君のことをもっと知りたい、そして僕のことも…
君のことをもっと知りたい、理解したい
心を閉ざした少女の内側に、そっと囁くようなフレーズです。
どこにいたのどんな世界で君は生きていたの
誰を愛したのどんな傷があるの
一人きり泣いていたの
出典: 蛍/作詞:福山雅治 作曲:福山雅治
ちょっと不器用に、それでも真正面に向き合い、固く閉ざした心に真摯に語りかけます。
問いかけるその言葉には、過去にどんな恋愛や辛い経験が有ったとしても、今の君をすべて受け入れる、という寛容と優しさが滲み出ています。
記憶の中の街へ
僕が育った街にいつか一緒に帰ろうよ
古い教会 坂道の通学路
逢って欲しい人がいる
出典: 蛍/作詞:福山雅治 作曲:福山雅治
心を閉ざした少女をそっと外に連れ出すかのように優しく誘いかけます。僕の好きな街、友人たち、家族のこと…
ちょっと照れくさいけれど、と、はにかむ笑顔が目に浮かぶようです。
僕の記憶の中に生きる街に連れて行きたい、好きな人たちに逢わせたいというこのフレーズは、孤独だった少女の心の帳をゆっくりと開いていきます。
歌詞から大きく広がるドラマの世界観
「蛍」の核(コア)・フレーズです。
いま
蛍火のように 僕ら生命の火を燃やしている
ちっぽけでも どんな悲劇さえも焼き尽くすように
出典: 蛍/作詞:福山雅治 作曲:福山雅治
闇の中に儚げに光る蛍の火、それは「今この瞬間、自分は生きている!この世界に確かに存在している!」と叫ぶ生命の光そのもの。
そしてこの世界から消えようとしている君を抱きしめ、ずっとそばにいる、決して忘れることはないと誓う僕もまた一つの蛍火です。
おぼろげに明滅する二人の光は同じ生命の輝きとなっていきます。
そして闇のように見えていたこの世界には同じような数千億の淡い蛍火が確かに瞬いていることに気がつきます。
生と死の境界で、浮遊しながら明滅する無数の光点…
美丘、太一、家族、友だちの感情が高まるシーンで流れるこのフレーズは、「単なる難病物」と片付けられそうなドラマの世界観を外に向かって大きく開放しました。
ドラマのテーマは恋愛の成就という枠組みを超えて、「この世に生まれて生を全うすることの尊さ」という普遍的なテーマに昇華されたわけです。
小説の中の美丘は?
もう一人の美丘
「蛍」はテレビドラマの主題歌として書き下ろされたのですから、脚本のほかに原作小説からもインスピレーションを得たであろうことは想像に難くありません。
石田衣良の小説の中では美丘は少し違った描かれ方をされています。
大胆な行動や言動は同じですが、もっと中性的で、バイセクシャルとしてのSEXも公言し友だちをどぎまぎさせたりもします。
ライダージャケットにミニスカートという攻撃的なパンクファッション。
酔っ払いの男たちを相手に敏捷に身体を動かしコンクリートの塊をぶつけて撃退する姿は勇猛な戦士のように過激で破壊的です。