「のりことのりお」の怖ろしさ
auのMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティー)促進のためのCMソング「のりことのりお」。
2013年に発表された曲ですが今なお鮮明な記憶を残してくれます。
きゃりーぱみゅぱみゅは不思議な歌ばかりを歌っていますが、特におかしな歌として記憶されました
クリエイターの中田ヤスタカによる洗脳ソング的な歌詞とサウンド、そしてアレンジが癖になります。
目をつぶると脳みその端の方から流れてくるメロディーと歌詞。
ふわふわしたおとぎの国の「のりことのりお」が繰り広げる右往左往。
携帯電話会社との契約を電話番号そのままで「乗り換える」ことができるようになった時代。
私たちは各社のお得なプランを追い求めて「乗り換え」します。
「あっちの水はからいぞ こっちの水は甘いぞ」
ホタルのようにあちらこちらを行き来する私たち消費者の姿こそ「のりことのりお」が描いたものです。
「怖い」
そんな声も聞かれるきゃりーぱみゅぱみゅの「のりことのりお」。
この曲の怖ろしさの根源も探ってみましょう。
それでは実際の歌詞をご覧ください。
何を歌ったのでしょうか
歌い出しから見ていきましょう。
短い歌詞ですがさらに細分化して検証します。
洗脳ソングとしての資質
のりのりのりかえる
のりのりのりかえる
出典: のりことのりお/作詞:中田ヤスタカ(capsule) 作曲:中田ヤスタカ(capsule)
不気味なメロディーにゾッとします。
きゃりーぱみゅぱみゅの歌はどれも皆洗脳ソングとしての資質が高いです。
それだけ訴えるところが大きいのですからCMソングとしては最適かもしれません。
ついひとりのときに「のりことのりお」を歌いだしてしまう人もいらっしゃるはずです。
一度聴いたら頭にこびりついて離れない怖ろしいCMソング。
MNPの制度が始まって消費者は「ノリノリ」で「乗り換える」ことができるようになりました。
そのことを一言に縮めるような文言が生まれます。
「のりことのりお」の歌い出しの歌詞です。
つい鼻歌を歌いながら私たち消費者は各携帯会社の窓口へ急ぎます。
MNPによって生まれた歌
思えばMNPという制度自体が消費者の悲願でした。
携帯電話の番号を変えることなくキャリアを選べるなんて昔では考えられません。
各携帯電話会社も様々な秘策を練って消費者を呼び込みます。
単なる料金プランの変更だけでなくキャッシュバック・キャンペーンなども行われました。
競争が加熱した割に携帯電話料金はすぐには下がりませんでした。
しかし今では格安スマホ会社も多数登場して消費者の意識次第で携帯電話への支出を減らせます。
「乗り換え」しないと損だと私たちは悟りました。
実際のMNPには様々な手続きが必要です。
しかしやってみようと思い立てば何とかなるものでしょう。
一方でいわゆる3大キャリアと謳われる携帯会社は顧客の流出を嫌がって囲い込みをします。
しかし他社からの流入は大歓迎という矛盾した状態がキャリアにプレッシャーをかけるのです。
3大キャリアのauが打って出たキャンペーンの中から「のりことのりお」というカルトソングが誕生。
私たちの脳髄は怖ろしい中毒性があるこの曲によって洗脳されるのです。
「反復」が呼び込むもの
この曲の特色がよく分かる箇所です。
じっくり解説してゆきます。
音楽の原初の姿
のりのりのりかえる
のりのりのりのりよ
出典: のりことのりお/作詞:中田ヤスタカ(capsule) 作曲:中田ヤスタカ(capsule)
ノリノリで「乗り換える」ことを促すノリノリの曲です。
消費者は携帯会社を「乗り換え」たほうがお得になるかもとは思うでしょう。
しかし愛着のあるキャリアとの義理を大切にする顧客も多いです。
そんな頑固な方々も動かす力を持ったCMソングにしなければ意味がありません。
きゃりーぱみゅぱみゅと中田ヤスタカが仕込んだのは「反復」という手法です。
何度も同じ言葉やメロディー、サウンドなどを繰り返すことでリスナーの気分を高揚させます。
音楽の原初の姿はこうした「反復」を多用したものだと推測されているのです。