校舎の屋上から飛び降り自殺するような素振りを見せる。

大教室での講義を堂々と退席する美丘の行動を咎める教師に「天気が良いから」と平然と返す。

夜の公園の噴水の中に飛び込んで彼氏を引きずり込む。屋上で大の字に横たわって星空を眺める…

本当に何をしでかすかわからない女の子です。

大勢の前でちょっと意地悪な微笑みを浮かべながら、大胆なセリフをさらっと言ってのける男前!

羨望に近い感情を持った人も多かったのではないでしょうか?

純真で無邪気な面も

でも、子供たちと一緒にバスケで遊んであげたり、おばあちゃんのことを心配して率先して介護するエピソードもあります。

純真で無邪気な別の顔が垣間見える瞬間もあり、ちょっと憎めないキャラクターです。

そんな幾つもの顔を持つ難しい役を吉高由里子はとても上手に演じていました。

心の中のファインダーに映る君の表情

言葉には言い表せない感情

サビの部分には、目まぐるしく変化する表情に当惑しながらも温かく見つめる視線が歌い上げられます。

いくら言葉で言い表そうとしてもうまく言えないもどかしい気持ちをせつなげに吐露します。

いま
君だけを見つめている怒った顔も笑った顔も
この言葉じゃきっと足りないけど君が好き

出典: 蛍/作詞:福山雅治 作曲:福山雅治

オーバーラップするドラマ・シーン

僕の君への視線は、ドラマのシーンとオーバーラップさせることも意図されています。

屈託のない笑みを浮かべながら残酷な言葉を口にする君。

男たちを相手に工事標識の三角のコーンを投げつける男勝りで勇敢な君

夜の街中を二人で疾走している時の嬉しそうな君。思いがけず優しい言葉をかけられ戸惑い涙を浮かべる君

心地良さそうにブランケットにくるまり目を閉じる君

心の中のファインダーに映る君

福山雅治「蛍」の歌詞が切なすぎて胸がキュッとなると話題に!ドラマの世界観を表現した歌詞は?の画像

いま
君だけを見つめている出逢った春もはしゃいだ夏も
泣いた秋も寄り添い歩いた冬も君が好き

出典: 蛍/作詞:福山雅治 作曲:福山雅治

すべてを包み込むような優しい歌詞の中に、生き急ぐかのように周囲とぶつかりあいながらさまざまな表情を浮かべる女の子のイメージが現れては消えていきます。

この歌詞を聴くと、カメラマンとしての福山雅治のファインダーの中を一緒に見ているような気分になります。

表現したいものを構図の中におさめる作業と短いフレーズの中に想いを凝縮する作詞は、どこか共通するものがありそうです。

奔放で大胆な行動に駆り立てたものは?

死に至る病

ドラマでは美丘が不治の病に冒されていることが明かされます。

美丘の大胆な言動や行動に周囲が翻弄され人間関係が軋むような主旋律。

そして病院での診察、両親の苦悩、不意に訪れる発作など、訪れようとしている「死」のイメージがこれに呼応します。

原因不明の難病大脳が萎縮

身体が次第に動かなくなり記憶障害が進行、記憶の一切を失ったすえに死に至る

一瞬一秒を大事に生きたいから

数ヶ月後に訪れようとしている自分の悲惨な運命を前に、美丘は一瞬一秒を大事に生きたい、自分がしたいことをしたい、愛したいものを愛したいと心に決めていました。

自由奔放に生きているようにしか見えない美丘の非常識とも言える一連の行動は、死への恐怖からくるものでした。