伝えたいことがあればあるほど、想いが募れば募るほど、何から伝えたらいいのかわからなくなって口をつぐんでしまう。

いつでも自分の気持ちをさらけ出せるような、器用なタイプでない人間ならなおさらです。

何も言えない自分にもどかしさを抱えたまま、勇気を振り絞ってかろうじて目を見つめることだけができること。

うまく伝えられない哀しさ、自分でももどかしくなる不器用さ。周りには気の利いた人間もたくさんいるのに。

そんな彼に、彼女は何も言わず微笑む。

全てわかっているかのように、優しく。

彼の中の何もかもが、その瞬間浄化され、これは恋だと自覚します。

感じていた劣等感や猜疑心などでささくれだった心の原因が、恋であったことに彼はその一瞬で初めて気が付いたのです。

まるで春雷のように強烈な衝撃をもって。

深い惑い痛み憂い繰り返し
いつの間にか春になった
甘い香り残し陰り恋焦がし
深く深く迷い込んだ

出典: https://twitter.com/Kenshi_Yonezu_R/status/930792081060126722

花びらが散れば あなたとおさらば
それなら僕と踊りませんか
宙を舞う花が どうもあなたみたいで 参りました

出典: https://twitter.com/Noll_programmer/status/926401957715001344

見えている終わり

離れてしまうことはわかっていること。

それでも、苦しみながらも想いを止めることはできないようです。

彼女を感じさせる香りがするたびに胸を傷め、花びらの散りゆく様子に彼女の姿を見出す日々。

恋の迷宮の奥深くに迷い込んだ心は、春だけは感じ取ることができるようです。

彼女の季節なのですから。

やがてまた巡りくる春の最中 そこは豊かなひだまりでした 身をやつしてやまない あんな嵐はどこへやら

出典: https://twitter.com/yonezu_08_bot/status/926442102703013890

まだまだ心は帰れない その細い声でどうか騙しておくれ
カラカラに枯れ果てるまで
ふらふら揺られて甘い香り 残し 陰り 幻

出典: https://twitter.com/Shiro_CxS/status/930052611624931328

穏やかな春が彼を訪れることはあるのでしょうか。

あたたかな陽だまりを感じながらも、彼女を想って苦しんだことに思いを馳せてしまう彼がいます。

苦しみが去った後には、空虚さを抱えたまま。

心はいつまでも彼女がいたあの春のまま。

自分がどうなってもいい、たとえ騙されていても。

残された面影に、幻を見ては溺れていく彼。

聞きたい言葉も 言いたい想いも 笑うくらい山ほどあって
それでもあなたを前にすると 何にも出てはこないなんて
焦げ付く痛みも 刺し込む痺れも 口をつぐんだ恋とわかって
あなたの心に 橋をかける大事な雷雨だと知ったんだ

出典: https://twitter.com/kahooooo0327/status/926101781104304129

彼女がどんな立場の人なのかはわかりませんが、彼には何もかもがわかっているよう。

いや、わかっていなくてもきっと構わないのでしょう。

彼女の存在さえあれば、そのほかのことはきっと彼にはどうでもいいのです。

他の男性の恋人であったとしても、例え人間ですらなくても。

心を乱す想いが恋だと自覚した彼は、彼女がなぜ自分をこんなにするのか理解します。

恋を自覚することで、やっと少し彼女に伝えられるかもしれない、春雷が春の訪れを告げるかのように。

身を切られるような想い

どうか騙しておくれ
「愛」と笑っておくれ
いつか消える日まで
そのままでいて

出典: https://twitter.com/Kenshi_Yonezu_R/status/932694613034352640

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騙されていても、その言葉は偽りでも、愛さえ嘘でも構わない。

終わることがわかっているなら、どうか今だけは。

真実など求めてはいない、本当のことなど必要はない。

ただ、今目の前にいる”あなた”だけを信じて。

彼にとっての幸せな瞬間は、今この時。

”僕”の想いは、切なくて痛くて、哀しい愛です。

しかし彼にとっては何にも代え難い、至上の愛です。

他人の価値観などどうでもいい、彼の強い愛です。

美しいその世界

米津玄師がよく口にする”美しい”という言葉、まさにこの曲の歌詞はそれに当たるのではないでしょうか。

言葉の美しさももちろんですが、その意味するところの強烈な純粋さ。

誰もが一度は持っていたはずの美しい想いを見事に表現しています。

私たちの心をとらえて離さない米津玄師

その深淵なる歌詞の世界でも、まだ私たちの目にしていない風景を見せてくれそうです。

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