実力派のヴィジュアル系ロックバンド
先輩格にX JAPAN
LUNA SEAのメジャーデビューは1992年になります。
ヴィジュアル系ロックバンドとしてインディーズ時代から高い評価を受けていた彼らですが、X JAPANのhideに見いだされてメジャーデビューのきっかけを掴みます。
彼らのルーツはプログレッシブやパンクスタイルのロックですが、豊かな音楽性を持つロックバンド。
非常にクオリティの高いライブパフォーマンスも評判で、4枚目のシングル「TRUE BLUE」でオリコン初登場1位を獲得すると、立て続けにヒットを連発し不動の地位を築きました。
彼らのストロングポイントは、メンバー全員が作詞作曲をこなし、全員で楽曲を作り上げるというスタイルを取れること。
個々のメンバーの力量がそれだけ高いという表れでもありますが、それは、逆に意見の衝突が生まれやすい一面も含んでいました。
1997年にはボーカルのRYUICHIが本名の河村隆一でソロデビューし大成功。
他のメンバーも精力的に個人活動を行い、バンドLUNA SEAとしても個人としても最も輝いていた1998年7月にこの「I for you」はリリースされます。
しかし、その後は個人の活動が中心となり、2000年にバンドとしての活動を休止することになります。惜しまれたバンド活動の休止でしたが、10年後に再び活動を再開します。
活動再開のきっかけは、恩師X JAPANのhideの追悼イベント『hide memorial summit』になりました。
ここで全員が再び集合、それを1つのきっかけとして活動再開の流れが出来、2010年に活動を再開しています。
なお、ギターのSUGIZOは2008年に正式メンバーとしてX JAPANに加入しています。
アジア進出のきっかけに
大ヒットドラマの主題歌として
この「I for you」はフジテレビ系のドラマ『神様もう少しだけ』の主題歌になっています。
このドラマは、金城武演じる人気音楽プロデューサー『石川啓吾』と、深田恭子演じる女子高校生『叶生真生』との恋愛物語。
恋人との死別後思うように曲が作れなくなり自堕落な生活を送っている啓吾の前に、彼の大ファンである真生が表れます。
啓吾は、その純粋でひたむきな姿に魅かれ、そして自分を取り戻していくというところがメインストーリー。
しかし、悲しいことに、実は真生はたった一度の援助交際のためにHIVに感染してしまっていたという展開です。
『神様もう少しだけ』というタイトルでもわかる通り、真生はやがて発病し、命を失ってしまうのですが、2人の恋がどうなるのかというハラハラドキドキが人気を呼びました。
通常のドラマは放映前の宣伝効果で最初の視聴率が最も高いものなのですが、このドラマは回を重ねるごとにどんどん視聴率を上げ、平均視聴率は22.6%、最終回視聴率は28.3%を記録した大ヒットドラマになっています。
仲間由紀恵が恋のライバル役として出演していますのも、懐かしいところです。
なお、このドラマ『神様もう少しだけ』はアジア各国でも放映され、これをきっかけにLUNA SEAはアジアツアーを行っています。
荒々しさと美しさ
ドラマにぴったりのナンバー
「I for you」はギターのSUGIZOが原曲を作り、温めていたものでした。自分たちにはまだ壮大すぎるとして、作品として完成させてはいなかったのですが、ドラマの主題歌の話から、一転、制作に至ったと言われています。
『神様もう少しだけ』は、HIVや援助交際などデリケートなテーマを扱い、なおかつ恋人の死を受け入れなくてはならないという辛いドラマ。
しかし、反面、2人の美しく純粋な愛情が、視聴者の共感を呼んだドラマでもありました。
そのドラマを大いに盛り上げたのがこの「I for you」。
完成前に壮大すぎるとSUGIZOが考えた通り、荒々しいギターのカッティングで始まるこの曲はまさにドラマチック。
美しい旋律とエネルギッシュなオクターブ奏法のギターのコラボは、まさにLUNA SEAの独特の世界。当時、このギターのイントロを聴いただけでドラマの場面を思い出すという意見も多く聞かれています。
特筆すべきはやはり河村隆一(RYUICHI)のボーカルではないでしょうか。非常にパワフルであるにも関わらず、とてもセンシティブ。力強さと繊細さが同居した表現力の高い彼の歌唱力は、素晴らしいの一言です。
それでは、動画をお届けしたいと思います。
制作中に恩師hideが他界
スタジオから通夜と葬式へ
「I for you」の制作中、1998年5月2日にLUNA SEAを見出してくれた恩師hideが他界してしまったのは有名な話ですね。
メンバーは、スタジオから通夜、葬式に直行したと言われています。
また歌詞もhideへの追悼メッセージとして考えらえたと言います。
ドラマの主題歌としては、死の影に怯えながらも強く生きていこうとする2人を念頭に描き、そして私生活では恩師への哀悼の意を込めて、書かれたこの曲。
歌詞は非常にシンプルで短いのですが、心にグッと響いてきます。
ねえ本当は誰も ねえ愛せないと言われて
怖がりの君と出会い やっとその意味に気づいた
傷つく為 今二人 出逢ったなら 悲しすぎるよ
出典: I for you/作詞:LUNA SEA 作曲:LUNA SEA
悲劇的だからこそ
出だしのこのフレーズは、まさに悲しくも美しいこのドラマそのものを歌っています。
HIVに冒されながら、ひたむきに愛を貫く『叶生真生』=深田恭子とそれに応えて新しく立ち上がろうとする『石川啓吾』=金城武の姿がまさにここにあります。