コンセプトは「幼くも、今を支える思い出」
2018年9月5日、AimerのトリプルA面シングルがリリースされましたね。
自身15枚目となる今回のシングル。
収録された3曲はまさにどれもが表題曲と呼ぶに相応しい内容になっています。
「Black Bird」は9月7日公開の映画「累-かさね-」の主題歌になり、「思い出は奇麗で」は父の日を記念してYoutubeにて発表。
「Tiny Dancers」はSony Music presents 全国作曲コンクールで多数の応募がある中から選ばれた1曲です。
それぞれに深い意義を持っており、7周年を迎えたAimerにとっても印象に残るような作品になったのではないでしょうか。
統一されたコンセプト
今回のシングルは3曲共に統一されたコンセプトを元に制作されているのも特徴です。
そのコンセプトは「幼くも、今を支える思い出たち」というもの。
Aimerを巡る思い出というと、音楽にまつわるものがたくさん思い浮かびますね。
幼い頃からの音楽に囲まれた環境や、英語の作詞のための海外での生活。
最も印象深いのは、やはりその独特の歌声の成り立ちでしょうか。
15歳の頃、歌唱による酷使が原因で声帯を痛め、治療のために沈黙療法を選択したことで発声が出来ない期間を約半年間経験するが、そのおかげで歌手になりたいという夢が明確になり、回復後に喉を守るように工夫して歌うなかで現在の声質と歌唱法を確立する。このときの声帯の傷はデビュー後の現在も完全に治癒していないが、完治すると今の声は出せなくなるとの主治医の忠告もあり、声質を維持するために現在の状態を保っている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Aimer
アーティストにとって、声が出なくなってしまうということの苦しみは想像を絶するものでしょう。
そんな逆境をも独自の要素に昇華し、追い風に変えてしまったAimer。
一線で活躍する彼女を支えている過去の経験も、この作品には込められているのではないでしょうか。
「Tiny Dancers」を紹介
今回は収録された3曲の中から「Tiny Dancers」を紹介します。
全国作曲コンクールから選出されたこの曲を作曲したのは、兵庫県在住の高橋奎さんです。
それまでの経歴や知名度などは関係ないというコンセプトのこのコンクール。
メジャーのアーティストの曲としてリリースされるチャンスが誰にも与えられるというのは夢がありますね!
とはいえ、多くの応募の中から選ばれたこの曲の仕上がりは流石といったところ。
前向きでアップテンポなメロディながら、Aimerの歌声を活かすような憂いも感じさせる1曲になっています。
情景を描写するような楽曲
「Tiny Dancers」は聴いていて情景が浮かび上がるような1曲。
ここでは簡単に楽曲解説をしていきましょう。
夏っぽさを演出するバックサウンド
清涼感のあるギターとシンセの音色は、日差しが差し込んでくるようなイメージ。
そこに4つ打ちのリズムが躍動し、夏っぽさを演出します。
「Tiny Dancers」は夏の思い出を歌った1曲。
そのサウンドも夏の香りの残る9月に沿うような内容になっていますね。
海辺を吹き抜ける潮風のように
夏の残り香を彷彿とさせるサウンドに乗るAimerの独特のかすれた歌声。
ある種楽器的な彼女の声質は、絵画を彩る絵具のように楽曲に馴染みます。
そのドライなフィーリングは、まるで海辺を吹き抜ける潮風のようなイメージ。
Aimerはとにかく声が好きで、昔からいろんな声の研究をしていたと話しています。
歌と言わず、声と言っているところが印象的。
どこか楽器奏者が楽器の音にこだわる姿に通じるものがあります。
声質を活かして楽曲に溶け込む彼女の歌唱は、余念のない研究の積み重ねの成せる技なのではないでしょうか。
表情も豊か
ラジオボイスのような英語部分は、懐かしい思い出を語っているような儚さ。
ラップ風の早口のパートでは、抑えられたバックトラックによって声の残響が際立ち、一層凛としたイメージに。
それぞれの箇所でその風景に馴染むように歌うAimerの表情豊かさには引き込まれるものがありますよ。