一世を風靡したソウルフルな楽曲

時代を反映した佳曲

演歌にしては長いイントロ。そして耳に残る軽快なメロディ。

「女のみち」はスローテンポから一転して、魂のこもった歌声が響きます。

それは未だ聴いたことがない、ソウルフルでパンチのある歌声なのです。

世の多くの女性の賛同を得た、この曲。

短い歌詞の中に、当時の世相が反映されていたのでしょう。

さて、「女のみち」という楽曲は、酒場に働く女性を題材にしているのでしょうか?

それとも、この時代を生きている全ての女性が対象なのでしょうか?

この後の、歌詞の探求で、その答えもでてきます。

全てをささげた、うぶな私

私がささげたその人に
あなただけよとすがって泣いた

出典: 女のみち/作詞:宮史郎 作曲:並木ひろし

主人公は、好きな相手に全てをささげた、一途でうぶな女性です。

しかし、ある日突然、別れ話が持ち上がったのです。

それも男性のほうから、一方的に。

主人公の女性は、涙ながらに男性にすがったのです。

別れるのは、いや」と。

涙ながらに訴えた主人公の女性に対して、男性の態度は描写されていません。

ただ、女性側の心情が歌詞につづられているだけです。

「私にとって、あなたはすべてなのよ。どうして、私から逃げてゆくの?」。

女性は涙ながらに訴えたのです。

それでも、男性は何の未練も残さずに、女性の前から消えました。

残された女性は、ただ放心状態になるだけです。

主人公の女性の持っていきようのない思いは、次の歌詞からも描写されます。

自分に言い聞かせるように

うぶな私が いけないの
二度としないわ 恋なんか
これが 女のみちならば

出典: 女のみち/作詞:宮史郎 作曲:並木ひろし

主人公の女性は、愛した男性から別れを切り出されます。

そんな結果になったのも、世間知らずで恋に慣れていない私がいけなかった、と思う主人公なのです。

こんな、辛い気持ちになるくいらいなら、もう恋などやりません

という、切実な思いを歌詞に忍ばせながら、1番の歌詞を締めくくります。

女の道とは、辛く悲しい気持ちに耐えること。

しかし主人公の女性は、じっと耐え忍ぶ弱い女性の生き方ではありません

むしろ、日陰の女の生き方を否定する決意ですらあるのです。

しかし、心の傷は想像以上のダメージを、主人公の女性の心に与えました。

二度と恋をしない生き方で、自分にけじめをつけよう。

そうすることが、女のみちたる生き方なのだから。

1番の歌詞からは、まだ自分の意志の自信のなさもうかがえます。

主人公の女性は、果たして本当にそれが女のみちだと思っているのでしょうか?

謎を解き明かすカギは、2番の歌詞へと続いていきます。

恋とは

一方的にささげるもの

ところが、男と女の関係は、いつも微妙です。

片方が、一方的に熱を上げてしまうと、もう片方は引いてしまうのです。

ましてや、主人公の女性は、「あなただけよ」と言って、すがって泣いているのです。

相手の男性を、夜の世界で知り合った男性だったとしたら、相手はますます引いてしまうかもわかりません。

それは、男性が遊び上手だからです。

恋というものは、いつの時代も一方通行です。

一方が追いかけたら、もう一方は逃げるだけ。

そんな挙句に、冷たくふられてしまうくらいなら、じっと黙っていよう。

でも、恋の炎は燃え上がれば、上がるほどじっとできないものです。

結局、いつの時代も、恋は片思いになってしまいます。

それが、「恋」というものの、宿命なのでしょうか。

どうやら、主人公の女性は、自分が捨てられたことで、ようやく自分の立場に気付いたようです。

男は逃げるいきもの?

恋というものは、時代が変わっても本質は変わらないようです。

そして、恋は前ぶれもなくやってきます。

そこには、思い通りにいかないからこその、スリルとハプニングも備わっています。

今回、この歌詞の主人公に、男性のほうが騙すために、近づいたのではないでしょう。

女性が酒場勤めだったのかは、わかりません。

しかし、ひょんなことから知り合うのが男女の世界。

女性のほうが、一目ぼれしてしまい、恋に落ちたのです。

恋のとりこになってしまうと、尽くしてしまう。

それが、女性の性(さが)のようなのです。

ところが、そんな状況を、遊び慣れた男が心地いいはずがありません。

やがて、息苦しくなり、男の本性が表れてしまうのです。

その時が、主人公の女性の恋の終わりとなるのです。

惚れた弱みだったけど

みれんじみた今の私

ぬれたひとみに また浮かぶ
捨てたあなたの 面影が

出典: 女のみち/作詞:宮史郎 作曲:並木ひろし