine
The tables have turned, yeah
心破れてひどく落ち込んだときもあったけれど
愛は重要な友人ではなかったし
もう今までとは変わったんだ
出典: Cryin’/作詞:Steven Tyler,Joe Perry,Taylor Rhodes 作曲:Steven Tyler,Joe Perry,Taylor Rhodes
心から愛した彼女だったけれど、付き合っている間に辛いことが沢山あったのでしょう。
彼女との別れを決断した時は、後悔をしたのかもしれません。
別れなければいけない、と頭では分かっていてもなかなか心は素直になってくれません。
そこで彼は自分自身に彼女との愛は重要じゃなかった、といい聞かせています。
そして、これまでの関係性はもう変わっていると告げました。
彼から一方的に向けられていた愛の矢印が、消えていくのを感じます。
愛ではなかった
'Cause me and them ways have parted
That kind of love was the killin' kind
なぜって、そんな生き方とは決別したんだ
それは愛のふりをした悲惨なものだったから
出典: Cryin’/作詞:Steven Tyler,Joe Perry,Taylor Rhodes 作曲:Steven Tyler,Joe Perry,Taylor Rhodes
彼女との別れを決心したのは、二人の間に愛はなかったからといっています。
彼が愛だと思っていたものは、愛ではなかったのです。
愛していたのは彼だけだったのでしょうか。
だから、存在していたはずの愛が惨めなものに感じたのでしょう。
彼女を愛し続ける生き方はもう疲れたのです。
彼が求めている愛とは
All I want is someone I can't resist
I know all I need to know by the way that I got kissed
抵抗できない程愛する誰かを求めている
キスの仕方で、それはわかるものなんだ
出典: Cryin’/作詞:Steven Tyler,Joe Perry,Taylor Rhodes 作曲:Steven Tyler,Joe Perry,Taylor Rhodes
彼は、自分が求めていた愛を彼女に重ねていたのでしょう。
しかしそれは間違いだったのです。
彼の求める愛を彼女は持っていませんでした。
抗えない程にのめりこめる愛を彼は望んでいるのです。
それは一方通行ではなく、お互いに求め続ける愛なのでしょう。
キスの仕方で、彼女ではないと気がつくべきだったのです。
そう嘆く一方、求める相手が彼女だったらよかった、という思いが見え隠れしています。
愛の価値観が違う彼女に振り回された自分。
しかし、絶望感と孤独感を抱きつつも彼女を求める気持ちが残っているのです。
それが彼の叫びへと繋がっているのでしょう。
繰り返される叫び
この曲のサビは何度も繰り返されます。
それは彼の心からの叫びだからです。
愛と別れに苦しむ心が、痛い程伝わってきます。