MV「今夜だけ浮かれたかった」の世界観
日常から非日常へ
学校も短縮授業になり、地元の夏祭りが近づく棚機月(たなばたづき)。
真新しい浴衣に袖を通し、好きな人と落ち合うことになりました。
いつもの氏神様の参道には屋台が裸電球を灯し、地元の青年会が盆踊り会場の準備に取り掛かっています。
何もなかった境内はイベントスペースに輪廻転生(りんねてんせい)し、雰囲気を盛り上げてくれます。
この”非現実感”がお祭りの醍醐味です。
もともとご先祖様の霊を迎え入れるための盆踊り。
きっとそんな場所なら愛しい彼ともうまくいくはず…。
彼氏の一歩手前のような不思議な間柄。
少しでも心の距離を縮めようと乙女は東奔西走します。
そして、二学期が始まるまでには、きっと手をつないでいることでしょう。
この裸にしたくてもできない繊細な女心を「今夜だけ浮かれたかった」描いています。
イントロはボーカロイド?
浴衣とダンスとボカロ
イントロと間奏ではコンピュータ音声が使われています。
もはやコンピュータボイスも歌手の仲間入りです。
夏、浴衣、ダンス、ボーカロイドのサイバーテイストな和風MV。
優しさの中に秘められた強い想いを表現しているようにも感じます。
コンピュータ音声は「人間っぽくない」、「機械的」などとメジャーデビューは不評でした。
しかし、改良を重ね人間の歌声と近い域にまで達しています。
定型句であれば、コンピュータ音声に違和感を持つ大和民族は減っていることでしょう。
現場では同じ「あ」でも様々な語句とのつながりを想定し、百種類以上の「あ」が音声登録されています。
これを50音のひらがな全てに搭載し、自然なイントネーションを再現しているのです。
あるあるの歌詞が妙手
香水 V.S. 花火
勇気だしてつけた香水 火薬の煙に消された
出典: 今夜だけ浮かれたかった/作詞:児玉雨子 作曲:中島卓偉
日本の学校ではメイクやカラーリングが制限されていることがスタンダードです。
そうした圧政から解放される夏休み。
浴衣を着て、髪をセットし、最後に香水で仕上げます。
少しでもいい印象を与えたくて………。
しかし、手持ち花火やねずみ花火の香りはそれを圧倒します。
夏を感じさせる風情のある火薬の匂いに、振りかけた香水には全く歯が立ちません。
まるで”ひのきの棒”でラスボスに立ち向かう気分です。
きっと香水をつけているときは、花火の煙の臭いまで考えが及ばなかったのでしょう。
それくらい”心”がウキウキしているのです。
みなさんもそんな経験ありませんか?
カールしたのに雨で”巻き”がとれた、8cmのヒールを履いたら点字ブロックでこけたなど。
よかれと思ってした行為がけんもほろろに扱われるシーンは多々あります。
あまり深く考えず悠揚(ゆうよう)に構えましょう。
浴衣にはハーフアップ!?
日本人には和装が似合う
江戸時代、着物と言えば高島田(島田まげ)でした。
つまり髪を全部アップにした日本髪の伝統的なフォームです。
しかし、今は21世紀。
1868年の明治維新から150年が過ぎています。
浴衣や袴に合わせる髪型はハーフアップもOKです。
さらにセットも楽なので一人でできます。
帯は少し難しいですが、お気に入りの結び方を一つ覚えておけばいいでしょう。
西洋のドレスと違って、浴衣は日本人の体形にあった服装です。
欧米系の人が浴衣を着ると違和感を覚えるのはそのためです。
ドレスはアングロサクソン系、浴衣は大和なでしこのスタイルが映えるようにデザインされています。
京都の先斗町(ぽんとちょう)を散策した折に芸妓さんに目を奪われた人もたくさんいるでしょう。