松田聖子7枚目のシングル
「永遠のアイドル」松田聖子の名前を知らない人は、そういないのではないでしょうか。
リリースしたシングルは既に82枚、オリジナルアルバムは52枚という大ベテラン!
「風立ちぬ」は7枚目のシングルで、彼女がまだ19歳の時の作品。
この楽曲には、前6曲とは大きく違う点がいくつかあります。
それによって松田聖子の新境地が開かれ、その後の息の長い活動に繋がったともいえましょう。
テーマは堀辰雄の小説「風立ちぬ」
なぜ小説をテーマに?
それまでリリースした6曲には、ひとつの大きな共通項がありました。
「季節は違っても、すべて海が題材になっている」という点です。
「風立ちぬ」の舞台は秋の高原。初めての試みです。
松田聖子を発掘し育てたプロデューサー、若松宗雄の提案によって、この企画は生まれました。
作詞家・松本隆と話し合い、堀辰雄の小説「風立ちぬ」の世界をテーマにしようと決めたそうです。
若松はもともとこの小説を愛読していたことから、このコンセプトに繋がったとのこと。
それとともに、10代最後の年を迎えた松田聖子に、大人の一歩を踏み出させたいという思いもあったそうです。
当時のアイドルといえば「夏」「海」というのが定番でしたからね。
文学的な情景も歌いこなせる、息の長い歌手に育ってほしいという親心のようなものでしょう。
筆者はそれ以前から松本隆・大瀧詠一の大ファンだったので、楽曲提供にとても驚いた記憶があります。
前作「白いパラソル」から松本隆が作詞を手がけていたのは知っていましたが…。
堀辰雄「風立ちぬ」ってどんな小説?
1938年4月10日に刊行された、堀辰雄の小説「風立ちぬ」は、今も読み継がれるロングセラーです。
中学・高校の国語の授業で、その名前を知ったという方も多いはず。
文学好きな人なら、一度は読んだことのある小説ではないかと思います。
あらすじを簡単にご紹介しておきましょう。
美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、重い病に冒されている婚約者に付き添う「私」が、やがてくる愛する者の死を覚悟し見つめながら、2人の限られた日々を「生」を強く意識して共に生きる物語。死者の目を通じて、より一層美しく映える景色を背景に、死と生の意味を問いながら、時間を超越した生と幸福感が確立してゆく過程を描いた作品である。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/風立ちぬ_(小説)
最強の黄金コンビ!松本隆×大瀧詠一
伝説の日本語ロックバンド「はっぴいえんど」
松本隆と大瀧詠一は1969~72年まで、日本語ロックバンド「はっぴいえんど」で活動していました。
今でこそ日本語のロックは当たり前になっていますが、この「はっぴいえんど」こそが先駆的存在なのです。
他のメンバーは細野晴臣(ボーカル・ベース・ギター・作曲)、鈴木茂(ギター・ボーカル)です。
松本隆はドラムス・パーカッション・作詞、大瀧詠一はボーカル・ギター・作曲を担当。
残念ながら大瀧詠一は2013年に亡くなってしまいましたが、他の3人は今も第一線で活躍中です。
言葉の魔術師=松本隆
「はっぴいえんど」解散後、音楽プロデューサーを経て作詞家に専念した松本隆。
詞を提供したアーティスト、そして大ヒットになった曲の数々は、とても書ききれません。
彼の紡ぐ言葉の数々からは、抒情と知性がふんだんにあふれています。
特に注目してもらいたいのは「風」という語句です。
自身が生まれ育った土地を「風街」と呼び、「はっぴいえんど」時代のアルバムのひとつは『風街ろまん』。
松田聖子に提供したこの「風立ちぬ」も、タイトルそして歌詞内に「風」が入っていますよ。
画像は『風街ろまん』のジャケットで、左上が松本隆、右上は鈴木茂。左下が大瀧詠一、右下は細野晴臣です。