人間模様の機微を描かせたら右に出る人なし

あの大ヒット曲収録のアルバムの1曲

「結婚」という楽曲。案外聴いたことがない、という方が多いかも分かりません。

シングルカットもされていない楽曲です。あまり知られていないのも仕方ないでしょう。

「結婚」は2000年に発売されたみゆきさんのアルバム短篇集」の中に収録されいる楽曲です。

この「短篇集」にはあの大ヒット曲「地上の星」が収められています。

もしかしたら「地上の星」を聴きたくて手に入れたおかげで耳にした方もいらっしゃるでしょう。

それくらいマイナーな存在の楽曲なのですが、何故か耳に残る1曲なのです。

演奏時間も2分30秒ほどの短い曲です。

どうしてこの曲が隠れた人気を保っているのか?

きっと歌詞にその秘密が隠されているに違いありません。

じっくりと歌詞を探っていきましょう。

結婚に対する中島みゆきの思いが込められた楽曲

「結婚」という楽曲はみゆきさんの結婚観をそのまま発表した訳ではありません。

しかし、妙に結婚に対する私見が垣間見えてしまう曲だといえそうです。

ご存じのように中島みゆきさんは結婚を経験されていません。

よって「結婚」に描かれている世界は、みゆきさんの結婚に対する純粋なイメージという事になります。

もしかしたらこの曲の歌詞がみゆきさんの結婚に対する純粋な思いなのかも分かりません。

そんな思いを込めながら「結婚」の歌詞を解釈していきましょう。

小さな男の子の間違い

結婚を他の何かと間違えています

小さな男の子がもっと小さな男の子に
僕はお前と結婚するぞと言った

出典: 結婚/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

みゆきさんは結婚というものを第三者の目から俯瞰しました。

まだ小学生低学年くらいの男の子の目から結婚というものにスポットを当ててみたのです。

小学生の男子にとったら、結婚の意味など分かるはずがありません。

それは分からなくて当然でしょう。わんぱく盛りの男の子に結婚の意義は理解できません。

歌詞に登場する男の子は非常に無邪気です。

自分よりも歳の下の子に対して求婚宣言しています。

それを主人公である若いお母さんは、慌てて静止します。

慌てる若いお母さん

主人公の若いお母さんは、やんちゃな育ち盛りの男の子の母親です。

きっと早くに結婚して子供を授かったのでしょう。

ただ、出だしの2行の歌詞の進行だけなのに妙な雰囲気を醸しています。

言いたいことをものおじせずズバッと言える男の子。

こんなに自由闊達にモノが言えるのは両親の影響があるはずです。

しかし、歌詞中にお父さんの存在については特に描かれていません。

夫婦2人で自由にノビノビと育てたのでしょうか?

どちらにしても男の子の自由すぎる言動にお母さんはタジタジになったのです。

結婚に対する思い

否定する若いお母さん

男の子の母親は驚いて
それはできないことなのよとさえぎった
小さな男の子は口をとがらせ抗議した
どうして結婚できないと思うのさ

出典: 結婚/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

主人公である若いお母さんの良識が、自分の子供の暴挙を止めます。

暴挙といっても年端もいかない小さな子どもの口から出た発言。

そんなに慌てて制止することもないとは思うのですが。

しかし、お母さんは血相を変えたかのように子供に言い聞かせました。

当然ながら、男の子の方は黙っていません。

お母さんに猛烈に抵抗します。

今まで自分の思い通りに自由に遊ばせてくれていた大好きな母親に対して。

その抵抗ぶりにお母さんはますます慌てるのでした。

抵抗する男の子はみゆきさんのこと?

男の子の抵抗は妙に論理的です。

なぜ、男同士だったらいけないの?

年端もいかない男の子の素朴な疑問です。でもそこには何か芯の通った頑なさを感じます。

通常ならば、歌詞をこのまま読み解けばいいのでしょう。

男の子が無邪気に自分よりも歳下の男の子と結婚したがっているだけだと。

しかし、何かひっかかります

それは結婚観がこの歌詞からにじみ出ているからです。

そこで男の子のことをみゆきさんに置き換えれば話は理解しやすくなります。

そう、もしかしたらこの歌詞は小さかった時のみゆきさんの思い出話がモチーフになっているのです。

無邪気に遊んでいたみゆきさんの子供時代の記憶が歌詞になって甦ったのでしょう。