では早速歌詞の内容を見ていきましょう。
最初のフレーズではどこか主人公がいじけているように見えます。
最先端の装備と自分を比較してしまっているようです。
ガンダムの世界観では、登場人物が身に着ける戦闘装備が登場します。
この装備は時代と共にどんどんグレードアップされていくものです。
その変化は目まぐるしいものがあります。
しかし、人間の成長はそう早くありません。
主人公は自分の未熟さとテクノロジーの発展の早さにギャップを感じているようです。
どこか諦めのような気持ちも見て取れますね。
思うように事がすすまず、自分に満足できていないのかもしれません。
候補生という立場が、なおさら主人公を焦らせている可能性もあります。
いずれにしても煮え切らない気持ちでいる主人公が見て取れますね。
自分が何をすべきなのかもわからない
伝えたい言葉を
選ぶのさえうまくいかない 何がしたいんだ
出典: G/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
この歌詞を見ると、主人公はどうやら自己表現がうまく出来ていないようです。
何か思うことはあっても、それを上手に伝えられない。
そんな状況が想像できます。
同じような経験がある方も少なくないでしょう。
正直に、そして正確に気持ちを伝えるというのは意外と難しいものです。
言いたくても周囲の環境がそれを阻止してしまうこともあります。
そんなときには、自分の気持ちを内側に押し込めるしかありません。
そうしているうちに、本当の自分の気持ちが自分でも分からなくなってしまいます。
自分の意思に沿わないことをして、平然と過ごす。
そんな日常が続くと人間は大きなストレスを感じます。
主人公もまた、今まさにそのような状況なのでしょう。
自分が本当にやりたいこと、言いたいことが分からなくなっているのです。
主人公が求めるものは
この世の真偽
夢か本能か欲望か 優柔不断か優しさか
出典: G/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
主人公の中には迷いや不安、そして葛藤が渦巻いています。
特に物事の二面性に関しては、ことさら不本意なようです。
というのも、物事は捉え方によって色々な見方が出来ます。
ある人のことを、ある人は「フレンドリー」と言うかも知れません。
一方、また違う人は「馴れ馴れしい」と表現するかもしれないのです。
この人に対する客観的かつ正しい評価というのは、実質ありません。
人によってものの見方が違うからです。
色々な人と関われば、多くの評価の間に立たされて困ることもあるでしょう。
主人公はまさにそんな状況なのだと推測できます。
「全員が白いものを白といえば楽なのに。」
きっとそう思っていることでしょう。
主人公は実に曖昧なこの世界全ての真偽をはっきりとさせたいのではないでしょうか。
本当の自分
リーダーシップか強引か
出典: G/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
当然ながら二面性は自分にもあります。
人間はそこまでシンプルに出来ていません。
複雑に感情が絡み合い、その時々で判断や表現をします。
激しく起こる時もあれば、仏のように優しく出来ることもあるでしょう。
しかしどちらの表情も、自分自身に間違いありません。
主人公はそんな自分の存在さえ、理解できないようです。
ましてや主人公は自分の気持ちが分からなくなっている状況。
自身の気持ちがブレてしまい、余計曖昧になっているのも仕方ありません。
そんな中で主人公は、確かな自分を求めていると考えられます。
軸がぶれず、常に自分の思うことを遂行できる自分。
今は力も判断力もないけれど、いずれそうなりたいと思っていることでしょう。
つまり主人公の求めるのは、「自分が自分として存在する」ことだと考えられます。
壮大な旅
誰もが悩める旅人
even Shakesperare musta tasted fear or shed a tear
on this rolling spere / there's no way to make everything clear
出典: G/作詞:吉田美和 作曲:中村正人
ガンダムの世界では主人公を含む登場人物が、強大な敵と果敢に戦います。
その姿はまさにヒーローです。
しかし登場人物たちは、ヒーローである以前に1人の人間。
つまり完璧な存在ではないのです。
必ず勝つという保証もなければ、挫折や敗北、葛藤も付き物といえます。
ガンダム「Gのレコンギスタ」は宇宙を背景にした映画です。
表面上は激しい戦いがメインストーリーとなっています。
しかし裏を返せば登場人物の成長記録ともいえるでしょう。
この歌詞を見ても分かるように、主人公はこの世に真偽などないことに気付きます。
全てのものにある多様性。
それを一義的に解釈することは不可能なのです。
かの有名な劇作家もこれを知って涙しただろうという趣旨の歌詞。
これはまさに世の中に対する気づき、そしてある種の諦めです。
主人公はこうして少しずつ自分の葛藤の無意味さに気付きます。
それと同時に、大人になっていくのです。