2012年10月リリースの曲です。
秋リリースの曲なのに「Summer」で「雪が降る」です。しかもただの「Summer」ではなく「Sexy Summer」です。
セクガル(=Sexy Girls。Sexy Zoneのファンをこう呼びます)たちをして「一番のトンチキソング」と言わしめる、通称「セクサマ」のトンチキ振りは既にタイトルに表れています。
これこそが作詞家・三浦徳子の真骨頂です。ロマンティシズムに紛れてトンチキを繰り出すアイドルポップスの見本のような作品です。
「タイトルからトンチキ」の系譜を遡ると、田原俊彦「君に薔薇薔薇…という感じ」(1981年)や新井薫子「イニシャルは夏」(1982年)などに行き当たります。これらも三浦作品です。
古くからアイドルポップスの歌詞というものは「訳の分からないもの」で満たされていました。逆に言えば「訳の分からないのがアイドルソング」であり、「アイドルソングはトンチキなもの」なのです。
しかしその一方、「一年中の愛を込めて告白するよ」、「ためらうボクに勇気を胸いっぱい下さい」など、ロマンティックなフレーズもきちんと入っています。
アイドルソングはトンチキなものですが、トンチキだけではいけないのです。三浦徳子はそれをよく分かったアイドルソングの匠です。
Summer time クリスマスの
Ding Dong 鐘が鳴るよ
見慣れた景色が Shine on,Come on,Shine on
Hello,Hello!&Merry Christmas 今がいいチャンス!
一年中の愛を込めて 告白するよ
Hello,Hello!君も同じ 波をつかまえて
すべり落ちて 笑い合おうよ シャーベットみたいな Beautiful night
出典: Sexy Summerに雪が降る/作詞:三浦徳子 作曲:Janne Hyoty・Martin Grano 編曲:鈴木Daichi秀行
ちょっとロマンティック、でも「Summer time」で「クリスマス」?という不思議な雰囲気は、歌い出しの「真夏の海 舞い落ち溶ける ホワイトスノウ?不思議さ」を受けてのフレーズです。
ここに「Ding Dong」という擬音を入れることでクリスマスの雰囲気を高めています。聴く人によっては先に歌われた「Summer time」をここで忘れてしまうでしょう。
しかし、それでいいのです。それによって冬を連想させる「シャーベットみたいな Beautiful night」をすんなり受け容れることができるのです。
この歌詞をかわいらしいメロディに乗せて歌うことで、歌詞に含まれる不思議な違和感などなきに等しいものとなります。ここに歌い手の元気な笑顔が加われば怖いものなどありません。
これを歌いこなすSexy Zoneはアイドルとして着実に成長を遂げていると言えます。
そして、迎える大サビの歌詞が次の通りです。
Summer time 雪がKissした
ボクの心の
Sexy Sexy Zone
出典: Sexy Summerに雪が降る/作詞:三浦徳子 作曲:Janne Hyoty・Martin Grano 編曲:鈴木Daichi秀行
「Summer time」の「雪がKissした」「ボクの心のSexy Zone」です。
力技と言える歌詞ですが、大サビの短いフレーズにこの難解さを入れ込んで、さらりと流してしまうのが三浦流です。
律儀に歌い手の名である「Sexy Zone」というフレーズが盛り込まれることで、難解さと聴き手の深読みが助長されます。「心のSexy Zone」とはいったいどのような部分なのか。
読めば読むほど悩みますが、曲に乗れば気持ちよく歌えるというのも、三浦作品の特徴です。
あまり深く考えずにSexy Zoneと面々と一緒に楽しく歌ってください。
「Sexy Summerに雪が降る」のセリフ
10月リリースで音楽番組等で歌うのも秋いっぱいですが、間奏で言ってしまいます「メリークリスマス」。この曲はきっと、長い長い前夜祭なのです。
クリスマスの日を待ち続けるわくわくした気持ち。誰しも感じたことがある胸の高鳴り。そういったものを、弾むような曲調とSexy Zoneのキュートなダンスが表しているのでしょう。
アウトロではSexy Zoneの5人が1人1人、カメラに向かってセリフを言います。テレビ番組ではアドリブで毎回違うセリフを口にする人もいますが、基本は下記の通りです。
「僕たちからサマークリスマス」(中島健人)
「あなたのもとにも雪が届きますように」(菊池風磨)
「今年の冬も一緒だよ」(松島聡)
「I miss you」(マリウス葉)
「1年中愛してるよ」(佐藤勝利)
このセリフの入れ方は正統派アイドルソングです。
「身近な」とか「会いに行ける」とか「親しみやすい」とか、平成に入ってからはアイドルと一般人との距離を詰めるフレーズがたくさんアイドルを修飾するようになりました。
しかしSexy Zoneはまだアイドルが王子様的な距離感を保っていた頃のアイドルの在り方を再現しつつあります。親しみを残したままで、うつくしい距離感を持つ正統派アイドルとして。
カラフルeyes
「カラフルeyes」のここに注目!
愛す 愛す 愛す You said?
Loving you,Loving you
今 僕のことを好きだと言ったの?
ねぇ ちょっと待ってよ 心の準備がね
君のことをそんなふうに 見てなかったのに
急に恋とか 意識して
Show me your love,Show me your love
出典: カラフルeyes/作詞:久保田洋司 作曲:Andreas Ohrn・Henrik Smith・Andreas Oberg 編曲:船山基紀
もとTHE東南西北のボーカル、久保田洋二が書いた詞は随分スタイリッシュにまとまっていますが、やはりアイドルポップスを意識したつくりになっています。
イントロにコーラスとして「愛す 愛す 愛す」と入っていますが、歌詞を見ずに初めて聴いた人は「愛す」という日本語として聴けたでしょうか?
ほかの部分がすべて英語になっているので、余計に錯覚しやすいのですが、おそらくそれは狙いのうちではないかと思われます。
「愛す」とは聞こえなかったから「今 僕のことを好きだと言ったの?」という歌い出しなのでしょう。
さらに続く部分で、「愛す」という言葉が日本語かどうか曖昧なかたちで使われたことが分かるようになります。
our Colorful Eyes Eyes Eyes
目で 愛す 愛す 愛す
二人 ここを抜け出して
Colorful Eyes Eyes 大好き
Kiss Kiss Kiss
まさかの展開
抱きしめても ささやいても 見つめ合っていたい
君は Co-lor-fu-l Eyes
瞳で愛す
出典: カラフルeyes/作詞:久保田洋司 作曲:Andreas Ohrn・Henrik Smith・Andreas Oberg 編曲:船山基紀
「Eyes Eyes Eyes」と「愛す 愛す 愛す」が押韻しているのです。
タイトルが「カラフルeyes」ですし、だからイントロでは「Eyes」と歌われていると思った方も多いのではないでしょうか。
ここで「Eyes」と「愛す」の2語を押韻させることと、歌い出しの歌詞、そして間奏に入るセリフを活かすように、イントロでは「愛す」の「す」を「su」ではなく「sh」と発音させていると考えられます。
リズムに合わせて同じ単語をくり返して歌う、短い単語を押韻させるなどはアイドルポップスでよく用いられる手法です。
先に紹介した2曲よりも幾分落ち着いた、大人っぽい雰囲気の曲調によく合ったスタイルの歌詞です。
「カラフルeyes」のセリフ
ややおとなしめの曲ですが、間奏ではステージと客席とのコール&レスポンスが行われる、ライブや公開放送などで盛り上がる曲です。
下記のセリフが間奏に挟まれるのですが、Sexy Zoneメンバーが「You Say!」の後にマイクを客席に向けて、客席からは「I Say!」と返し、その後に各々のセリフが入ります。
「You Say!(I Say!)」(揃って)
「When those eyes close, we slowry promise the love.」(菊池風磨)
「You Say!(I Say!)Can I kiss you! 目閉じて?」(中島健人)
「You Say!(I Say!)僕もきみが好きだよ?」(佐藤勝利)
佐藤勝利のセリフで「僕も」と言っているのは、イントロの「愛す」がきちんと「愛す」と認識できてはじめてその意味が分かる、という仕組みにもなっています。
「愛す」と言われて「僕も」と答えた、という訳です。「目で愛す」、「瞳で愛す」と言っていた2人がここでようやく言葉を交わすのです。