物質的な物をすべて処分したとしても、心の重荷は消えないということです。
物だけでなく想い出についてもでしょう。
消し去っても何も解決せず、前に進めないと嘆いているのだと思います。
どうすれば時が過ぎる
言葉はいつも役に立たない
あの日の君の声は
もう僕に届かない
出典: TIME/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘
主人公は頭の中で過去に恋人が言ったセリフを何度も繰り返していたのでしょう。
言葉は人間の脳裏に刻まれて時空を超えることができるのです。
そう考えると、人間の頭はタイムマシンになっているともいえます。
ただ、反対に未来から過去へ言葉を投げかけることはできません。
もしできれば、別れるなと叫びたかったのだと思います。
しかし、そんな声を閉ざそうと決心しました。
きっと、想い出に浸るのはこれで最後だと思っているのでしょう。
身を切るような切ないラストでした。
概念的に過去に留まり続けている
記事の前半部分で究極の孤独が、歌詞を深くしてくれる可能性があると述べました。
歌詞の中では主人公に味方してくれるものは何もありません。
太陽も海にも見放されているような表現が多いです。
ちょっと発想を飛ばしてみましょう。
仮にすべての物質に見捨てられると考えると、時間にも見捨てられることになります。
つまり主人公は今を生きておらず、ずっと過去に留まり続けていることになるのです。
ともあれ、すべての物質に見捨てられることは物理的に不可能なので概念上の話です。
孤独とはすべてに見捨てられたように感じられ、心だけが前に進んでいない状態なのだと思います。
楽曲のタイトルだけをみると、過去に囚われているような印象を受けます。
それもひとつの正解です。
さらに踏み込んでいうならば、心が時間の概念の外に放り出された状態を歌っているのではないでしょうか。
この感情の流れが名曲「LOVE PHANTOM」にも繋がるようです。
この声はいつまで残るだろうか
サビのラストでは、過去の恋人の幻影を振り払うような意志が垣間見えます。
そしてきっと相手に対して歌うのをやめてしまうのでしょう。
恋人にその声が届く可能性もゼロになるわけです。
そこで相手との関係は終わります。
ただ、この「TIME」という曲は、文明が滅ばない限りCDやインターネット上から消えることはないでしょう。
歌詞はこの先ずっと残ります。
未来で誰かが再生して何かを感じてくれれば。
そのときはじめて歌詞の主人公が歌った意味があるといえるのだと思います。
広く捉えればすべての楽曲がこのような願いの元作られているのかもしれません。
中でも、この楽曲はその最たるものだといえます。
歌詞を聴いた人は主人公と痛みを分かち合うでしょう。
もしくは同じような結末を辿らないように心構えを変えるかもしれません。
過去への執着を歌ったものでありながら、着実に未来の誰かの糧となっていくのです。
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