太田裕美を知っていますか?

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太田裕美biography

太田裕美は1974年にデビューしたシンガーソングライターです。歌謡曲を歌う歌手あるいはアイドルだと思っている人も多いのですが、歌うだけでなく、詞や曲も書きます。

デビュー曲は「雨だれ」。4thシングル「木綿のハンカチーフ」が爆発的大ヒットを記録して、太田裕美と言えばこの曲と言う人はとても多いです。

「木綿のハンカチーフ」のヒットにより、リリースの翌年1976年から5年連続で紅白歌合戦に出場。はじめての出場時に歌ったのはもちろん「木綿のハンカチーフ」です。

1982年から一時休業してアメリカに留学していましたが、この頃のことを書いたエッセイ『八番街西五十一丁目より』が第4回ニッポン放送青春文芸賞優秀賞を受賞しています。

8ヶ月の留学ののち帰国し、ニューウェーブ路線に移行。テクノポップ系の曲のリリースが増えました。また、間もなく当時のレコーディングディレクター福岡智彦と結婚。2児を儲けます。

1996年にライブ活動を再開し、現在も続けています。また、他のアーティストへの楽曲提供もしています。

さらばシベリア鉄道/太田裕美

提供曲のいろいろ

1970年代に人気を博した双子デュオ、ザ・リリーズは活躍時期が太田と同じ頃ですが、その頃既に太田は彼女らに楽曲を提供していました。8thシングル「春風の中でつかまえて」は太田の作曲です。

1980年代に入ると自らの歌唱は少し少なくなりましたが、アグネス・チャン桑名正博(当時『将大』)、高見知佳島田奈美遊佐未森など「いまをときめく」歌手たちへの楽曲提供を次々とこなしました。

めずらしいところではヒップアップへの提供があります。ヒップアップは同じ事務所に所属するお笑いユニットです。漫才ブームに乗って大人気だった3人組で、ギターを使った音楽漫談もしていました。

人気絶頂だったヒップアップがリリースしたシングル「可愛いひとよ」のc/w曲「尼寺慕情」は大福敏太が作曲家としてクレジットされていますが、「大福敏太」は太田の別名です。

歌手としてのみならず作曲家としても太田裕美は活躍していたのでした。

尼寺慕情/ヒップアップ

「さらばシベリア鉄道」をつくった人たち

作詞家・松本隆

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日本の歌謡曲を聴いたことがある人で松本隆の名を知らない人はいないのではないかと思われるほど、松本隆は多くのヒット作を残しています。

細野晴臣、大瀧詠一らとバンド「はっぴいえんど」でドラマーとして活動したのちムーンライダーズを経て作詞家となります。歌謡曲での最初のヒット作はアグネス・チャンの「ポケットいっぱいの秘密」

「ポケットいっぱいの秘密」は松本の作詞家デビュー作でもありました。その後、それまで日本の歌謡曲になかった形態の作品「木綿のハンカチーフ」のヒットで作詞家としての地位確立します。

その後、歌謡曲のヒットがあればその作詞家は松本であると思ってもだいたい間違いがない、というくらいに確かな作品づくりを続け、2017年にはその功績により紫綬褒章を受章しています。

はっぴいえんどでともに活動した大瀧詠一にも「君は天然色」「恋するカレン」「ハートじかけのオレンジ」など、たびたび歌詞を提供していて、「さらばシベリア鉄道」もそのうちの1作です。

作曲家・大瀧詠一

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大瀧詠一は作曲家であり、歌手であり、プロデューサーであり、レコーディング・エンジニアであり、マスタリング・エンジニアであり……と多彩な才能と技術を持ち合わせた人物です。

松本隆、細野晴臣らとはっぴいえんどで活動し、その活動中にソロデビューを果たします。その後自ら作詞・作曲・編曲、プロデュース、エンジニア、原盤の制作・管理までする「ナイアガラ・レーベルを設立。

ここでつくられる音楽は「ナイアガラ・サウンド」と呼ばれ、名盤を残しています。中でも有名なものが「A LONG VACATION」です。

大瀧詠一の音楽は「ロンバケ(『A LONG VACATION』のこと)以前」、「ロンバケ以降」で語られるほどです。

ナイアガラ・サウンドにおいての「A LONG VACATION」が占める位置は大変重要なものなのです。

「A LONG VACATION」

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「A LONG VACATION」は1981年3月21日にリリースされた大瀧詠一のアルバムです。

スタジオ・アルバムですが構成はコンサートの体をなしていて、1曲目の前にピアノのA音からはじまるチューニングの様子が収録されています。

全部で10曲が収録されていますが、9曲目でコンサートは一旦終了、アンコールとして「さらばシベリア鉄道」が演奏されるというかたちになっています。トラックリストは下記の通りです。

1.君は天然色
2.Velvet Motel
3.カナリア諸島にて
4.Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語
5.我が心のピンボール
6.雨のウェンズデイ
7.スピーチ・バルーン
8.恋するカレン
9.FUN×4
10.さらばシベリア鉄道

出典: A LONG VACATION/大瀧詠一

ここに収録されている「さらばシベリア鉄道」は、太田裕美に提供した後に大瀧が自ら歌ったセルフカバーです。太田裕美版とはアレンジが異なっています

「A LONG VACATION」はレコードからCDへの移行期に、世界初のCD化タイトル20枚のうちの1枚として選ばれ、日本初のCDアルバムとして発売されました。

その後、改めてリマスター版が発売されたのですが、それには「さらばシベリア鉄道」は収録されていません。