ヘッドレス・ベースを殴り弾く

ほとんど廃墟に成り代わった洋館の中でメンバーが演奏します。

Saoriは白いピアノ、Nakajinはヴィンテージ・ジャパニーズ・ギター、DJ LOVEはドラム

Fukaseはヘッドレス・ベース

Fukaseの背後で振り子のように揺れるシャンデリア。

仕掛けられた様々な細工はこの社会が機械仕立てであることの暗喩でしょう

サビの歌詞が続いた後にFukaseがギターの速弾きのような要領でヘッドレス・ベースを弾き倒します。

ギター・ソロはなく、その代りにサウンドの要になるパートです。

狂っているのは誰?

時間が人を鈍感にさせる

SEKAI NO OWARI【LOVE SONG】MV解説!辛い環境の子供達…意味深な映像の意味は?の画像

繰り返されるサビ。

「LOVE SONG」のサビの歌詞には皮肉がたくさん込められています。

時間の経過が純粋だった子どもを鈍化させてしまい、社会の不正も平気な人間に育つ

それがこの社会で立派な大人になるための条件でさえある。

これではいけないという想いも時間がなし崩しにして鈍感な大人のできあがり

それを社会は素晴らしいと褒め称える。

これがFukaseの皮肉たる告発です。

狂っているのは誰であるのか?

きみたち子どもか、素晴らしいとされる大人か、はたまた社会そのものか?

火遊びではない、戦争だ

MVの中では小さなミサイルに火が付き発射されます。

この世界の軍事的側面にまで意識を研ぎ澄ますのです。

洋館の中を火の粉を散らして飛ぶミサイル。

新宮良平監督のこの曲の解釈をビジュアルで再現します

ミサイルは洋館を飛び去り、外の世界で爆発を引き起こすのです。

火遊びではないのだ、戦争状態にまで高まるのだ

監督の演出のスケールはとても大きいです。

危険な煽動

怖いほどの演出

SEKAI NO OWARI【LOVE SONG】MV解説!辛い環境の子供達…意味深な映像の意味は?の画像

サビを歌い続けるFukaseは次にこうつぶやきます。

Hey Kid
I'm from your future
“Nice people make the world boring”

出典: LOVE SONG/作詞:Fukase 作曲:Saori,Nakajin

「よう、ガキ!

オレがお前の未来の姿だ。

素晴らしい人たちが世界を退屈にさせているよ”」

MVの冒頭でFukaseのこめかみに銃を当てていた子ども。

MVのラストではFukaseが銃を握り、その子どものこめかみを狙います。

こんな大人になってしまわないうちに人生を終えたほうが良くないかい?

そんな危険な煽動です。

MVは狂気の世界が一周したことを示します。

セカオワからの告発

狂っているのは現実世界

SEKAI NO OWARI【LOVE SONG】MV解説!辛い環境の子供達…意味深な映像の意味は?の画像

MV「LOVE SONG」はSEKAI NO OWARIの狂気の部分を引き出します。

しかし狂気とはいえ、SEKAI NO OWARIが狂っているというわけではないのです。

狂っているのは私たちが生きる現実世界の方だとFukaseは告発します

現実が狂っていると告発する人間が狂人扱いされる。

FukaseとSEKAI NO OWARIはそこまで社会の反応を読み切っています。

無分別に銃を突きつけているわけではないのです。

むしろ現実の方が私たちのこめかみを絶えず狙っているのだと訴えています。

SEKAI NO OWARIにはポップな側面もたくさんあるのも確か。

しかし、彼らがバンドとして成長する内に現実の矛盾や狂気を我が事として抱え込んだのが「Eye」という作品

彼らのパブリック・イメージを変えるほどの衝撃作です。

また、今回のMV「LOVE SONG」は新宮良平監督の演出も冴えています。

機械仕掛の人間社会、大人社会を大掛かりな演出で表現しました。

廃墟になったような洋館で虐げられる子どもたち。

次代を担う大人は彼らです。

この先の未来が明るくなることを願いたいのが心情ですが、いまの社会を見ると未来も暗そう

しかし諦念に負けず、必死に抗いたいもの。

SEKAI NO OWARIが提出した作品風景にも「このままじゃいけない」という想いが滲みます。

見どころがたくさんあるMVです。

細かいところなどを追いきれずに視聴を済ますことなく、細部まで目に焼き付かせたい。

そんな気になります。

ダークな世界観は、それこそ現実がダークであることの証です

OTOKAKEで振り返るセカオワの「Eye」

「Eye」のラスト「スターゲイザー」