旧い時代のドアはやがてふたりによって閉じられます。
ふたりの名前も消し去るのです。
そうやってたどり着いた別れの最期の最後の瞬間にふたりは心で会話できるはずだ。
阿久悠はひょっとしたらまだ1970年安保闘争の敗北にこだわっていたのかもしれません。
「ひとりの悲しみ」ではあるがままに敗北感に浸っていました。
しかし新しい可能性を尾崎紀世彦の声に聴いてその表現の在り方を変えてみたのではないでしょうか。
その時代を閉じてしまうこととかつての闘士たちの名前を消してゆくこと。
時代と別れを告げるその訳を振り返ることなく「また逢う日まで」といって去ってゆこう。
こだわっていたことは変わらないが道筋やベクトルを大きく変化させることの大切さをここで識ります。
新しく訪れた時代には新しい喜びに満ちていました。
同様に憎しみや哀しみが連鎖することもあります。
いつの時代も完璧であることはないです。
この歌の中の男女も別れた後には喜びも寂しさも哀しみもすべて背負って生きたはず。
それでも旧い時代に傷つけあったことにいつまでも愚痴を申し立てていても未来は拓かれないです。
阿久悠は「ひとりの悲しみ」と「また逢う日まで」という同じメロディという制約の中で作詞します。
同じメロディなのに「また逢う日まで」は「ひとりの悲しみ」に浸る社会性の限界を超克したのです。
「また逢う日まで」がいつまでも色褪せないのは明日や未来へ持ち越す希望を歌い継いだからでしょう。
日本の歌謡史に燦然と輝く星。
いつまでも歌い継いでゆく新しいアーティストたちが絶えません。
未来を歌う歌は未来へ遺るのです。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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