「I was music」凛として時雨
4thアルバム『still a Sigure virgin?』の収録曲として、2010年にリリースされたのが「I was music」です。MVまで公開された曲ですので特に気合が入っていたと言えるでしょう。
アルバムタイトルは「まだ時雨聴いてないの?」みたいな意味でしょうか。その1曲目が「I was music」なのです。サビも掛け合いになっていて、自己紹介代わりの1曲といった雰囲気です。
「I was music」MV
このファルセット(裏声)、当時も今も衝撃的ですよね。超絶技巧3ピースバンドとして、先頭を突っ走っていたあの頃の時雨が思い出されます。まさかピエール中野があんな親しみやすい人だとは…。
MVの監督は島田大介。邦ロック好きで彼のとったMusic Videoを見たことが無い人はいないんじゃないでしょうか。RADWIMPSの「いいんですか?」やback numberの「高嶺の花子さん」も彼です。
2017verも撮ったみたいですね。この輪になるMV、当時の中高生ははみんな目にしたと思います。
このようにMVも気合が入っていた「I was music」ですが、その歌詞に注目して聴いたことはありますか?名曲に新たな視点が与えられたら…と思います。解釈していきましょう。
「I was music」歌詞
変えられない現実
プラスチック製の君の現実を
割れないかなって苦しめていた
リズムは今すぐ消して見せるから
僕の代わりに未来を満たして
I was music
出典: I was music/作詞:TK 作曲:TK
プラスチックとガラスって似てますよね。この連想が働いたんだと思います。現実を変えることは、よくガラスを割ることに例えられます。
外の世界が見えているのに出られない。そういったガラスに閉じ込められた状態に現実を例えるわけです。
欅坂46の「ガラスを割れ!」はまさにそういう現実から脱出する曲ですよね。でもここでは二重の比喩になっていて、現実はプラスチック製のオリなのです。
割れそうに見えるのに割れない。変えられそうなのに変えられない。この絶望感、ぞくぞくしますよね。
どんな現実があるのか
じゃあそこにどんな変えたい現実があったのか。音楽家としてやっていく夢なんじゃないでしょうか。
君と僕で音楽をやっていけば、いつかは目の前のガラスも割れて、音楽家として大成する…。そう思わせて君を苦しめ続けていた、という意味だと思います。
だから「リズムを消して」僕のいない未来へと君を送り出そうとするのです。
「俺は音楽だった」と小さくつぶやき、そしてもう一度叫んでこの曲は始まります。今はもう音楽ではないのです。
つまらない現実へ
プラスチック製になってしまった
君は呟いて笑った
左手に透けたギミックドローウィング
頭の中で捨ててみた
いいよ おかしくなって
今日は誰になって君を撃ち抜こうか
出典: I was music/作詞:TK 作曲:TK
プラスチックは挫折の象徴ですよね。だから音楽の道を挫折したあとは、君がプラスチック製になっています。もうまわりの有象無象と同じ、つまらない現実の一部なのです。
ギミックドローウィングが何かも推理しないといけません。ギミックは装置、ドローイングは描くと訳せますよね。だとすればこれはソングライティングの才能を指すのかもしれません。
それが透けているのは、使っていないということの比喩でしょう。そしてその才能を捨ててしまったのです。もう自分は音楽ではないのですから。