BUMP OF CHICKEN【Smile】歌詞を徹底解説！あなたの味方は誰？…答えは鏡の中にある？

2011年5月11日発表、BUMP OF CHICKENの通算20枚目のシングル「Smile」。

東日本大震災の2ヶ月後に発表されたこの曲は収益をすべて義援金として収めることを目的としました。

Softbankが展開した復興キャンペーンの一環でイラストのオファーがあった漫画家の井上雅彦。

彼が音楽はBUMP OF CHICKENにして欲しいと願い実現した企画です。

日本中の人々が茫然自失となった大規模自然災害の後にクリエイターは何を伝えるのか。

そんな真摯なアティチュードが貫かれて録音制作に関わるスタッフもすべて無償で取り組みました。

災害によるトラウマに悩む人に優しく響くような弾き語りベースの曲になっています。

人にとって勇気の根源はどこにあるのかを問う歌詞も素晴らしいです。

藤原基央の渾身の作品。

後にシングル「ゼロ」とアルバム「RAY」にてバンド・バージョンが収録されます。

自信を喪失したときや進むべき道が分からないときに私たちがとるべき最初の行動とは何か。

とても重い曲ですが心根の優しさに触れて最後まで一気に聴いてしまいます。

この曲「Smile」の歌詞を紐解いて解説しましょう。

2011年3月11日の東日本大震災の衝撃から日本という国はまだ抜けきれていないのかもしれません。

地震による家屋倒壊、巨大な津波によるたくさんの死者、福島第一原発のメルトダウン。

今も避難生活や仮設住宅での暮らしを強いられている人はたくさんいます。

ましてや「Smile」の発表は震災直後です。

世相は悲しみと混乱の極みにありました。

東京ではライブ・ハウスが営業を自粛します。

この非常時に音楽は不要とされました。

一方でラジオだけが音楽を流します。

TBSラジオで竹内香苗アナウンサーがビートルズの「Let It Be」を流しました。

バナナマンは自分たちのラジオが中止になることのアナウンスの際にブルーハーツの曲を流します。

ライブ・ハウスという音楽の最前線の現場が音楽を不要とし、音楽は副次的なラジオ局が音楽を擁護。

この時期に作品発表をしなくてはならないというのはBUMP OF CHICKENにとっては重圧だったのでは。

しかし、井上雅彦のオファーに快く応じて名曲「Smile」を届けてくれました。

「Smile」の歌詞を理解するにはこうした当時の音楽を巡る背景への理解が必須です。

大規模な自然災害に限らずトラウマを抱えるほどの衝撃的な事件・事故の直後、人は無力感に襲われます。

心という人間にとって大切な部位の在り処が不明に感じてしまう。

これほど怖ろしいことはありません。

人間にとって心こそが大事な本体です。

心の在処が分からないで自分自身を見失った人は行路をどう進むのかさえ不明になります。

藤原基央はそんなときは鏡の前に立つといいと歌ってくれるのです。

鏡に映る自分自身の姿を再確認することで心の在処が分かるはずだと歌います。

鏡の中を確認することで自分の心を他人に預けないで生きてゆく術を思い出せるでしょう。

私たちの心は脆い壊れ物です。

ときに外傷によってヒビが入ることがあります。

そんなときに助けてくれる人も鏡の中にいるでしょう。

大規模な災害は人心を荒廃させます。

陰湿なデマが横行したのもこの時期です。

言葉は言霊であり人に取り憑きます。

冷たい言葉は他者を傷つけてトラウマを再生産するでしょう。

自分の心が荒んできたなと感じたときは吐いた言葉を自分なりに咀嚼して柔らかい表現に変える。

優しい言葉に変えてまずは自分自身に送る。

そうすることで癒やされたならば他者にも優しく接することができるだろう。

そのためにはまず鏡の中にいる人物に問えと藤原基央は歌っています。

自分が発した冷たい言葉は最終的に自分のもとに還ってくるでしょう。

それならば荒廃した心を自分の両手でケアしてあげて他者を傷つけるような言葉をなくす努力をしよう。

藤原基央の問いかけは貴重です。

藤原基央が提案した仕種は大きな事件・事故の後だけでなく日常の些細な局面でも大切なことでしょう。