迷いを晴らしてくれるのは

合わせ鏡写す 輪郭の影を辿る 避けたものを知る
腕を引く薄紅色の風に舞う賽も踊り追う霞も晴れる

出典: 蕚/作詞:basho・ESME MORI 作曲: ESME MORI

夢野には双子の兄弟がいることが明かされています。

夢野はその兄を演じているのではないか、ということがこの部分の歌詞から伺い知ることができるでしょう。

例え兄ではなくても、夢野は嘘を吐き、常に誰かを演じています

その誰かを演じるために、その人の面影を追い続けているのでしょう。

しかしそうしているうちに、その人自身のことを深く知りすぎてしまったようです。

その中には本当は知りたくなかったものもあるのではないかと考えられます。

それによってさらに心に迷いが生まれてしまっていたのかもしれません。

しかしそこから抜けだし、迷いを晴らしてくれたのはFling Posseの2人なのでしょう。

「薄紅色」はピンク色の髪の飴村を、「賽」は賭け事が好きな有栖川のことだと読み取れます。

チームの絆

ブリキの歯車動き出す世界にも随意不羈に綻びへと縅を解く
孤独の克服 仕方ないは絶望じゃなく ほら蓮の台を分かつ

出典: 蕚/作詞:basho・ESME MORI 作曲: ESME MORI

夢野の迷いに関係なく、中王区に支配された歪んだ世界は動き続けています。

Fling Posseや他のディビジョンのチームも、その世界の歯車の1つなのかもしれません。

しかし夢野たちはその歯車として素直に従うのではなく、中王区に立ち向かう存在です。

中王区に支配されないことを選び、自分たちの目的のために自由に動いています。

それはこの世界に綻びをもたらす行為でしょう。 さらに「縅」は鎧をつなぎ合わせる糸や皮のひものことです。

夢野は鎧のように嘘で自分の心を覆っていました。

それをFling Posseの2人によってほだされているのではないかと読み取れます。

夢野には孤独だった時期が考えられ、2人の存在によってその孤独を克服できたのでしょう。

その2人との絆は深く繋がっており、かけがえのない存在になっているのだと読み取れます。

蓮は仏教では菩薩の座る蓮の花の台座を意味している言葉です。

さらに「蓮の台」は「はすのうてな」とも読み、楽曲タイトルにも通じています。

2人との絆はきっと死んでからも変わらない、夢野にとってとても大切なものなのだと感じられるでしょう。

自分の歩む道

いつか訪れる終わり

巻き戻し歌詞に書き残す旅の途中足音する終熄
明日手にあり絵になる情性、紅月と高潔と豪傑線で結ぶ点

出典: 蕚/作詞:basho・ESME MORI 作曲: ESME MORI

夢野はFling Posseの2人とのこれまでの歩みをずっと書き残してきました。

しかしその歩みの向かう先は中王区であり、そこへ到達すれば1つの終わりを迎えてしまいます。

その終わりを、書き残しながら感じているのでしょう。

中王区に対抗することで、中王区のいいなりではなく自分たちの生き方を選べています。

それを明日は自分たちの手の中にあると表現しているのでしょう。

さらに中王区との対立が終われば夢野が嘘を吐く必要もなくなります。

それによってこれまでの嘘を吐いていた自分ではなく、本当の自分でいられるようになるかもしれません。

Fling Posseとして出会った3人は、個別にみたら一個人の点でしかありませんでした。

しかし3人が集まり繋がりができたことで、点が繋がって新たな形をつくっているのだと読み取れます。

消えない焦り

秒針の塗り潰す小節の加筆修正
宙を舞い踊り出す五線譜、目蓋の裏の焦熱を

出典: 蕚/作詞:basho・ESME MORI 作曲: ESME MORI

夢野はこれまで目的を持って嘘を吐いていたはずです。

それはもしかしたらFling Posseというチームの目指すものとは少しずれていたのかもしれません。

しかしともに過ごすことで少しずつ自分の目的や計画が変わっていってしまったのでしょう。

それを毎度修正していきながら、そのことをどこか楽しんでいるようにも感じられます。

しかしその反面、当初の目的や計画から外れてしまったことへの焦りもあるのでしょう。

「焦熱」は仏教用語では火によって苦しめられる「焦熱地獄」の略です。

嘘を吐く人も落ちるといわれる地獄であり、嘘を吐き続ける夢野自身との関連も窺えます。

烈火に身を焼かれるような焦燥感を抱えているとも読み取れるでしょう。

いつか伝えたい本心

心の外まで 飛び散った花びら達の破片が
この風景を埋め尽くして消えてしまっても
心の外まで 剥き出しで歩いていった模様と
この感情が伝わってしまったらいいのに

出典: 蕚/作詞:basho・ESME MORI 作曲: ESME MORI

最後のサビの歌詞です。 夢野にとって飴村と有栖川は大切で守りたい存在だったのでしょう。

その2人はいつからか自分が守らなければならない存在ではなくなってしまったのかもしれません。

いつか自分の元から離れ、思い出だけを残して散り散りになってしまうことも考えられます。

しかし、夢野にとってそれは望んでいない結末なのでしょう。

もし全てが終わってから3人が離ればなれになってしまえば2人の中には嘘を吐いている夢野しか残りません。

本来の自分を知らないままとなってしまうかもしれないのです。

それならば、いっそ本当の自分をさらけ出して心の内の感情を伝えてしまいたいと思っているのでしょう。

今はまだ嘘を吐いて「誰か」を演じなければなりません。

しかし2人にはいつか自分の本心を伝えたいという葛藤が滲んでいるように感じられます。