THE BOYS ARE BACK IN TOWN
2018年5月10日、この日は我々永遠のバンドキッズにとって、忘れられない日になりました。
かつて、ハレー彗星のように音楽界に上陸し、今まで存在した常識や、今で言う忖度の概念をことごとくぶち壊し、最後には自らも爆発して消えたELLEGARDENが、復活を宣言したのです。
この衝撃の一報は、当然恐るべき速度で世界を駆け巡ります。
各地では歓喜の声が沸きあがり、他の日に比べて、アルコールの消費量が5倍に跳ね上がり、「風邪が治った」という人や「肌がきれいになった」、「空を飛べた」などの吉報が相次ぎました。
あれから一ヶ月が過ぎ、ようやく落ち着きを取り戻しつつある中で、残尿感満載の記事を書いたところで「みんな知ってるわ」ではあります。
ありますが、僕のように出遅れた方はいませんか?喜び足りない方はいませんか?ELLEGARDENを最近知って歯ぎしりしている方はいませんか?
この記事は、そんな僕たちのために書きました。どうか最後までお付き合い下さい。
Perfect Days
ELLEGARDENほど、紹介の難しいバンドは他にいません。
誰かに「このCD聴いてみて」と言う時、普通はジャンルや曲調、雰囲気などで説明します。
ELLEGARDENは違います。
まず、自分の置かれた個人的な状況があり、ELLEGARDENを聴いて救われた、元気が出た、背中を押してもらった、となります。
紹介しようとすると、その人の数だけエピソードがあります。
そういえば、個人的にこんなエピソードがありました。
DON'T TRUST ANYONE BUT US
十数年前の夏、友達に誘われてELLEGARDENのライブを観に行きました。
当時の僕は、「素直ではなく、内気なくせに反抗的、自分が賢いと思っていて、世の中をなめているわりに寂しがり」でした。
世界中のめんどくさい成分だけを集め、三日三晩煮込んで凝縮し、15年間乾燥させた、ダメな方の正露丸のような少年でした。
パンクやメロコアが嫌いでした。
モッシュやダイブをする人が、うらやましくも嫌いでした。
ライブに行くのが苦手でした。
そわそわして落ち着かないのに、平静を装わなければいけないからです。
野球は好きでしたが、プロ野球選手にはなれませんでした。
チームが勝ったとき、あのテンションで喜べる自信がなかったからです。
その日ライブに誘ってくれた友達は、物静かですが芯が強く、見た目は大きめの栗の妖精のような少年でした。
開演前、タオルを手に暴れる気まんまんの最前の客を見て、目眩がしたのを覚えています。
そんな僕の不安などお構いなしに、客電は消え、SEが流れ出しました。
Can You Feel Like I Do
その瞬間、栗の妖精が耳元で言いました。
「俺、前行ってくるわ」と。
僕は聞き間違いではないかと思いました。
彼は、普段物静かで、暴れるのが好きではないし、多分圧死すると思ったからです。
しかし、勇敢にも戦地に歩を進める友人。
「俺、ここにおるわ」
うらやましく思いながらも僕は後ろに残りました。
引き裂かれる栗と面倒な妖精。
そして、轟音と熱狂に包まれる空間。
Fire Cracker
まず、驚いたのは、人が減ったことです。
正確には、半分になったように見えました。
開演前、もう一人も入れないほど満員でした。
その満員の観客が、ほぼ前になだれ込んだのです。
びっくりしました。壮観でした。
多分、最前列では圧がかかりすぎ、合体して巨大なスライムになっていたでしょう。
友人もスライムになっていて、あっという間に見えなくなりました。
人間がここまで正直に熱狂する瞬間を、生まれて初めて見ました。
膨大なエネルギーを受け止めているはずのボーカル・細美武士は少しも気負うことはなく、とても自然で嬉しそうな表情をしていました。
「髪の毛を自分で切ったら失敗した」とか「ヴィジュアルを求めるやつは他のライブを観に行け」とか、他愛のないMCをしていました。
「ありがとう」や「楽しい」といった普通の言葉でさえ、まるでひとりひとりに語りかけてくれているように聞こえました。
ELLEGARDENはとても真摯に、エネルギーの塊を僕たちに投げかけてくれました。
その時、面倒な僕は、自分の変化に気づきました。
かすかに体が動いていました。
正に「クララが立った」状態です。
驚きましたが、少しも恥ずかしくありませんでした。
周りの人から見れば、大きめの貧乏ゆすりでしょう。
けれど、その瞬間、確かに僕の心の中には、無数のFire Crackerが弾け飛んでいたのです。
Missing
大げさに言えば、ELLEGARDENに出会って、僕の人生は少し変わった気がします。
ろくに聴きもしないで「ダサそう」と決め付けていた邦楽も聴くようになり、無駄な反抗もやめ、恥ずかしさから素直になれないことも減った気がします。
「こんな面倒な自分が生きて行っていいのか」という大げさで小さな悩みの答えをもらった気がします。
「Missing」でも、僕たちが抱える悩みや弱さに、まっすぐに答えてくれました。
We're Missing
Bm G D A
朱く染まる空 夜の合図が 今日も僕らを駆り立ててく
Bm G D A
壁にもたれた 僕らの唄口ずさめば
G A Bm7 G A Bm7
重なって 少し楽になって 見つかっては ここに逃げ込んで
G A Bm7 G A Bm7
笑ったこと 思い出して We're Missing
出典: Missing/作詞:細美武士 作曲:細美武士
自分の生き方を、自分一人で全て肯定できる人など、案外いないのかもしれません。
人生は選択の連続で、やり過ごさない限り、いや、やり過ごしても不安は付きまとい、苦しいものです。
そんな時はいつでもここに来て、一緒に歌えばいい。
ELLEGARDENが何度となく僕たちに語ってくれたことです。
Bm G D A
あの火花みたいに 誠実なら 迷う理由も見つかるのに
Bm G D A
足りない記憶 僕らの唄口ずさめば
G A Bm7 G A Bm7
重なって 少し楽になって 見つかっては ここに逃げ込んで
G A Bm7 G A Bm7
笑ったこと 思い出して We're Missing
G A Bm7 G A Bm7
間違って 少し失って さまよっては 君に出会って
G A Bm7 G A Bm7
笑ったこと 思い出して We're Missing
出典: Missing/作詞:細美武士 作曲:細美武士