「夢見る隙間」と片想い

ポップ・ソングと切実な恋心

aiko【夢見る隙間】歌詞の意味を考察!恋を「ガムの味」に例えた心情って?注がれる愛で胸がいっぱいにの画像

2015年4月29日発表、aikoの通算33作目のシングル夢見る隙間」。

aikoらしい複雑なコード進行とメロディに驚愕させられます。

歌詞も愛の表現がいっぱい詰まっているのですが、中々難しい恋愛模様を歌っています。

後のアルバムMay Dream」にも収録され、オリコン・アルバム・チャートで1位を獲得します。

aikoは玄人志向の曲作りをするのですが、一貫してポップ・ソングへと昇華する手腕が見事です。

この曲「夢見る隙間」も興味のある方はコード譜を探してみてください。

非常に複雑で通例のポップ・ソングには「ありえない」ようなコード進行で音楽ファンを唸らせます。

この記事では「夢見る隙間」の歌詞について深く掘り下げましょう。

爆発するような恋心が全開で繰り広げられます。

よく読むと切実な想いが覗けるこの曲の歌詞

誰もが読んですぐ分かる言葉で描かれますが非常に複雑な想いを託しています。

作詞家としてのaikoの実力の高さが際立っているのです。

それでは実際の歌詞をご覧ください。

どこまでも愛している

愛することに専念する女性の姿

aiko【夢見る隙間】歌詞の意味を考察!恋を「ガムの味」に例えた心情って?注がれる愛で胸がいっぱいにの画像

これが最後かもしれないと あなたにあたしはキスをする
もう逢えないかもしれないと あなたをあたしは抱きしめる
これが最後かもしれないと あなたの肩に顎をのせる
これでもう逢えないかもしれない 帰るあなたに手を振ろう

出典: 夢見る隙間/作詞:AIKO 作曲:AIKO

スウィングしてジャイブするジャジーなムードがたまらない歌い出しです。

自然に聴こえるメロディを支える不思議なコード進行。

そして何より恋の楽しさを伝えきるポップ・ソングとしての輝きが素晴らしいです。

一方で歌詞の方は一抹の不安を感じさせるものになっています。

最後や逢えないなどの哀しいシチュエーションを覚悟するシーン。

女性の方から男性にキスをしたりハグしたり積極的過ぎるモーションを仕掛けます。

どうやら100パーセント順調な恋愛ではないようです。

相手への愛情がいっぱいあふれてくる歌詞。

愛される女性ではなく愛する女性をaikoは描きます。

女性の方から精一杯愛を注ぐその姿はリスナーの胸を痛めるはずです。

言葉ではなく行動で、観念ではなく身体表現で愛を伝える姿は人間の本能に忠実な愛情表現でしょう。

これだけ愛される男性はどんなに恵まれているのかと思うのですが案外と相手の素顔は見えません。

aikoが描きたかったものはふたりの恋模様ではなかったようです。

報われるかどうか分からない恋にも献身的である女性の姿が描かれる。

女性雑誌などは男性から愛される女性になるようテクニックを磨くことを推奨します。

しかしaikoは敢えて自分から相手を一生懸命愛してゆく女性の姿を歌にするのです。

これは女性の真の自立のためにもとても大切なことでしょう。

リスナーとしてはどうかこの恋が報われてほしいと願うばかりです。

片想いでも愛に生きる女性

積極的に愛を表現すること

aiko【夢見る隙間】歌詞の意味を考察!恋を「ガムの味」に例えた心情って?注がれる愛で胸がいっぱいにの画像

いつもそんな気持ちでいるから いつもこんな気持ちでいるから
あなたの愛だけで生きていたい
高くまで消えない青い空のように永遠だったら

出典: 夢見る隙間/作詞:AIKO 作曲:AIKO

逢うときはいつも今日が最後と想ってデートするというのは中々酷な状況です。

魅力的な女性のように思えるので相手の男性はどうかしているなどと考えてしまいます。

愛に生きる女性の情熱をこの相手の男性に分け与えたいです。

しかし恋愛においてすべてが順調であることの方が難しいかもしれません。

男女それぞれ愛についての価値観も違うでしょう。

報われないかもしれない恋心でも、ずっと想い続けることの大切さは分かるような気もします。

片想いというものは哀しいイメージが付きまとうのですが本人の心は愛で満ちているのでしょう。

この女性は相手の男性とデートできるだけ幸せな方かもしれません。

片想いしている上に相手とのデートもできないシチュエーションだっていっぱいあります。

この女性は積極的に愛を表現できるので哀しさを抱えていても生きた恋愛ができているのです。

いつかこの片想いが報われることを日々祈っています。

どんな境遇であれ恋に生きる女性は素敵です。

片想いのもどかしさに共感

ときおり報われることもある恋愛風景

aiko【夢見る隙間】歌詞の意味を考察!恋を「ガムの味」に例えた心情って?注がれる愛で胸がいっぱいにの画像

たまにやって来る春が たまにやって来る夏が
明日も明後日も来年もやってきてくれるのかな
わからない

出典: 夢見る隙間/作詞:AIKO 作曲:AIKO

一度聴いたら忘れられないメロディが印象的です。

どんなに複雑なコード進行を用いてもキャッチーなメロディを創れるからaikoは天才であります。

歌詞も強く記憶に残るでしょう。

ときどき彼が振り向いてくれるし、愛をお返ししてくれることがある。

彼女はその瞬間の喜びで心の中をいつも満たしているのです。

一切が報われることのない片想いでしたらリスナーの理解を得られたりはしないでしょう。

希望がある片想いであるからこそリスナーも応援できます。

この片想いが報われる日が来ることを祈ってこの曲を聴き遂げるのです。

男性の本心が読めない歌詞なので私たちは推移を見守るしかありません。

それでも恋ができることその一点だけで主人公の女性は輝いて見えます。

男性の草食化が喧伝されて久しく、女性の肉食化も話題に上がっているでしょう。

ただそうした二極化ですべてのケースを分けられるほど恋愛というものは単純じゃないです。

片想いとはいえ愛に生きる女性を「肉食女子」とレッテルを貼るのは失礼なことでしょう。

本人にしても報われるかどうか分からない恋愛模様。

何ともいえないもどかしい気持ちを主人公もリスナーも共有します。

そういえばこれが片想いで抱いていた恋心のありのままの姿だったと胸のうちに思い返すことでしょう。

恋する気持ちのメカニズム