おしゃれなサウンドと温かい歌声に癒される
向井太一さんといえば、ブラックテイストのおしゃれで格好いい音楽が大好物という方にはおなじみですね。
ヒップホップ界隈の方も注目されているでしょう。
今回ご紹介するのは「Savage」(サベージ)という曲です。
3枚目のアルバム「SAVAGE」のタイトルトラックになっています(2019年9月発売)。
アルバム発売前にはデジタルシングルとして先行配信もされました(2019年8月発売)。
なんとなくモヤモヤして気分が晴れない…というあなたは今夜この曲を聴いてみましょう。
さて、シンガーソングライターの向井さんはご自身で作詞・作曲されます。
ただ、他の方とコラボすることも多く、作曲では今回CELSIOR COUPEさんとタッグを組んでいます。
音数が少ない分、一音一音ヌケがよく、心地よいサウンドに耳が喜ぶことでしょう。
そしてJ-POP好きの方にも優しい歌声になっているところも魅力です。
ただ、歌詞の内容は意外と熱いかもしれません。
いったい誰に(何に?)別れを告げているのでしょうか。
向井さんの紡ぐ歌詞を解説します。
ネガティブからポジティブへ
暗い心情の吐露
今まではなんでも
そつなくこなしても
これからはきっと
それだけじゃもう物足りないよ
悔しさと焦りと
目指す場所との距離
測るほどもっと
落ち込むけど
まだ今は
出典: Savage/作詞:Taichi Mukai 作曲:Taichi Mukai・CELSIOR COUPE
1番の歌詞から見ていきましょう。
この歌の主人公は向井太一さん自身です。どうやら向井さんは負の感情を抱えています。
過去を振り返り未来を心配し、ネガティブな気分になっているわけですね。
何を悩んでいるのかというと、ミュージシャンとしての自分自身でしょう。
これまでに「BLUE」と「PURE」という2枚のアルバムを出し、3枚目のアルバムへ向かうタイミングです。
上質な音楽を作るという意味では、向井さんは非常に器用な方でしょう。
自身のルーツであるブラックミュージックをベースに、エレクトロニカ、アンビエント、オルタナティヴなどジャンルを超えた楽曲、そして「日本人特有の言葉選び、空間を意識した音作り」で常に進化を続ける新境地を見事に提示し、各媒体・リスナーから高い支持を得る。
出典: http://taichimukai.com/biography
これは1stEP「POOL」の話です。
ソロ活動のスタートから音楽通やハイセンスな層の注目を集めてきました。
その後も順調にシングル・EP・アルバムのリリースを重ねてきました。
そして3枚目のアルバムを出すにあたって、これまでの音楽活動について考えてみたわけですね。
その結果、暗い気持ちに満たされてしまった…ということでしょう。
優れた音楽を提供し続けていても、目標とする理想にはたどり着いていないのかもしれません。
自分はこんなものじゃない…といった苛立ちを感じているのでしょう。
闇から光へ
見えない暗闇に
一筋 光が射す
出典: Savage/作詞:Taichi Mukai 作曲:Taichi Mukai・CELSIOR COUPE
負の感情を吐露する歌といえば、ブラックミュージックのなかではブルース、R&Bが代表的です。
失恋して悲しいとか、日々の暮らしがやりきれないなど、盛大に愚痴を吐き出すわけですね。
ただ、パワフルに歌い上げるナンバーが多いので、聴くだけでもスッキリした気持ちになります。
いつのまにか負の感情が正の感情へと昇華されるのです。むしろそのために歌があるのでしょう。
こうしたブラックミュージックのスピリットを、向井さんも踏襲していると考えられます。
落ち込んでもただでは済まさない。暗い気分のときこそ明るく…とばかりに光が登場します。
どうして今夜にサヨナラするの?
今夜だけ落ち込む
サヨナラ 今夜 ここには
もう戻らない
サヨナラ 今夜 後ろは
もう振り返らない
to the left to the right
from the back
and we can't stop
サヨナラ 今夜 ここには
もう戻らない
出典: Savage/作詞:Taichi Mukai 作曲:Taichi Mukai・CELSIOR COUPE
向井さんは今夜、暗い気持ちにとらわれていることをじゅうぶん自覚しているわけですね。
負の感情を抱くことそのものを決して否定はしていないと思われます。
むしろ落ち込むときはとことん落ち込めばいい…ということで冒頭の心情吐露がありました。
ただ、いつまでもそのままではしんどいでしょう。
「悩むのは今夜だけ!」そう決めて、今のネガティブな状態に別れを告げていると考えられます。