不思議なタイトル
収録情報
演出家出演(通常盤)
1S.S
2名前のない鳥
3フィーバー
4シネマ
5ON THE AIR
6くだらないことばかり
7デ・ジャヴ
8はいからさん
9△
10ワールドエンド
11カーニバル
出典: http://passepied.info/
まずは、S.Sについておさらいします。
S.Sは、パスピエのメジャー1stアルバム「演出家出演」の1曲目に収録されています。
シングルカットはされていませんが、MVを制作しYouTubeにて公開されました。
同アルバムには「フィーバー」「名前のない鳥」「ON THE AIR」などのシングル曲も収録されてます。
ちなみに、「△」は、「さんかっけい」と読みます。
早速ですが、MVをご覧ください。
不思議なタイトル
アルバムのオープニングに相応しい勢いのある曲調ですね。
この時期はまだパスピエはMVやジャケットに「顔を露出しないバンド」でした。
見えそうで見えないメンバーの顔、後ろで戦う戦隊ヒーロー&怪人(?)、パフォーマーなど、何回見ても「そこ、もう一回見して!」と思わせる作りになっています。
タイトルについて、「S.S」が何かのイニシャルというのはわかりますが、歌詞をパッと見て何の略なのかわかりません。
ネット上でも話題になっているようですし、気になりますね。
歌詞やコードをヒントにタイトルの意味に迫ってみたいと思います。
歌詞解釈
前半の歌詞
感情はおいくら 見積書頂戴な
だって人生は打算だもの
珠弾いて横顔なくせよ
単調な暮らしにあげたいわ
それはさながら高性能なギフト
忙しい言葉の上級者
出典: S.S /作詞:大胡田なつき 作曲:成田ハネダ
勘定と感情がかかっていて非常に面白い歌い出しです。
通常、勘定を尋ねる時は見積書ではなく請求書か領収書でしょう。
あえて「見積を取る」としたところから、「まだ購入するか検討する」という意思表示が窺えます。
つまり、駆け引きをしているという示唆ですね。
「珠弾いて」つまりソロバンを弾いている時は下を向いていますから、「横顔なくせよ」は横を向かせない。
色々計算させて他の人を見させたくない、「私だけ見て欲しいから駆け引きを仕掛けた」ということでしょうか。
単調な暮らしに飽き飽きしている相手にあげたいのは、「忙しい言葉の上級者」ですね。
主人公が、相手を言葉巧みに翻弄している様子が想像できます。
後半の歌詞
大盛況ですどうも フラッシュはご遠慮、お願いストップ!
賛同の数さえ疎ましい時代の中で
最後の切り札 免罪符は破って捨てろよ
言いたい言えない 形を失っては宙に舞った
倫理と不条理の間で
1秒前と2秒前と3456さかのぼって
置き去りだった日が時間差で駆け回って
消えてしまう前に
出典: S.S /作詞:大胡田なつき 作曲:成田ハネダ
「大盛況~時代の中で」までは、顔の一部を隠していたパスピエらしいフレーズだと思います。
「免罪符は破って捨てろよ」は、「罪(過ち?)を犯すことを恐るな」ということです。
恋愛を悪いものだと考える人はなかなかいませんが、「イケナイこと」と捉えてしまうところがありますよね。
もっとも、「イケナイ」から惹かれるのかもしれませんが。
「言いたい言えない」のはおそらく素直な気持ち。
不条理は言えないこと、倫理は女の子から言うもんじゃないという一般論でしょうか。
曲調的にも、キュンとくる部分です。
サビの歌詞
S.S さらって 所詮机上の空論
大体ダメだって そんなんじゃ伝わんない
S.S 照らして 全部見抜いて 裏切り御免さ
さあ!さらって さかしまなポーカーフェイス
奇をてらって浮世で笑う
S.S 意味ない 駆け引きなんて正気の沙汰じゃない
出典: S.S /作詞:大胡田なつき 作曲:成田ハネダ
「さらって」と思っているのに、「ポーカーフェイス」というのはいかにも緊張感のあるシーンが浮かび上がります。
「さかしま」とは、逆さま、よこしまなどの意味があるので、心とは裏腹な顔をしています。
「意味ない 駆け引きなんて正気の沙汰じゃない」という部分についてはふた通りの解釈を提案します。
「この駆け引きには意味がある、だって正気の沙汰じゃできないもの」という解釈と、「意味のない駆け引きをするなんて、どうかしちゃったわ」という解釈ができます。
何れにしても天邪鬼な感じでいいですね、「全部見抜いて」が前者を匂わせ、「裏切り御免さ」が後者を匂わせます。