隠された東京の絶景を語る歌詞
東京の夜空には人々の夢が輝いている
東京はうつくしい 泡沫のプラネタリウム
星なんて一つも見えないけれど 夢をみているのよ
出典: 東京絶景/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子
田舎では空を埋め尽くすほど広がり、夜空に映える星々。
一方の東京は、星を見るには向いてない場所。
夜になっても地上のほうが明るいし、立ち並ぶビルや電線で視界は遮られています。
けれど、吉澤嘉代子には目には見えないものがはっきりと見えているようです。
それは、一人ひとりが胸のうちに抱く夢。
星のように長生きではないし、途中で潰える可能性もあるけれど。
夢を持った人が集まる東京では人工物が幅を利かせており、ある意味不自然な環境です。
その中で生身の人間が集まって生き抜こうとする姿は際立ち、星のように輝きを放ちます。
人の命も夢も、儚いからこそ美しいのでしょう。
東京の道路を泳ぐ車
国道に流れる車は魚の群れみたいに
煙を撒いて同じ向きでビルの彼方に消えた
出典: 東京絶景/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子
車道で列を作って移動する車を「群れを作って泳ぐ魚」と有機的な生き物に例えた歌詞。
想像力豊かな吉澤嘉代子には、見慣れた景色もダイナミックで新鮮に映るようです。
東京の車の交通量は多くて流れも速いので、地方から来ると初めはとまどう人もいます。
高層ビルの合間をスイスイとスピーディに通り抜けてゆく車。
少しの間目を離せば、一瞬にして目の前から消えてしまいます。
東京にはおしゃれな響きがよく似合う
ひかりつぶを吸い込んだランジェリー
出窓でゆれる カランコロン
出典: 東京絶景/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子
洗濯した下着を干す様子が描写された歌詞。
男子が聞くとちょっぴりドキッとするリアルな女子の生活が、シンプルに表現されています。
お日さまを浴びて乾いていく表現が詩的です。
後に続く歌詞は"出窓"と"カランコロン"という、響きがおしゃれな洗練された組み合わせ。
こちらは言葉遊びの意味合いが強いように感じます。
どんな汚いものにも美しさはある
東京はうつくしい 終わりのない欲望
むせるまで笑ったって 跡形もない昨日
東京のうつくしい 無口な朝の路
野良猫が漁るゴミ棄て場に 額縁を嵌めてみる
出典: 東京絶景/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子
吉澤嘉代子は汚いものの中から密かな美を見出します。
モノと人にあふれかえる、混然とした東京の街。
それを支える強欲や成金主義を否定することなく"うつくしい"と認めています。
なぜなら儚いからです。
儚いものの例として、都内の居酒屋で連日繰り広げられる酒宴はわかりやすいかもしれません。
お店でくつろぎ爆笑して飲み交わしていたお客さん達は、次の日にはいません。
なんの痕跡も残さず、次の夜には別のお客さんが笑い声を響かせています。
一見派手で賑やかな場所ですが、都会を物語るドライな光景でもありますね。
そして吉澤嘉代子は、混沌とした街が静まり返る朝方も"うつくしい"と感じています。
旺盛な消費が生み出すゴミという欲望の残骸だって、人間から見放された野良猫だって"うつくしい"。
額縁で飾られたアートにだってなり得る、と目に映る東京の全てを受け入れるのです。
東京に愛着があり親近感を抱いていることが最も伝わる歌詞ではないかと思います。
同じ目線で見つける東京の絶景スポット
東京の絶景 東京の絶景 東京の絶景 チュルッチュー
出典: 東京絶景/作詞:吉澤嘉代子 作曲:吉澤嘉代子
東京の絶景と聞くと、東京タワーやスカイツリーの展望台から見下ろす景色を思い浮かべます。
観光客やカップルが上から目線で夜景を見て「キレイ!」と感動する時、そこに暮らす人々は見えていません。
吉澤嘉代子にとって東京の絶景とは、歩いていて目に映る些細な日常風景や人々の暮らし。
一般的な絶景とは違うので、ひねりのきいた曲のタイトルとも感じられますね。