平成が生んだ稀代のミュージシャン
揺るがない信念
皆さん、鬼束ちひろといえば何の曲を思い起こすでしょうか?
記念すべきデビュー曲の『シャイン』。
最新シングルの『ヒナギク』。
それはさまざまだと思います。
2000年にデビューした彼女は、コンスタントに楽曲を発表してきました。
どの曲をとっても、そこには彼女だけしか出せない雰囲気があります。
それは「普遍的なもの」を作っているということです。
自分が納得しない曲は発表しない。
作れないときは無理矢理作らない。
彼女は自分の素直な感情に任せて曲を書いています。
「稀代のミュージシャン」と呼ぶべきアーティストの一人です。
さて、今回は鬼束ちひろの長いキャリアのなかから、カラオケ人気曲をランキング化しました。
筆者独自の視点からトップ10を選出。
「なんであの曲が入っていないの?」。
「この曲はもっと上じゃないの?」。
そういう意見もあるかと思いますが、一つ、最後まで読んでいただけたら幸いです。
第10位~第8位
第10位『僕等 バラ色の日々』
まず第10位は『僕等 バラ色の日々』です。
この曲は2007年に発表された13枚目のシングル。
小林武史さんがプロデュースしたことでも話題になりましたね!!
曲の冒頭はピアノの弾き語り。
それが進むにつれて、壮大なロッカ・バラードとなります。
嘘を付き過ぎて本当になった
この世界で
出典: 僕等 バラ色の日々/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ
上に引用した歌詞は、Bメロの最後の部分です。
この曲は決して明るい世界を歌った曲ではありません。
それはこの曲ばかりでなく、彼女の曲すべてにいえることです。
人間のダークサイドをえぐり取る歌詞。
こういう曲を発表するのは、なかなかできることではありません。
素直な心とそうではない心が、一人の人間に宿る。
彼女は歌詞において、アンビヴァレントな感情をこれでもかと表現します。
第9位『螺旋』
この腕が伸びて
枝や茎になり
あなたを忘れる事で
天にまで届く
出典: 螺旋/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ
あなたを忘れる事が養分になり、「私」という植物は成長する。
擬人法を使っていますが、シンプルでいて詩的でもある言葉だと思います。
第8位『Sign』
第8位は『Sign』です。
2003年にシングルとして発売されました。
鬼束さんの曲は、まずピアノから入る曲が多いですがこの曲もそうです。
Bメロからアコースティックギター。
ピアノで弾き語りするミュージシャンといえばキャロル・キング。
キャロル・キングの曲もピアノとアコースティックギターが多数使用されます。
鬼束さんは少なからず彼女に影響を受けたことが分かりますね。
想いに仕掛けた罠を全部外して
出典: Sign/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ
鬼束さんの作る歌詞は、さまざまな捉え方ができます。
解釈が限定されていないんですね。
それだけ自由度の高い歌詞なのでしょう。
上に挙げたフレーズは、『Sign』のなかでも特に印象的なフレーズです。
良くもとれるし悪くもとれる。
ポジティブにもとれるしネガティブにもとれる。
一つ間違えれば単調になってしまう文章。
そのなかで「仕掛けた」という一語が、素晴らしい効果を上げていると思います。