桜の季節過ぎたら
遠くの街に行くのかい?
桜のように舞い散って
しまうのならばやるせない
出典: 桜の季節/作詞:志村正彦 作曲:志村正彦
『春は出会いと別れの季節』という言葉がありますが、今作でフォーカスするのは『別れ』の場面ですね。
友人たちや親友、恋人、慕っていた先輩や可愛がっていた後輩、時には兄弟姉妹などの家族。
いつの時も誰かと離れるということには、やるせなさが付き物です。
なぜなら、自分の意志ではどうにもならない事が多いから。
家族に連れられての引越しや学校の卒業、相手が自分の道を決めた事による別れ。
自分の道を自分で決めた事による別れであれば、別れも悲しみも承知の上なのですが...。
自分の力ではどうにもならないやるせなさを、季節がすぎれば舞い散ってしまう桜のやるせなさと重ねています。
別れの情景を描く『手紙』
oh ならば愛をこめて
so 手紙をしたためよう
作り話に花を咲かせ
僕は読み返しては 感動している!
出典: 桜の季節/作詞:志村正彦 作曲:志村正彦
別れる相手に手紙を書く。
あるいは、別れる相手から手紙を貰う。
どちらの経験もある方はきっと多いことでしょう。
手紙の中身はこれまでの2人の嬉しかった事や楽しかった事、喧嘩した事、そして今だからこそ言える思い。
少し大袈裟な、作り話じみた文章にすらなってしまうのもよくある話です。
貰った手紙の内容に感動したり、自分が書いた手紙を読み返すうちに、あんなこともこんなこともあった、と感動したり。
こんな経験も、手紙を書いた人と貰った人どちらにもある事だと思います。
この曲の歌詞の魅力は、こういった主語のない表現なのではないでしょうか。
それにより、どちらの立場になった人でも自分の経験の中にある光景と重ねることが出来るのです。
桜の『花が咲く』と話に『花が咲く』のダブルミーニングも交えながら、別れのシーンを緻密かつ彩り鮮やかに描いています。
別れ、そしてそれぞれの未来へ
別れの先にある生活の情景
oh その町に くり出してみるのもいい
桜が枯れた頃 桜が枯れた頃
出典: 桜の季節/作詞:志村正彦 作曲:志村正彦
『その町』とは、相手が行ってしまう『遠くの町』の事でしょうか。
新しい町に慣れた頃、きっとそれは桜が枯れた頃。
昔の町を懐かしむだけではなく、町に繰り出して新しい出会いに触れて欲しい。
そんな新しい町での生活を応援するようにも聴こえるフレーズとなっています。
あの人のいない新しい景色
坂の下 手を振り 別れを告げる
車は消えていく
そして追いかけていく
諦め立ち尽くす
心に決めたよ
出典: 桜の季節/作詞:志村正彦 作曲:志村正彦
実際の別れのシーンをまるで動画にしたような情景のフレーズですね。
手を振りながら車に揺られ小さくなっていく相手を追いかけるものの、到底人の脚では追いつけません。
諦めて立ち止まり、息を切らして車の消えた方向を見つめ続けながら...自身もある決意をするのです。
会いにいく為の決意なのか。
自分の道に進む為の決意なのか。
二度と会わない、という決意なのか。
様々な別れによって、決意することもきっと違うはず。
けれど心に決めた事は、きっと後ろ向きな事ではないはずです。
今作【桜の季節】は『春の別れ』を描きつつも、決してその情景が寂しく悲しいものだけではない、という所がポイントです。
新しい町での生活や、親しい相手がいなくなった事による自身の決意。
別れと同時にある少し前向きな変化や情景にも目を向けた、志村正彦ならではの曲に仕上げられています。
桜が登場しない!?話題のPVもチェック!
監督が描く、2人の少女の【桜の季節】
情景豊かな楽曲と一緒に、PVもぜひ合わせてチェックしてみて下さい!
この楽曲のPVの面白いポイントは、【桜の季節】という曲名なのに桜の花が登場するシーンが一切ありません。
桜の花のイメージに頼らずどうやって【桜の季節】を描くかという事に注力した、と後に映像を作成した監督も語ったそうです。
映像に登場するのは2人の学生服を着た女の子。
親友でしょうか、それとも小さい頃から仲の良い姉妹でしょうか。
2人の日常の風景を切り取りながら、映像の中の物語は進行していきます。
2人の別れは、お互いのこれからの物語にどのような影響をもたらすのか...。
想像力の掻き立てられるPVに仕上がっています。