ラブソングを超えた「私」
大森元貴の深い歌詞に感動
2016年1月13日発表、Mrs. GREEN APPLEのファースト・フル・アルバム「TWELVE」。
このアルバムに収録されたラブソング「私」について解説いたします。
藤澤涼架によるピアノの音が美しく響くMrs. GREEN APPLEの名曲です。
大森元貴が女性の心模様を歌い上げる曲になっています。
かつての懐かしい時代に置き去りにしてきた恋愛を追想する歌詞です。
冬の日の凍るような吐息の中に煌めく想い出。
私は「私」を生きる決意をして、これからの日々を正面から受け止めようとします。
ラブソングでありながら恋愛を超えた人生観を描いているのが大森元貴の歌詞らしいです。
Mrs. GREEN APPLEの「私」の歌詞を丁寧に紐解いて解説いたします。
それでは実際の歌詞を見ていきましょう。
追憶の中の冬景色
女性の心模様を歌い上げる
空は深く澄んでて 息は白くて
私は確かに此処で生きている
私は昔から涙脆くて
貴方はその度に側で笑っていた
出典: 私/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
6分7秒もあるダイナミックな大作「私」の始まりです。
私の追憶の季節は冬であります。
冬の空の高さや吐息の白さ。
都会である東京でも季節の移ろいを感じられるようです。
学生時代の想い出。
登場人物は私と貴方です。
大森元貴が女性である私に成り代わって歌っています。
ロック・バンドの歌詞で男性ボーカルが女性の心模様を歌い上げるのはレアなケースかもしれません。
何でもないようなことですぐに涙を流す私。
それを微笑ましく眺める貴方。
帰宅途中の風景でしょうが、恵まれた青春の在り方が眩しい歌詞です。
幼い初恋の記憶
青春の日々には還れない
二人だけの帰り道
弱さを知れた夜
壊れかけの自転車と
掴んだその手も
もう届かない 戻れない
いつまでも
出典: 私/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
お互いの家へととぼとぼとふたりで帰る道の光景。
自転車を押しながら帰ります。
この自転車が後に、また登場するので覚えておいてください。
いずれにせよオートバイではないのです。
些細なことですが、こうした場面は自転車でないと情感が出ません。
帰宅してしまうと部屋でひとりきりになることが耐えられないようです。
家族と過ごしているのでしょうが、恋をした相手に会えない夜を辛く想います。
私は手が触れただけで気持ちが高まるような幼い恋愛を生きていたのです。
こうした日々を今思い返して切なさに震えているところでしょう。
貴重な時間は一回生の中でこそ輝きます。
戻れないからこそ大切な記憶になるのです。
伝えられなかった恋心
美しく映える貴方の瞳
今更だけど
あの時、私は貴方の事が好きでした
凍える冬には 温かいその目が救いでした
貴方が好きでした。
出典: 私/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
「でした」「でした」「でした」
すべて過去を回想する言葉たちです。
伝えられなかった想いを今口にします。
冬を溶かしてくれるような優しい瞳を思い出しながら。
幼い恋愛を今このときになぜ想い出すのでしょう。
過去に好きだった人のことを懐かしく想い出すメンタリティー。
様々なラブソングで歌われることではありますが、「私」というラブソングは少しだけ事情が違います。
私にとっては今というときこそが大切であることが、後になって分かるのです。