「3月9日」は結婚式のために作られた曲。

しかしひとつひとつ要素を見ていくと卒業ソングに多く使われるモチーフが多く登場します。

その最たるものが「」でしょう。

言うまでもなく、日本人にとって桜は入学や卒業のイメージが強い花。

森山直太朗の「さくら(独唱)」をはじめとして、桜が彩る卒業ソングは数多く存在します。

桜の花と新たな旅立ち。

このふたつの要素だけでも「卒業」というイメージを受ける人は多いのではないでしょうか。

そして3月9日という日付は卒業式が行われる時期に近いということもあります。

そうしたイメージから、結婚式の曲とわかっていても卒業のイメージを受ける人も多かったのでしょう。

また、ドラマ合唱の曲として使われたのもひとつの要素だったのではないでしょうか。

新たな旅立ちにあたり感謝や愛を歌う。

メロディの美しさとも相まって、卒業式での合唱曲に選ばれたことも多かったでしょう。

そうした経緯の中で、卒業ソングの定番としての「3月9日」という1曲は育っていったのです。

結婚と卒業は似ている

そもそも、結婚と卒業という出来事はよく似た性質を持っています。

結婚は、それまで自分が育った家を離れ、新しいパートナーと新しい家庭を作ること。

そして卒業は、それまで過ごしてきた学校や友達と離れ、新たな進路や夢を目指すことです。

特に高校からの卒業は就職や進学を控え、人によっては親元を離れることもあるでしょう。

どちらにも共通して言える事。

それは今まで長く過ごしてきた場所を離れ、大きく環境が変わること。

そして、それに際して周りの人々への感謝や愛情を確かめ直す出来事であるということです。

親や家族から受けた愛情。

友達や先生、周りの人と作ってきた思い出。

そして大切なパートナー。

そういった人々の存在を改めて見つめ、感謝を伝える機会はそう多くありません。

結婚も卒業も、そういった感謝を伝える数少ない機会

そうした性質が共通しているからこそ、「3月9日」は卒業ソングとしても愛されるようになったのでしょう。

改めて藤巻亮太が歌う「卒業ソング」

2020年のコロナ禍の中で

レミオロメン「3月9日」「恋愛ソング」が「卒業ソング」として歌われ続けている理由とは?の画像

このように解説してきた通り、「3月9日」は本来卒業ソングではありません。

しかし多くの、主に学生のリスナーにとって「3月9日」は自分達の気分を最も表現してくれる卒業ソングとして定着しました。

その背景はまさにテクスト論として、多くの人がそれぞれの思いや解釈をこの歌に重ねていったところにあるのでしょう。

結婚式のための歌として作られた歌は、全ての新たな門出を迎える人のための歌に成長していったのです。

そんな中、2020年春に大きな出来事がありました。

新型コロナウイルスによる感染症の流行と、それに伴う政府からの緊急事態宣言。

感染拡大を防ぐ当時の方針に従い、学校を含む多くの場所が閉鎖され、集会も多くが自粛となりました。

その影響を大きく受けたのが「卒業式」です。

学生や家族、来賓といった多くの人が狭い会場に集まることとなる卒業式。

人が密集する状況は感染症拡大のリスクが大きいとされ、卒業式の多くが中止や縮小を余儀なくされました。

安全のためにやむを得ない措置。

ですが卒業式をすることができないという事実は、多くの卒業生にとって悲しく辛い出来事でした。

そんな中行動を起こしたのが、レミオロメンとしては活動を終了しソロで活動を続けていた藤巻亮太です。

2020年に卒業式を行うことができなかったすべての学生たちのために。

オンラインで「3月9日」を歌う配信を行います。

少しでも卒業式の気分を味わってもらうために。

この行動は多くの人の感動と賞賛を浴びました。

受け入れてもらった形を愛する

元々結婚式のために作られた「3月9日」。

そうした成り立ちは、誰よりも藤巻自身がよく理解しているはずです。

けれど時を経て多くの人に卒業ソングとして愛されるようになった「3月9日」を、藤巻自身が卒業に寄せて歌う。

それはまさに「3月9日が卒業ソングでもある」ことを藤巻自身が認めている象徴ではないでしょうか。

歌を作るのはもちろんアーティストの力です。

ですが、それは聴く人の心があってこそのこと。

ひとつの歌はリリースした瞬間からいろいろな解釈を受け入れ、いろいろな人の物語に寄り添っていきます。

「3月9日」もまた同じ。

結婚の歌として、卒業の歌として。

そしてあらゆる門出に送る歌として…。

いわばレミオロメンが生み出し、リスナーが育ててきた1曲なのです。

本来卒業ソングではなかったこの曲を、卒業ソングとして藤巻が送る。

それは「3月9日」を愛してくれたリスナーへの恩返しであり、感謝の形だったのかもしれません。

楽曲タイトルの「3月9日」。

これは元となった友人の結婚式の日付ですが、なぜこの日を選んだのか。

それは「サンキューの日」、感謝の日だったからだということを藤巻はインタビューで明かしています。

新たな門出に向けて、今までお世話になった人に、これからもそばにいる人に「ありがとう」の気持ちを送る。

それは結婚式にも卒業式にも言えることです。

シチュエーションこそ違えど、そこにあるのは同じ感謝と愛情

たくさんの「ありがとう」を伝える歌だからこそ、「ありがとう」が似合う場で歌い継がれていく。

「3月9日」はそんな1曲なのです。

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