夢の中でもラップと戯れる...
Societyで適応できないタチ
目覚ましで起きた試しはなし
細めに巻いたJoint吹かし
寝ぼけたまま この曲を書き出し
Dreamin',Return of the classic
夢の中では幸せな二人
覚ますかのようにコール鳴り出し
いいフレーズ浮かんだのに台無し
出典: Dreamin'/作詞:MU-TON 作曲:LIBRO
ストリートカルチャーに根差したアーティストがしばしば口にする言葉。
「社会に適合できないヤツが表現者になる」
MVの序盤、夢の中にいるMU-TONのスマホのアラームが鳴ります。
時刻は21時51分、MU-TONの日常はここから始まるのでしょう。
自宅に集う昔からの仲間たち。
「今日は何して遊ぼうか?」
優れたパフォーマーに共通すること。それは遊びと仕事の区別を付けないことです。
もしかするとビジネスの世界でも同様のことがいえるのかもしれません。
さらに「Dreamin'」の歌詞で言及されるMU-TONの特異性。
夢の中でも彼はリリックと戯れるのです。
眠りに落ちていく...、最高のリリックが閃きます。
そこに鳴り出すのはビート、ではなくアラームでした...。
芸術は100年先も生き続ける
俺が死んでもこの音楽は死なないから
なら100年後に向けて書いてみる
今でもこの音愛されてますか?
JAPANESE合法化されていますか?
乗せた言霊もきっとTimeless
伝わると信じて歌うMyself
MIC Magic stick
浮かぶ妄想 と二人っきり
出典: Dreamin'/作詞:MU-TON 作曲:LIBRO
珍しく明るい陽射しを浴びながらのWalkin'。
目にする光景は20数年間見続けてきた光景です。
2011年、時の大震災により甚大な被害を受けた福島。
内陸に位置する白河といえど街の被害は相当なものだったでしょう。
MU-TONは当時高校生くらいの年齢です。
死生観にどのような変化を与えられたのかは想像する他ありません。
しかし1つだけ確信したことがあります。それは芸術は死なないということです。
MU-TONは100年先のキッズたちに2018年の若者のリアルな想いを語りかけます。
仲間とゲームに興じたこと。夜のコンビニにたむろしたこと。
そしてMU-TONという超SWAG(イケてる)なラッパーがいたことを忘れるな!
路上から生まれる言葉の象徴であるスケーターの存在
MVに幾度となく現れるストリート・スケーターの姿。
彼らはスケートボード1枚で街をテーマパークに書き換えてしまいます。
急な坂道はスリル満点のジェットコースター。
路上の段差はジャンプ台。
スケーターとミュージシャンは相互に刺激を与えあう関係です。
自由に滑走するスケーターの姿、ウィールがアスファルトを削る音は言葉とビートに生まれ変わります。
その言葉とビートはストリート・スケーターのインスピレーションの源。
MU-TONは魔法の杖=マイクを手に取りその光景を未来に向けてRECしていくのです。
誰よりもHIP HOPを愛する...
1人ペンを手に取る
飛んでるネジ変なとこ真面目
変なとこ以外全部だらしねー
俺の音楽は売れる?果たして
わかんねーだけど歌わして
Make music ペンを手に取る
Ready go Take off 雲の上に乗る
リズムと合流 音と鳴り合わせ
Let's do it そんじゃAnymore
Make hot 音色 雲の上に乗る
リズムと合流My everything
無駄にしないで歌に
出典: Dreamin'/作詞:MU-TON 作曲:LIBRO
「Dreamin'」のMVでのMU-TONの自宅とおぼしきシーンに注目してみましょう。
友人たちがゲームや会話に興じる中、MU-TONは1人ペンを手に取り言葉を書き続けています。
夢の中の光景、友人たちの何気ない会話、街で見た様々な風景。
それらからヒントを得た言葉をノートに記しておくことはラッパーとしての職業病です。
いつかリズムと合流し歌となって雲の上まで飛んでゆく言葉たちと愛おしそうに戯れるMU-TON。
しかし大切に生みだした言葉たちを無駄にしないためには音源を多くの人の元に届けなければなりません。
すなわちセールスにつなげることもラッパーとしての責務なのです。
一方で純粋に音楽と戯れたいだけなんだ、と語りかけるもう1人の自分の声も聞こえてきます。
MCバトルで漢 a.k.a.GAMIと対戦した際にMU-TONが発した言葉。
「ただコイツよりHIP HOPを愛した...」
「Dreamin'」のMVと歌詞が表現するのはMU-TONの音楽に対する一見矛盾した2つのアプローチです。
「生みだした音楽を多くの人に届けたい」
「ただ純粋に音や言葉と戯れたい...」
優れた表現者にとってこのような葛藤は避けては通れぬ道なのでしょう。
独創的な言葉遊び
魂を込めた言葉を天まで飛ばそう
日本には古来より言霊という概念があります。
発せられた言葉そのものに魂が宿るという考え方です。
八百万の神という考え方にも近いのかもしれません。
魂を込めた歌は時代も国境も超えて共有されるとMU-TONは考えます。
彼はフローと呼ばれるメロディーとリズムの緩急に想像以上のこだわりを持つことで有名です。
ラップと歌は等しくある。だから英語の歌を好きになることができる。
逆に日本語の歌を世界中に届けたい。
福島の日常。終わらないパーティー。仲間と戯れた思い出。
そのような想いを込めて歌われるのが「Dreamin'」です。