奇跡のコラボ、矢野顕子×忌野清志郎
「ひとつだけ」with忌野清志郎は、矢野顕子と忌野清志郎という史上最高のコンビが生み出した史上最高の楽曲です。
もともと「ひとつだけ」は1980年にリリースされた矢野顕子の6thアルバム『ごはんが出来たよ』に収録された楽曲です。
そして2006年にリリースされた矢野顕子セルフカバーアルバム『はじめてのやのあきこ』で初めて、矢野顕子と忌野清志郎が一緒に歌いました。
ちなみに同曲with忌野清志郎は、矢野顕子30thアルバム『矢野顕子、忌野清志郎を歌う』(2013)にも同じ音源のリマスタリング版が収録されています。
映画『しあわせのパン』主題歌に起用される
2012年1月に公開された映画『しあわせのパン』は、メガホンを取った三島有紀子が、矢野顕子with忌野清志郎の「ひとつだけ」を聴いて、インスパイアされて脚本を執筆しました。
北海道・洞爺湖の畔で小さなオーベルジュ式のカフェ「マーニー」を営む夫婦(原田知世×大泉洋)と、そこを訪れる人たちの春夏秋冬を描いた物語です。
矢野顕子ってどんなアーティスト?
矢野顕子といえば、若い世代の方々にはあまり馴染みがないかもしれませんね。
ヘタすると清水ミチコのモノマネしか知らない、なんて言う方もいらっしゃるかもしれません。
矢野顕子は大ヒットしたCMソング「春咲小紅」(1981)や、「やっぱり猫が好き」(フジテレビ)主題歌「David」(1990)を歌っています。
いわゆるオリコンチャートを賑わせるようなアーティストではありませんが、その独特な歌唱と独創的な歌の世界観は、多くのファンを魅了しています。
ちなみに矢野顕子は、YMOの教授こと坂本龍一の元妻で、ミュージシャン坂本美雨の母でもあります。
伝説のロックミュージシャン忌野清志郎
多分、日本のロック好きな方で忌野清志郎の名前を知らない方はいません。
2008年、58歳という若さでこの世を去った忌野清志郎の名は、日本のロック史において永遠に刻まれることでしょう。
学生時代からバンド活動にあけくれていた忌野清志郎は1968年伝説のバンド「RCサクセション」を結成。
1970年「宝くじは買わないで」でデビューしました。
そんな忌野清志郎が世間をあっと言わせたのが1982年にリリースされた「い・け・な・いルージュマジック」です。
奇抜な衣裳、ハデなメイクをした忌野清志郎と坂本龍一が歌い、話題になりました。
ロックンローラーの反骨魂
常にメッセージ性の強い歌を歌う忌野清志郎は、1986年に勃発したチェルノブイリ原子力発電所事故をきっかけに反原発の歌「サマータイムブルース」を作りました。
同曲を収録したアルバム『カバーズ』リリースすることに意義を唱えたレコード会社(東芝EMI)ともめ、結局アルバムは発売中止に。
しかし古巣のキティレコード(現ユニバーサルミュージック)からリリースされ、同アルバムはRCサクセション史上初のランキング1位を獲得しました。
なぜ東芝EMIが発売中止にしたか……それは、親会社の東芝が原子力発電所を作っているからです。
歌詞から紐解く「ひとつだけ」
歌詞をご覧いただくまえに、ぜひ矢野顕子×忌野清志郎が歌う「ひとつだけ」の動画をご覧下さい。
この2人はまさに、奇跡のコラボと言っても過言ではありません。
日本を代表するロックミュージシャンと、シンガーソングライターが掛け合わさると、こんなにもすばらしい楽曲が生まれるのです。
こんなにもすばらしい歌を歌うミュージシャン、忌野清志郎が58歳の若さで他界したことは、大きな損失です。
忌野清志郎にはもっと歌ってほしかった……とファンは今でもそう思っているのです。
本当に欲しいものは「ひとつだけ」
欲しいものはたくさんあるの
きらめく星くずの指輪
寄せる波で組み立てた椅子
世界中の花 集めつくるオーデコロン
けれども今気が付いたこと
とっても大切なこと
欲しいものはただひとつだけ
あなたの心の 白い扉 ひらく鍵
出典: ひとつだけ/作詞:矢野顕子 作曲:矢野顕子