旧い時代のドアはやがてふたりによって閉じられます。

ふたりの名前も消し去るのです。

そうやってたどり着いた別れの最期の最後の瞬間にふたりは心で会話できるはずだ。

阿久悠はひょっとしたらまだ1970年安保闘争の敗北にこだわっていたのかもしれません。

「ひとりの悲しみ」ではあるがままに敗北感に浸っていました。

しかし新しい可能性を尾崎紀世彦の声に聴いてその表現の在り方を変えてみたのではないでしょうか

その時代を閉じてしまうこととかつての闘士たちの名前を消してゆくこと。

時代と別れを告げるその訳を振り返ることなく「また逢う日まで」といって去ってゆこう。

こだわっていたことは変わらないが道筋やベクトルを大きく変化させることの大切さをここで識ります

新しく訪れた時代には新しい喜びに満ちていました。

同様に憎しみや哀しみが連鎖することもあります。

いつの時代も完璧であることはないです。

この歌の中の男女も別れた後には喜びも寂しさも哀しみもすべて背負って生きたはず。

それでも旧い時代に傷つけあったことにいつまでも愚痴を申し立てていても未来は拓かれないです。

阿久悠は「ひとりの悲しみ」と「また逢う日まで」という同じメロディという制約の中で作詞します。

同じメロディなのに「また逢う日まで」は「ひとりの悲しみ」に浸る社会性の限界を超克したのです

「また逢う日まで」がいつまでも色褪せないのは明日や未来へ持ち越す希望を歌い継いだからでしょう。

日本の歌謡史に燦然と輝く星。

いつまでも歌い継いでゆく新しいアーティストたちが絶えません。

未来を歌う歌は未来へ遺るのです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEの昭和歌謡・関連記事

松本隆×筒美京平の成功例

尾崎紀世彦【また逢う日まで】歌詞を解説!なぜ別れる理由を話し合わないの?男女の繊細な機微に寄り添うの画像

OTOKAKEには昭和歌謡の関連記事がいっぱいあります。

中でも記事中で紹介したように阿久悠がライバル心を燃やした「松本隆×筒美京平」。

彼らのタッグによる初の大ヒット曲「木綿のハンカチーフ」の記事をご紹介します

この歌詞でも話者が男女入れ替わるのです。

松本隆の斬新な歌詞が話題になりましたが阿久悠はどう思っていたのでしょう?

ぜひご覧ください。

歌謡界のゴールデン・コンビ、作詞家・松本隆と作曲家・筒美京平が最初に放った大ヒット曲、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」。遠距離恋愛をするカップルの気持ちの移り変わりを見事に表現した松本隆の歌詞を中心にして、この曲の魅力を紐解いていきましょう。

無料で音楽聴き放題サービスに入会しよう!

今なら話題の音楽聴き放題サービスが無料で体験可能、ぜひ入会してみてね