新体制となって初のデジタルシングル

ヒトリエ【curved edge】歌詞の意味を解説!なぜ不自由?弾き方とフレーズに込める心情を深読みの画像

ヒトリエのリーダー・wowakaが急性心不全で世を去ったのは2019年4月5日のこと。31歳という若さでした。

ヒトリエバンドの核とも呼ぶべき存在を失ってしまったのです。

しかし残されたメンバー3人はヒトリエとして活動を続けることを諦めませんでした。

デジタルシングルcurved edge」は新体制となったヒトリエが初めてリリースする曲です。

作詞したシノダはこの特別な新曲歌詞にどんな思いを乗せたのでしょうか。

曲名に秘められたもの

「curved edge」は直訳すると湾曲した刃、これはいうまでもなく刀身に反りを持つ刃物・日本刀のことです。

MVをご覧になった方は刀を手にした女性による剣舞のシーンを覚えていらっしゃるのではないでしょうか。

日本刀は熱した鉄を叩いて鍛えることで純度を高め、焼き入れをして刃の硬度を高めるという刃物です。

そこには激しく打たれることでしか得られない強靱さと鋭利さがあります。

この曲名は過酷な現実に打ちのめされながらも復活を果たしたヒトリエにふさわしいものだといえるでしょう。

歌詞解説

それでは「curved edge」の歌詞を解説していきましょう。全体を通して理解の鍵となるのは喪失と重圧です。

抑圧された状態にあるこの曲の主人公は、過去への追慕を経て、最終的には開き直りに近い解放へと至ります。

そこへ辿り着くまでの道程を曲の始まりから順番に追ってみましょう。

どうしようもない喪失感

味の無いドロップ、嗚呼ベロの裏でうずくまる
今は何時で、そんでいつまでこうしてたらいいの
こんな静けさしかない夜、這いずる
腑抜けたしがないモンスター
今に引き摺り込まれるだろうな
誰も助けてくれないだろうな

出典: curved edge/作詞:シノダ 作曲:シノダ

冒頭から重苦しい歌詞です。味の無いドロップに象徴される感覚の鈍磨は主人公の辛い体験を想起させます。

時間的な感覚も失われ、いつまでこうしていればいいのか自分でも判断がつかない。囚人という他ありません。

この暗い歌詞の背景にwowakaを亡くしたシノダの深い喪失感を見ることは不自然ではないでしょう。

静けさしかない夜の底を這いずる主人公はモンスターに例えることで自嘲気味に己を突き放します。

あらがえない重圧

もうすでにどん底にいるかのようなのに、モンスターはいっそう深い闇の存在を仄めかします。

主人公が陥った痛ましいほどの孤独感はどうでしょう。

作詞は1人きりの営みです。この曲にはその孤独な作業と向き合ったシノダの葛藤や懊悩が如実に表われています。

新しいヒトリエの新曲の歌詞を手がける。そのことが彼にどれほど重圧を与えていたかは想像に難くありません。

不自由な心

無感覚のまま囚われたどん底の闇から一転、主人公の視線は何億光年彼方の想像もしない未来へと向けられます。

ここで触れられた「痛み」とは大切な存在を亡くした胸の痛みが永遠に癒えないことを示しているのでしょう。

そして曲はとりわけ難解かつ印象的な歌詞へと辿り着きます。

自由すぎる今

ほらBring it back to me、不自由な心
ただならなくて、ままならなくて
何かちょっとヤな感じ

出典: curved edge/作詞:シノダ 作曲:シノダ

未来を夢想する浮遊感の中で響く、聞く者に混乱を与えそうな英文混じりの歌詞はとても意味深です。

これを「不自由な心を私に返して」だと解釈すれば根底にあるのはやはりwowakaがいた頃への追慕でしょう。

リーダー的存在を失った「あまりにも自由すぎる」現在に戸惑う心、昔を偲ぶ気持ちが表わされているのです。

そこからは今現在の状況を忌避するような素直な心情の吐露が続きます。