五人編成の絶妙な音量バランス

無条件幸福論/SuG(PV FULL)
サビを冒頭に
ボーカル、ギター(二人)、ベース、ドラムの五人編成のロックバンド。
ミディアムのカラフルな髪型にバランスのとれた演奏スタイルです。
「無条件幸福論」はバラードをイメージさせるような落ち着いたテンポとなっています。
出だしはボーカルのサビから入り、Aメロへとつなぎます。
ドラマやアニメでも目玉シーンをオープニングに持ってくる手法があります。
90年代はおなじみのドラマ主題歌から入るパターンが一般的でした。
しかし、ビデオの録画機能が普及し、曲を聴かずにドラマだけを楽しむ視聴者が増えたのです。
そこで番組制作者は主題歌を浸透させるため、ドラマの構成をアレンジしました。
そうすることで主題歌も自然と耳に入るようになったのです。
音楽でも同じ現象が起こり、サビを歌い出しに持ってくる技法が流行しました。
こうして短時間で効果的にインパクトを与えることに成功したのです。
「無条件幸福論」はどんな歌?
実は彼氏目線!?
SuGのボーカルは男性ですが、サビには女性言葉が使われています。
この記述から、歌詞は女性目線で書かれたものと勘違いしてしまう人もいるでしょう。
中盤にくると「僕」という一人称が出てきます。
女性でも自分を指して「僕」という人もいます。
しかし、一般的に「僕」と言えば、男性が使う言葉です。
そこで、リスナーは混乱するのです。
「この歌詞は一体全体男性目線なのか、それとも女性目線なのか?」
答えは男性目線の”よりを戻す歌”です。
それでは、ストーリー風に歌詞を解説していきましょう!
繰り返しの効果
サビだけは彼女のセリフ
あなた以上の人が居たとしても
あたしはあなたを愛すのでしょう
だからこそ わがままはもう言わないから
それじゃあ 今(ここ)で バイバイ
出典: 無条件幸福論/作詞:武瑠 作曲:武瑠
まず上の歌詞は彼女が彼氏に対して別れを宣告した言葉です。
それをサビに使うことで、彼氏の頭の中をうまく表白しています。
女性言葉なので違和感を感じた読者もいるでしょう。
上の歌詞からは女性側の懊悩(おうのう)する様子が描かれています。
生涯あなた以上に好きな人はできないだろうと……。
しかし、何らかの原因で彼女側は別れないといけない状況に陥りました。
歌詞に詳細は書かれていません。
しかし、別れたくないのに別れを切り出した様子は推察できます。
そして、泣く泣く彼氏に別れを告げるのです。
サビの特徴
「無条件幸福論」のサビに”愛すのでしょう”という一文があります。
これを平仮名にします。
”あいすのでしょう”
ちょうど七文字ですね。
古文の授業で出てきた「五・七・五・七・七」の短歌を思い出してください。
全部で三十一音あります。
五文字と七文字は古来よりリズムのいい日本語です。
大和の歌人・紀貫之(きのつらゆき)もそれを理解していました。
三十六歌仙の一人で百人一首にもあります。
「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける(百人一首)」
短歌とは現代風に言えば、J-POPです。
リズミカルに歌うことが平安貴族の歌会では重要でした。
同じように現代の音楽にも五文字や七文字でサビを書く作詞家が多くいます。
気になる人はサザンオールスターズの歌詞の”サビ”を参考にしてみてください。
ほとんどのサビは七五調(五文字と七文字)で作られています。