捨てられるもの、忘れ得ないもの
昔見てた景色は どこまでも広くて
そこまでの行き方など知りたくはなかった
何処かで貴方が鳴らす
その足音は早かった
壊れかけの自転車の
捨て方も解った
でも忘れずに留めておこう
いつの日も
「変わらずに居よう」
出典: 私/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
成長途上の頃に見た風景は今感じるよりも広大さを覚えるものです。
あらゆるものが懐かしく思えるよう。
様々な回想に溺れるようです。
記憶はとめどなく押し寄せてきます。
私にとってはどれも大切な記憶なのでしょう。
ただし、こうした日々はあっという間に過ぎ去ります。
青春の日々、その只中では大人になるまでは、中々遠い道のりであると感じられたはずです。
しかし実際に大人になってから振り返ると、青春の日々のその稀少すぎる短さに愕然とするもの。
Mrs. GREEN APPLEのファンの皆さんは未だ青春真っ只中の方も多いはずです。
貴重な時間を生きているそのときは、むしろその大切さに気付かないでいることが多いでしょう。
大森元貴が届けてくれた「私」を聴いて青春の稀少さを知っていただきたいです。
ふたりで押して帰ったあの自転車はもう動かなくなります。
大切な想い出が詰まった自転車ですが、捨て去るときが来たと知るのです。
捨てることができるものと、捨てられない追憶とが交錯するシーンでしょう。
あの頃の純粋さを持ち続けて生きていきたいと決心します。
青春期に忘れたくないことが多い人生は恵まれているでしょう。
大人になることも大切ですが、何かに対して「折れてしまう」ような生き方は少し違うはずです。
私を「私」へ投げ込むこと
普遍であるものを信じて
これからもずっと
ここからの夕陽が綺麗であれば
これからもずっと
私は「私」を生きてゆける
出典: 私/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
日々を生きながらえて様々な経験を積んだ私が決意すること。
それはこれからも「私」で居続けようという想いです。
夕暮れにふたりで自転車を押して歩いた日々と同じような夕陽。
大自然に属するものは私たちの人生と比べて変わることを知りません。
私たちの小さな生命よりも不変で普遍に思えるような物事に自分のこれからの生き方を重ねるのです。
間違いのない人生であるのならば変わらずに生き切ることが望ましいでしょう。
私を構成するのはあくまでも「私」なのです。
様々な想い出の中に生きる人々の姿を吸収して自分の人生の指針にすること。
「私」を生きられるのは私だけです。
大森元貴はラブソングのような装いの歌詞の中に人生の哲学を描きます。
Mrs. GREEN APPLEの「私」がユニークなラブソングである所以です。
私を「私」の中に投げ込もうとする考えは実存主義哲学の「自己投企」の思想そのものでしょう。
「私」は哲学を深く学んでいる大森元貴らしいラブソングになっています。
新しい恋へ身を投げよう
今度こそ想いを伝えるために
花はまだ咲けずに
私もまた泣けずに
貴方へは届かずとも
人はまた恋をする
出典: 私/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
プログレッシブ・ロックのような大胆でダイナミックなサウンドが圧巻です。
Mrs. GREEN APPLEの音楽的な雑食性がうかがえます。
様々なロック・サウンドを魅せつけてくれるのでMrs. GREEN APPLEは唯一無二なのでしょう。
未だ冬が続きます。
花が咲く季節はもう少し先のようです。
伝えきれなかった想いはいつまでも私の心に留まり続けています。
もはや貴方に届けようにも旧い恋心は行く宛の知らない想いに変わっているのでしょう。
私は新しい恋に向かうことを決意します。
どんなものであっても恋ができる心は大切です。
恋をしようにもできない人だって、この世界にはいっぱいいます。
新しい恋に胸を高めることができることは、それだけで幸運なのです。
次の恋はしっかりと相手に想いを伝えて、いい恋愛にして欲しいと願います。
叶わなかった恋は新しい恋愛で上書きしましょう。
私から鉤括弧が外れる日
初恋からの卒業
あの時、私は貴方の事が好きでした
凍える冬には温かいその目が救いでした
これから私は
明日も私は
確かに此処で息をしてる
私は私を生きてゆく
出典: 私/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
過去の伝えられなかった恋心を再確認します。
貴方と過ごした友人以上恋人未満の日々。
学生の頃の恋愛は大人になると、幼さばかりが目立つものです。
それでもその幼い恋がその人にとっての本当の初恋であったなら。
幼いのは初恋だから当たり前でしょう。
何もかもが上手くいった訳ではないのも、自分の恋心を伝えきれなかったことも初恋だから仕方ない。
大切な教訓は学んだはずです。
自分の恋心は相手へと伝えきることが大事なのだと知ることができただけで初恋に意味があります。