洋楽ヒットのカバー曲

原曲はThe Cover Girlsのシングル

森川由加里【SHOW ME】歌詞の意味を解釈!バブル時代の象徴!?男性を元気づける優しい女性が素敵♪の画像

1987年にリリースされた、森川由加里の2ndシングル「SHOW ME」

センセーショナルに始まるイントロに続くのは、キャッチーなメロディーとダンサブルなリズムです。

この年のテレビドラマ「男女7人秋物語」の主題歌に起用され、ロングヒットを記録しました。

東京の下町育ちらしい歯切れの良い口調が印象的な彼女のイメージは、姉御肌でボーイッシュ。

パワフルなこの曲は、森川由加里のキャラクターにぴったりの曲でした。

しかし、「SHOW ME」は彼女のオリジナルではなく、洋楽のカバー曲だったのです。

原曲はニューヨークで結成された女性3人組グループ、The Cover Girlsのデビューシングル

ビルボードのダンスチャートをにぎわせていたこの曲に日本語詞を載せ、アレンジしたものでした。

オリジナルが持つユーロビートの要素を強調したサウンドメイクも特徴です。

ちなみに、「SHOW ME」のカップリングとして収録された「眠らないままで」もカバー曲。

米国の女性シンガー、シンディ・ローパー1984年に発表した「All Through The Night」が原曲です。

The Cover Girlsの「SHOW ME」。キャッチーなメロディーとリズムからユーロビートにカテゴライズされていますが、オリジナルはヒップホップのテイストが感じられます。

新たな時代の女性像

その画期的な行動

YOU 貴方らしくもないわ しくじったくらいで
YOU 憂鬱な溜息は 似合わないはずよ
私の手を 引き寄せ
テーブルの上で 重ねる
無理して 微笑むから
思わず 抱きしめたくなるわ

つよがる姿が好きよ
だけど 今夜は素顔で
悩みを聞かせて…

出典: SHOW ME/作詞:A.CABRERA/B.KHOZOURI/T.MORAN/A.TRIPORI/森浩美 作曲:A.CABRERA/B.KHOZOURI/T.MORAN/A.TRIPORI

それでは、Aメロ、Bメロの歌詞を見ていきましょう。

傷ついた男性を励ます女性の言葉、心情がつづられています。

現在の常識からいえば、優しくて素敵な女性像にほかなりません。

一方で、昭和という時代の価値観に照らし合わせると、このシチュエーションは画期的でした。

当時の男女のコンサバティブな関係性は「男性は強く、女性は弱い」というもの。

「SHOW ME」の女性像は、そうした固定概念を覆すに等しいものだったのです。

もちろん、打ちひしがれた男性を励ます女性の歌は、昭和の時代にも存在しました。

しかし、それらの曲で描かれていたのは、傷ついた男性をそっと見守る控えめな女性の姿。

相手にかける言葉も、ナイーブな優しさに包まれていました。

これに対し、「SHOW ME」に登場するのは「しくじったくらいで」というストレートな物言い。

男性を励ますだけではなく、グイグイと引っ張るリーダーシップさえ感じられます。

そうした女性像は、それまでの常識の枠を超えたインパクトがあったのです。

男性を「抱きしめたくなる」女性

森川由加里【SHOW ME】歌詞の意味を解釈!バブル時代の象徴!?男性を元気づける優しい女性が素敵♪の画像

画期的な女性像が投影されたこの曲は、どんな背景の下で生まれたのでしょうか。

リリース前年の1986年、世の中にとって大きな転換点となる出来事がありました。

男女平等社会の実現を目指した、男女雇用機会均等法の施行です。

「SHOW ME」は、男女の関係性における新たな時代の幕開けを知らせる曲でした。

そのファクターは、「抱きしめたくなるわ」という歌詞にも表れています。

異性を能動的に抱きしめるのは長い間、男性のみに許されていた行為でした。

男性に守られるべき存在とみなされていた女性は常に、抱きしめられるのを待つ立場だったのです。

「抱きしめたくなるわ」という歌詞には、そうした固定概念を打破するかのような響きがありました。

森川由加里が1987年にリリースした、シングルと同名アルバムのジャケット写真。

ここに写っている彼女の衣装とポーズは、極めて男性的に見えます。

「SHOW ME」の女性像が、当時の社会通念の中でどのように受け止められていたかを物語っているのです。

「踊りにでもいこうか」と誘う女性

母性のような強さと優しさ

YOU ここで「おやすみ」なんて 言えない気分だわ
YOU 踊りにでもいこうか パアッと賑やかに
この次 会えるときは
ジョークとばして 笑わせて
口論(けんか)も 出来ないなんて
張り合いなくって 淋しいわ

私を必要なときには
いつでも 傍にいることを
忘れないでいて

出典: SHOW ME/作詞:A.CABRERA/B.KHOZOURI/T.MORAN/A.TRIPORI/森浩美 作曲:A.CABRERA/B.KHOZOURI/T.MORAN/A.TRIPORI

「踊りにでもいこうか」というリリックもまた、新たな時代の到来を感じさせます。

男性に誘われるのではなく、自らが連れ出そうとする女性の積極さが表れているのです。

踊りに行く先はディスコ。そこでの主役もまた、きらびやかな女性たちでした。

さらに「張り合いなくって 淋しいわ」というフレーズも挑発的。

男性と対等な関係に立とうとするアティテュードが、如実に表れています。

「パアッと賑やかに」という歌詞も勇ましく、いかにも男性的な言い回しです。

半面、Bメロの歌詞は、そうした強さの中に母性が感じられる展開に。

「悩みを聞かせて…」

「傍にいることを忘れないでいて」

積極的な言動で男女の新たな関係性を印象付けながら、相手に寄り添う言葉を重ねる女性。

強さの裏には、穏やかな包容力に満ちあふれた優しさも持ち合わせているのです。

そのメンタルはまさに、普遍的な母性そのもの。

時代に左右されない女性の魅力もしっかりと表現されたのが「SHOW ME」でした。

この曲が多くの人の共感を呼び、ヒットした理由の1つが、ここにあります。

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